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はじまりの場所
はじまりの場所(5)
しおりを挟む「これ以上は止まらなくなりそうだから」
唇を離したラインハルトは、照れ気味に触れるだけのキスの言い訳をした。
「いいかげん、家に入りましょう」
ユリウスも真っ赤になった顔で慌てて体を離し、彼を家へと案内する。
陽が落ち、あたりはすっかり薄暗くなっていた。
「ユーリ、自分の出自について、知りたいか?」
歩きながら、突然そんなことを訊かれた。
ラインハルトはここにいた頃、ユリウスの出自にまつわる父と家令の話を、たまたま聞いてしまったらしい。それを調べるために、以前から第五騎士団への転属を希望していたという。
まさか転属の理由が自分にまつわることだなんて思ってもしなかったから、ユリウスは心底驚いた。
「以前ここで耳にした話が事実なら、お前を選定の儀に参加させずにすむかもしれないと思っていた。だが、第五騎士団への転属がなかなか叶わなくてな。陛下に相談したんだ。その頃、軍事関係の情報が保管されている書庫に第一王弟が頻繁に出入りしていたらしく、陛下も警戒していたそうだ。第一王弟が第五騎士団の団長と秘かに接触していることがわかり、最初は前任の副団長に調べさせていたが、報告が届く前に彼は失踪した」
ちょうどそんなときにラインハルトが第五騎士団への転属について相談に行ったものだから、その件の調査を引き受けることを条件に、副団長に就任することが決まったらしい。
「あの……陛下はライニ様の味方なんですよね? なのにどうして弟のライニ様にそんな危険な任務を任せたんですか?」
味方という言葉はあまりに幼稚だが、それ以外にどう尋ねてよいかわからなかった。
「あの方は元より身内に特別な情は抱いておられぬ。信用できるかできぬか、使えるか使えないかで判断される。俺のほうも、転属だけでなく一つ重大な頼み事をしていたからな。互いの利益が一致したのだ」
「頼み事……ですか?」
危険を冒してまで交換条件にした頼み事とはいったい何だろう。
ユリウスが首をかしげると、ラインハルトはばつが悪そうに視線を逸らした。
「選定の儀でユリウスが誰からも選ばれないように、他の王族方への根回しを頼んだ。都に来てから、エイギルから藍染のチョーカーをもらっただろう? あれは俺がユリウスに渡してくれとエイギルに頼んでいたものだ。選定の儀で藍染のチョーカーを付けた者を選ばないよう、陛下が他の王族に事前に通達してくれていた。お前が誰にも選ばれなかったのは、お前に魅力がないからではない。俺のせいだ」
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