売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹

文字の大きさ
72 / 83
はじまりの場所

はじまりの場所(5)

しおりを挟む



「これ以上は止まらなくなりそうだから」

 唇を離したラインハルトは、照れ気味に触れるだけのキスの言い訳をした。

「いいかげん、家に入りましょう」

 ユリウスも真っ赤になった顔で慌てて体を離し、彼を家へと案内する。
 陽が落ち、あたりはすっかり薄暗くなっていた。

「ユーリ、自分の出自について、知りたいか?」

 歩きながら、突然そんなことを訊かれた。
 ラインハルトはここにいた頃、ユリウスの出自にまつわる父と家令の話を、たまたま聞いてしまったらしい。それを調べるために、以前から第五騎士団への転属を希望していたという。
 まさか転属の理由が自分にまつわることだなんて思ってもしなかったから、ユリウスは心底驚いた。

「以前ここで耳にした話が事実なら、お前を選定の儀に参加させずにすむかもしれないと思っていた。だが、第五騎士団への転属がなかなか叶わなくてな。陛下に相談したんだ。その頃、軍事関係の情報が保管されている書庫に第一王弟が頻繁に出入りしていたらしく、陛下も警戒していたそうだ。第一王弟が第五騎士団の団長と秘かに接触していることがわかり、最初は前任の副団長に調べさせていたが、報告が届く前に彼は失踪した」

 ちょうどそんなときにラインハルトが第五騎士団への転属について相談に行ったものだから、その件の調査を引き受けることを条件に、副団長に就任することが決まったらしい。

「あの……陛下はライニ様の味方なんですよね? なのにどうして弟のライニ様にそんな危険な任務を任せたんですか?」

 味方という言葉はあまりに幼稚だが、それ以外にどう尋ねてよいかわからなかった。

「あの方は元より身内に特別な情は抱いておられぬ。信用できるかできぬか、使えるか使えないかで判断される。俺のほうも、転属だけでなく一つ重大な頼み事をしていたからな。互いの利益が一致したのだ」

「頼み事……ですか?」

 危険を冒してまで交換条件にした頼み事とはいったい何だろう。
 ユリウスが首をかしげると、ラインハルトはばつが悪そうに視線を逸らした。

「選定の儀でユリウスが誰からも選ばれないように、他の王族方への根回しを頼んだ。都に来てから、エイギルから藍染のチョーカーをもらっただろう? あれは俺がユリウスに渡してくれとエイギルに頼んでいたものだ。選定の儀で藍染のチョーカーを付けた者を選ばないよう、陛下が他の王族に事前に通達してくれていた。お前が誰にも選ばれなかったのは、お前に魅力がないからではない。俺のせいだ」

しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

溺愛アルファの完璧なる巣作り

夕凪
BL
【本編完結済】(番外編SSを追加中です) ユリウスはその日、騎士団の任務のために赴いた異国の山中で、死にかけの子どもを拾った。 抱き上げて、すぐに気づいた。 これは僕のオメガだ、と。 ユリウスはその子どもを大事に大事に世話した。 やがてようやく死の淵から脱した子どもは、ユリウスの下で成長していくが、その子にはある特殊な事情があって……。 こんなに愛してるのにすれ違うことなんてある?というほどに溺愛するアルファと、愛されていることに気づかない薄幸オメガのお話。(になる予定) ※この作品は完全なるフィクションです。登場する人物名や国名、団体名、宗教等はすべて架空のものであり、実在のものと一切の関係はありません。 話の内容上、宗教的な描写も登場するかと思いますが、繰り返しますがフィクションです。特定の宗教に対して批判や肯定をしているわけではありません。 クラウス×エミールのスピンオフあります。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/504363362/542779091

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

騎士は愛を束ね、運命のオメガへと跪く

夕凪
BL
(本編完結。番外編追加中) サーリーク王国郊外の村で暮らすエミールは、盗賊団に襲われた際にオメガ性が顕現し、ヒートを起こしてしまう。 オメガの匂いに煽られた男たちに体を奪われそうになったとき、狼のように凛々しいひとりの騎士が駆け付けてきた。 騎士の名は、クラウス。サーリーク王国の第二王子であり、騎士団の小隊長でもあるクラウスに保護されたエミールは、そのまま王城へと連れて来られるが……。 クラウスとともに過ごすことを選んだエミールは、やがて王城内で湧き起こる陰謀の渦に巻き込まれてゆく。 『溺愛アルファの完璧なる巣作り』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/504363362/26677390)スピンオフ。 騎士に全霊で愛されるオメガの物語。 (スピンオフにはなりますが、完全に独立した話ですので前作を未読でも問題ありません)

釣った魚、逃した魚

円玉
BL
瘴気や魔獣の発生に対応するため定期的に行われる召喚の儀で、浄化と治癒の力を持つ神子として召喚された三倉貴史。 王の寵愛を受け後宮に迎え入れられたかに見えたが、後宮入りした後は「釣った魚」状態。 王には放置され、妃達には嫌がらせを受け、使用人達にも蔑ろにされる中、何とか穏便に後宮を去ろうとするが放置していながら縛り付けようとする王。 護衛騎士マクミランと共に逃亡計画を練る。 騎士×神子  攻目線 一見、神子が腹黒そうにみえるかもだけど、実際には全く悪くないです。 どうしても文字数が多くなってしまう癖が有るので『一話2500文字以下!』を目標にした練習作として書いてきたもの。 ムーンライト様でもアップしています。

処理中です...