売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹

文字の大きさ
74 / 83
はじまりの場所

はじまりの場所(7)

しおりを挟む




 突然の王弟殿下の来訪に、当然、両親はびっくりし、使用人たちは上を下への大騒ぎだった。
 そして、「ユーリを妻に娶りたい」という殿下の発言には、両親だけでなく、ユリウスも驚いた。

「妻ではなく妾ですよね? ユーリは平民なので……」

 父の問いに、ラインハルトが首を横に振る。

「ユーリは毒に気づき、俺の命を救ったことで、爵位を与えられることになったんです。だから、『妻』で間違いありません。それが、ウェルナー辺境伯の望みでもあります」

 ウェルナー辺境伯の名前を出した瞬間、父の眉がひくりと動いたのをユリウスは見逃さなかった。

「父さん……、僕の出自には、何か秘密があるの? 知っていることがあったら、話してほしい」

 父はしばらくの間、逡巡するそぶりを見せていたが、やがて深い溜め息をこぼし、覚悟を決めた顔で口を開いた。

「ユーリ。お前は……、私の血の繋がった子供ではない。亡くなった母さんの子供でもない」

 ユリウスは息を呑み、俯きがちの父の顔をまじまじと見つめた。

「お前は……、ウェルナー辺境伯の子で、本来なら、後継ぎとなるべき子供だった……」

 ……僕が……ウェルナー辺境伯の子供…………!?

 だとすれば、実の父に隣国へ売られようとしていた上に、その父はほぼ死罪が確定。
 その娘であるカレンとも兄妹ということになる。

 重い口調で父が語ったところによると、亡くなったユリウスの母は選定の儀で売れ残り、ウェルナー辺境伯に下賜される形で妾になったそうだ。
 オメガの兆候が出たのが遅かったため、元々、結婚を約束していた恋人もいたらしい。その人と泣く泣く別れ、ウェルナー辺境伯の妾になったものの、すでに辺境伯には正妻がいて、妾の母は大事にはされなかった。
 しかし、愛情がなくても、発情期ヒートになれば、そういう行為は行われる。
 そのため、子供を身籠り、そして、先に身籠っていた正妻と、たまたま出産が重なってしまった。

 母のほうは早産で、子供は生まれてすぐに一度息が止まったらしいが、城には医者が一人しかおらず、その医者は正妻につきっきりだった。
 背中を叩いて子供の呼吸は再開したものの、その後も乳がうまく飲めず、かなり危うい状態が続いたそうだ。
 そして、彼女が子供を連れてこっそり城を抜け出したのは、出産からふた月後のことだった。
 かつての恋人を頼ってカッシーラー辺境伯領まで来たが、その人は既に結婚していた。実家に帰れば、ウェルナー辺境伯のところに戻されてしまう。
 路頭に迷い、行き倒れ寸前のところをこの領内で保護されて、表向きは父の妾ということにされて、母子ともにこの家で暮らすようになった。

「ここに来たときは、『主の元には帰りたくない』の一点張りで、それ以上何も教えてくれなかった。自分の死期を悟ってようやく、全てを話してくれたんだ……。そのとき彼女がウェルナー城から連れ出した子が、ユーリ、お前で、自分の産んだ子ではなく、正妻の産んだ子だと……」


しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。 オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、 ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。 だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。 今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

初夜の翌朝失踪する受けの話

春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…? タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。 歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け

アルファのアイツが勃起不全だって言ったの誰だよ!?

モト
BL
中学の頃から一緒のアルファが勃起不全だと噂が流れた。おいおい。それって本当かよ。あんな完璧なアルファが勃起不全とかありえねぇって。 平凡モブのオメガが油断して美味しくいただかれる話。ラブコメ。 ムーンライトノベルズにも掲載しております。

処理中です...