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3章 死神が誘う遊園地
夏と夢と信仰と補習 9
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再び、客間に戻っても中には入らなかった。カンダタを認識できる者がいるならば大胆に歩けない。昌次郎が待っているのは白髪頭の男かもしれない。そう考えるとカンダタは外で聞き耳をたてるしかなかった。
そうして、30分ぐらいした頃に障子が開けられた。
「首も先生の振る舞いが板についたようだな」
昌次郎が入ってきた者に声をかける。さえりや他の部下たちに向ける厳つい口調ではない。親しみを持った柔らかさがある。
「いや、演技するのも疲れる。しかし、優しい嘘だけでも人は騙されるのだな」
首と呼ばれた男の一面。それは詐欺師と言っても過言ではない。カンダタは息を秘めて会話を聞く。
「配布はどうだ?」
昌次郎が尋ねる。
「減ったよ。あの噂を気にしている者がいるようだ」
「警察もメディアも嗅ぎつけている。後がないぞ」
昌次郎には焦りがあった。今にも食われてしまいそう怯える。反対に首には余裕がある。
「もうすぐ完成する。あの兵器さえ揃えば現世に用はない。あそこでは警察もメディアも誰も立ち入れられない」
「それなら、安心、か」
「博士を急がせよう」
「そういえば、博士が言っていたぞ。あれを作らずとも兵器はあると。十手の形をしているだとか」
「あれは用いるな」
首が断言する。空気が張り詰めたのを感じる。首は続ける。
「あれは自然の摂理から外れている。存在してはならないものだ」
まるで十手をこの世の終わりのように語る。奇妙だ。
その十手について詳しく聞きたかったが、それに関しては口が重くなるようだ。緊張した空気を変えようと別の話を首は切り出した。
「君の娘が来ていたよ」
「自分から来たのか?」
すぐに瑠璃のことだと分かった。
「驚いたよ。だが、手間が省けた。ついでにサプリを渡しておいたよ」
2人の会話に違和感を覚えた。カンダタたちは「夢楽土会」と言う単語が異様に纏わりついていたので誘導されているのだと結論した。しかし、2人は瑠璃が訪れは偶然だと言っている。
「まだできていないのでだろ?」
「問題はない。遅かれ早かれ、迎えに行くつもりだった」
昌次郎は黙り、物思いに耽った溜息を吐く。
「心配か?」
首の問いに昌次郎は沈黙を続ける。
「いや、やっと報われるのだと」
沈黙の後、ぽつりと呟いた。
すっかり暗くなった道端をカンダタは歩いていた。その歩調は遅く、途方に暮れていた。ここから瑠璃の自宅までの道順がわからないのだ。
どうしたものかと歩いていると一本の電柱灯に瑠璃が立っていた。
「なぜここにいると?」
古家の会合で瑠璃が来ていたことはあの会話で察していた。だが、カンダタと瑠璃は鉢合わせていないので瑠璃がカンダタを来ていたことは知らない筈だ。
「白糸よ。これで大体の位置をがわかるの」
だとしても待ってくれるとは思いもよらなかった。
「それは優しさか?」
瑠璃が優しさを持ち合わせていないのは充分理解しているが、一応確認してみる。
「勝手に解釈して」
それだけ言うと白い袋から揚げた鶏肉を取り出して何もない空間に差し出す。すると瑠璃の手から忽然と鶏肉が消えた。見慣れたくらいに何度も見てきた現象だ。
瑠璃にしか見えない白い隣人とやらの仕業だろう。ハクと呼ばれた白い鬼らしい。
現実離れした事象を経験してもこれだけは瑠璃の妄想話だとしか思っていなかったが、先程のようなものを見せられると見えない隣人も信じざるを得ない。
瑠璃は透明な容器に入った蛙の卵に似た黒い粒と亜麻色の液体を飲みはじめる。満足して笑っているのでおいしいのだろう。その蛙の卵に似た食物が。
「それで、どうだったの?」
前後の説明もなく、問いかける。彼女が待っていたのはカンダタが得た情報を聞く為だった。カンダタはそれまであったことを話す。
そうして、30分ぐらいした頃に障子が開けられた。
「首も先生の振る舞いが板についたようだな」
昌次郎が入ってきた者に声をかける。さえりや他の部下たちに向ける厳つい口調ではない。親しみを持った柔らかさがある。
「いや、演技するのも疲れる。しかし、優しい嘘だけでも人は騙されるのだな」
首と呼ばれた男の一面。それは詐欺師と言っても過言ではない。カンダタは息を秘めて会話を聞く。
「配布はどうだ?」
昌次郎が尋ねる。
「減ったよ。あの噂を気にしている者がいるようだ」
「警察もメディアも嗅ぎつけている。後がないぞ」
昌次郎には焦りがあった。今にも食われてしまいそう怯える。反対に首には余裕がある。
「もうすぐ完成する。あの兵器さえ揃えば現世に用はない。あそこでは警察もメディアも誰も立ち入れられない」
「それなら、安心、か」
「博士を急がせよう」
「そういえば、博士が言っていたぞ。あれを作らずとも兵器はあると。十手の形をしているだとか」
「あれは用いるな」
首が断言する。空気が張り詰めたのを感じる。首は続ける。
「あれは自然の摂理から外れている。存在してはならないものだ」
まるで十手をこの世の終わりのように語る。奇妙だ。
その十手について詳しく聞きたかったが、それに関しては口が重くなるようだ。緊張した空気を変えようと別の話を首は切り出した。
「君の娘が来ていたよ」
「自分から来たのか?」
すぐに瑠璃のことだと分かった。
「驚いたよ。だが、手間が省けた。ついでにサプリを渡しておいたよ」
2人の会話に違和感を覚えた。カンダタたちは「夢楽土会」と言う単語が異様に纏わりついていたので誘導されているのだと結論した。しかし、2人は瑠璃が訪れは偶然だと言っている。
「まだできていないのでだろ?」
「問題はない。遅かれ早かれ、迎えに行くつもりだった」
昌次郎は黙り、物思いに耽った溜息を吐く。
「心配か?」
首の問いに昌次郎は沈黙を続ける。
「いや、やっと報われるのだと」
沈黙の後、ぽつりと呟いた。
すっかり暗くなった道端をカンダタは歩いていた。その歩調は遅く、途方に暮れていた。ここから瑠璃の自宅までの道順がわからないのだ。
どうしたものかと歩いていると一本の電柱灯に瑠璃が立っていた。
「なぜここにいると?」
古家の会合で瑠璃が来ていたことはあの会話で察していた。だが、カンダタと瑠璃は鉢合わせていないので瑠璃がカンダタを来ていたことは知らない筈だ。
「白糸よ。これで大体の位置をがわかるの」
だとしても待ってくれるとは思いもよらなかった。
「それは優しさか?」
瑠璃が優しさを持ち合わせていないのは充分理解しているが、一応確認してみる。
「勝手に解釈して」
それだけ言うと白い袋から揚げた鶏肉を取り出して何もない空間に差し出す。すると瑠璃の手から忽然と鶏肉が消えた。見慣れたくらいに何度も見てきた現象だ。
瑠璃にしか見えない白い隣人とやらの仕業だろう。ハクと呼ばれた白い鬼らしい。
現実離れした事象を経験してもこれだけは瑠璃の妄想話だとしか思っていなかったが、先程のようなものを見せられると見えない隣人も信じざるを得ない。
瑠璃は透明な容器に入った蛙の卵に似た黒い粒と亜麻色の液体を飲みはじめる。満足して笑っているのでおいしいのだろう。その蛙の卵に似た食物が。
「それで、どうだったの?」
前後の説明もなく、問いかける。彼女が待っていたのはカンダタが得た情報を聞く為だった。カンダタはそれまであったことを話す。
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