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7章 赤い珠が映す空想未来
恋する鬼 2
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血は今でも流れていて止まる気配もなく、雨と泥と混ざり合う。
放置すれば死ぬだろう。
私は彼を背負うと雨が当たらない縁側の中へと入った。
彼を助けたのは気まぐれみたいなもので、理由は単純に「綺麗」と言った言葉の真意を知りたいのと宝物のような美しい赤い瞳を見たかったから。
蝶男に見つかったらどうなってしまうのかなんて、その時は考えていなかった。
布団は余っていて天気が良い日は干していた。蝶男は寝泊まりしないから私以外に使う人はいない。やることがないからと言う理由だけで干していた布団だった。こんな場面で使うことになるとは思わなかった。
布団を敷いて、その上に彼を寝かせた。身体はどこも擦り傷だらけで一番酷いのは背中の右肩から左の脇腹までを大きく抉った刀傷だった。
生きた人間の傷をどうやって直せばいいのか。
私が考えている間にも血は流れ続ける。
緊張はしていたけど焦ってはいなかった。
私は急いで綺麗な水と棚の奥で使われなくなった軟膏と布を出した。
黒衣を剥いでうつ伏せにさせる。
落ち着いた頭で思い出したのは怪我した兄に乳母が手当てする光景だった。
泥や血で汚れた背中を清潔な布と水で拭く。その後に糸が繋がった針を持ち、尖った先を皮膚に当てた。
落ち着いていたはずの心がざわざわと波打つ。
大きく破けた布を塗って直したこともある。要領はそれと一緒。私ならできる。
自分の中で言い聞かせてひと思いに針を刺した。
彼から低いうめき声がして、私は刺した針を動かさずに様子を伺う。
気絶しているわけではなさそうで、だからといって針の痛みに抵抗するほどの体力は残っていないようだった。
作業が続行できると判断して、生唾を飲んでから針を進めた。
抉れた刀傷を縫われるのは相当痛いらしく、彼から「痛い、やめろ」と弱い言葉が繰り返された。
作業に集中したかった私は散々駄々捏ねる彼の顔に平手打ちをしてから黙らせようかと考えたが、苦しんでいるのは彼なのだと思い直して弱音ぐらいは吐かせてもいいかと我慢した。
斬られた傷口が二度と開かないようにきつく塗った後に軟膏を塗ってその上に布を巻いた。
ひと通りの作業を終えると彼の鼻に手を当てて、呼吸を確認する。弱いけど息はしている。
縫ってる時はあんなにうるさかったのに今は死んだように眠っている。
眠ってはいるが、苦しそうにも見える。私ができることはあるかと考えて、何もできないと思い至った。
血で汚れた布や桶を片付けて、秋の寒い夜に備えて炭を運んだ。
彼のもとに戻って、また呼吸を確認する。呼吸が弱いから何度も確かめてしまう。
呼吸はある。安心して、体温が高くなっていることにまた心配事が増えた。
急いで片付けた桶を取りに行き、雨の中、井戸まで行って水を汲んだ。
水を張った桶を持ってくると彼は息苦しそうに寝返りをうとうとしていた。
傷口が開くのを恐れた私は乱雑に桶を乱雑に置いて彼の肩を優しく掴み、裏返しそうになるのを止めた。
全身は汗でびっしょりと濡れていた。
さっきまで死んだように眠っていたのに、熱が上がり始めると寝返りや寝言はできるようになった。
汗を拭いていると彼から「あつい」と寝言での苦情が来た。
こんなに尽くしているのに文句を言われるのは腹立たしいけど囲炉裏と布団との距離は近いかもしれない。
私は布団の端を掴むと壁になるべく近づくようにとずるずると引き摺った。
少しは楽になるかな。
放置すれば死ぬだろう。
私は彼を背負うと雨が当たらない縁側の中へと入った。
彼を助けたのは気まぐれみたいなもので、理由は単純に「綺麗」と言った言葉の真意を知りたいのと宝物のような美しい赤い瞳を見たかったから。
蝶男に見つかったらどうなってしまうのかなんて、その時は考えていなかった。
布団は余っていて天気が良い日は干していた。蝶男は寝泊まりしないから私以外に使う人はいない。やることがないからと言う理由だけで干していた布団だった。こんな場面で使うことになるとは思わなかった。
布団を敷いて、その上に彼を寝かせた。身体はどこも擦り傷だらけで一番酷いのは背中の右肩から左の脇腹までを大きく抉った刀傷だった。
生きた人間の傷をどうやって直せばいいのか。
私が考えている間にも血は流れ続ける。
緊張はしていたけど焦ってはいなかった。
私は急いで綺麗な水と棚の奥で使われなくなった軟膏と布を出した。
黒衣を剥いでうつ伏せにさせる。
落ち着いた頭で思い出したのは怪我した兄に乳母が手当てする光景だった。
泥や血で汚れた背中を清潔な布と水で拭く。その後に糸が繋がった針を持ち、尖った先を皮膚に当てた。
落ち着いていたはずの心がざわざわと波打つ。
大きく破けた布を塗って直したこともある。要領はそれと一緒。私ならできる。
自分の中で言い聞かせてひと思いに針を刺した。
彼から低いうめき声がして、私は刺した針を動かさずに様子を伺う。
気絶しているわけではなさそうで、だからといって針の痛みに抵抗するほどの体力は残っていないようだった。
作業が続行できると判断して、生唾を飲んでから針を進めた。
抉れた刀傷を縫われるのは相当痛いらしく、彼から「痛い、やめろ」と弱い言葉が繰り返された。
作業に集中したかった私は散々駄々捏ねる彼の顔に平手打ちをしてから黙らせようかと考えたが、苦しんでいるのは彼なのだと思い直して弱音ぐらいは吐かせてもいいかと我慢した。
斬られた傷口が二度と開かないようにきつく塗った後に軟膏を塗ってその上に布を巻いた。
ひと通りの作業を終えると彼の鼻に手を当てて、呼吸を確認する。弱いけど息はしている。
縫ってる時はあんなにうるさかったのに今は死んだように眠っている。
眠ってはいるが、苦しそうにも見える。私ができることはあるかと考えて、何もできないと思い至った。
血で汚れた布や桶を片付けて、秋の寒い夜に備えて炭を運んだ。
彼のもとに戻って、また呼吸を確認する。呼吸が弱いから何度も確かめてしまう。
呼吸はある。安心して、体温が高くなっていることにまた心配事が増えた。
急いで片付けた桶を取りに行き、雨の中、井戸まで行って水を汲んだ。
水を張った桶を持ってくると彼は息苦しそうに寝返りをうとうとしていた。
傷口が開くのを恐れた私は乱雑に桶を乱雑に置いて彼の肩を優しく掴み、裏返しそうになるのを止めた。
全身は汗でびっしょりと濡れていた。
さっきまで死んだように眠っていたのに、熱が上がり始めると寝返りや寝言はできるようになった。
汗を拭いていると彼から「あつい」と寝言での苦情が来た。
こんなに尽くしているのに文句を言われるのは腹立たしいけど囲炉裏と布団との距離は近いかもしれない。
私は布団の端を掴むと壁になるべく近づくようにとずるずると引き摺った。
少しは楽になるかな。
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