微笑みの貴公子に婚約解消された私は氷の貴公子に恋人のふりを頼まれました

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アリア視点

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「まだ、ミリーは帰って来ないの?」

 ミリーには暫く隠れていて貰わなきゃいけないのに、彼女は遣いに出たきり夜になっても戻って来なかった。

「はい、探しに行きますか?」
「お願い、そうして」

 ミリーは私の秘密をいっぱい知っている。だからたくさんの口止め料を払うつもりだった。

 ミリーは大人しくて無口で、私に逆らったことなんて無い。忠誠心の厚いミリーなら捕まってもべらべらと喋らないって思うけど……念の為。

 お父様の言うように、ミリーが一番、顔もバレていて危ないのよね。




 そしてその夜、ミリーは帰って来なかった。




 翌日、日が登ると同時に夥しい数の王宮騎士たちが我が侯爵邸内に入ってきて、お父様と私、そしてゼノを拘束した。

「何だっ!ここはティリス侯爵邸だぞ?」

「はい。承知しております。ティリス侯爵、ご息女のアリア様、元王宮魔法師ゼノに拘束命令が出ています」

 王宮騎士が私達に見せたのは陛下の印璽の入った正式な命令書。邸内はすでに制圧されていて、お父様も抵抗するのは、無駄だと悟ったようだ。


 


 お父様とゼノは別々の場所に連れて行かれた。私が入るよう促されたのは王宮の地下にある薄暗い小部屋。

 部屋の中にはレオとシリルがいた。
 良かったっ……。
 私はホッとして、レオとシリルに笑いかけた。

「レオ、シリル、助けて?私に何かの容疑がかかっているらしいの」

 二人とは小さな頃からの幼馴染みだ。
 まさか窮地に立たされた私を見捨てるなんて冷たい事はしないだろう。
 
 きっと二人は私の所に駆け寄って心配してくれる、そう思っていたのに……。彼らは私を心配する事も、駆け寄ることもなくて……。
 睨むように私を見据えたまま……。

 え?
 小さな頃一緒に遊んだ私がこんな目に合っているのよ?

「ああ、俺の狩猟会を台無しにした容疑がな」
「ええ、僕のヴィアを殺そうとした容疑がね」
 
 冷たく突き放すような言い方だった。

 二人は私を主犯だと思っているみたい。

 あっ、そうか……。私の侍女のミリーが薬を盛ったと疑われているのね……。
 このまま犯罪者にされちゃったら困るし否定しなきゃいけないわ。

「そんな事……私は知らないわ!」

 こんな時、絶対認めちゃ駄目よね。
 私は命令なんかしていないって言い張らなくちゃ。
 それにしても、私のしたことはどこまでバレているのかしら?容疑って言ってたし、まだ確証は無いって事よね?

「知らない?そうですか?」

 壮年の騎士が私の目の前に座った。レオとシリルは騎士の後ろに立っていて、私は三人に尋問されているみたいな格好になった。

「カリテス伯爵令嬢であるフラヴィア様が狩猟会で急に強い眠気に襲われたそうですが心当たりはありませんか?」

「無いわ」

「カヌス男爵令嬢のミリー様はアリア様の侍女をしていたそうですね」

「ええ。そうよ」

「ミリー様の淹れたお茶をフラヴィア様は飲んだそうですね」

「さあ?あの時、誰がお茶を淹れたかなんて知らないわ」

「そうですか……。貴女がカリテス伯爵令嬢に救護テントで休むように指示したそうですね?」

「ええ、辛そうでしたので……。親切心です」

「その救護テントに待機していた医師と看護師は姿を消したそうです。何故か分かりますか?」

「いいえ、まったく。その医師と看護師の職務怠慢ではありませんか?」

 はっきりと聞けば良いのに、回りくどい質問の仕方でイライラする。変な事を言って墓穴を掘らないように頭をフル回転させて返答するのに必死だった。

「そうではありませんでした。医師と看護師は他の病人を診て欲しいと頼まれたようです」

「まあ!それでは仕方ありませんね」

 口元に手を当て驚いたような仕草をする私をレオとシリルが表情を変えずに見つめていた。全て見透かされ、見下されているようで落ち着かない。 

「その病人ですがね、調査の結果、招待された貴族ではなくて街の何でも屋だということが判明しました。所謂、破落戸ですね」

「まあ!そんな男が会場に?恐ろしいですわね」

「その男、ある貴族令嬢によって狩猟会の会場に連れて来られたようですよ?」

「……え?」

 あの男、捕まったのね。なんて間抜けなの……っ。でも、私は変装姿しか見せていない。
 あんな街のゴミみたいな男が私の顔なんて知っているはずがないもの。

「まあ!誰なのかしら?」

「その男がティリス侯爵令嬢アリア様からの依頼を受けたと証言しています」

「えっ?何のこと?知らないわ!勘違いじゃないの?あの場所には貴族令嬢なんて大勢居たじゃない!」

「ああいう輩は依頼人の身元を必ず調べます。貴女はあとをつけられていたそうです。依頼人の女性がティリス侯爵家の家紋のついた馬車に乗り込むのを確認したと……」

 そんな……。あとをつけられていたなんて気づかなかった。
 
 あっ、そうだ!

「……ミリーじゃ無いの?」
 
 ミリーだって貴族令嬢。彼女なら家の馬車に乗り込むことも不自然じゃない。

「カヌス男爵令嬢は既にグラディウス公爵家で保護されています。彼女には既に色んな証言を頂いておりますよ」

 え?
 ……まさか……。
 あのミリーが私を裏切った……の?

 今まで知らないふりをしていたのは全て無駄だったって事? 

 ミリーが今までのことを全部話したのなら、私は終わりだわ。 

 私はレオとシリルを見上げた。
 彼らは全くの無表情で、私に一言も同情の言葉を掛ける事すら無かった。



~・~・~・~・~




 結局、私はカリテス伯爵令嬢殺害を企んだ罪で有罪になった。お父様とゼノもそれぞれ有罪。
 お父様とゼノは違法の魔道具を製造、販売していた罪も明るみになった。

 父は爵位を剥奪され収監。父の年齢ではもう出てこれないだろう。
 私も父の爵位剥奪と共に身分を失い、王都追放となった。
 
 











     
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