魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫

文字の大きさ
46 / 63
青年期

45

しおりを挟む
「あ」

触れる直前になって今度はこちらがシュバっと窓側に避ける。

目を先ほどよりも見開くリウ君。

あ、やっちゃった。
さりげなく下がれば良かったのに露骨に避けちゃった。

「あ、ごめんリウ君。えっと、避けたわけじゃなくて…びっくりしたというか…虫がね?虫が飛んできて?」
言い訳がましいか?

自分の手を見つめたリウ君はハッとしたように手を下げた。
手を引っ込めたリウ君は、「すみません。触ろうとして」とシュンとしている。
まるで、捨てられた子犬である。
罪悪感がじわりじわりと心に染み込んだ。

重くなった空気を何とかしようとバサッとフードを深くかぶり直し、窓の外を眺めることにした。
「わ、わあー。外綺麗だなー」
棒読みにも程がある俺の言葉をリウ君が律儀に拾ってくれた。

「そうですね…何もありませんけど」
いや、そんなことはないようだ。

見るからに落ち込んでしまったリウ君は、自分のズボンをぎゅっと握りしめうつむいている。
外を見もしていない。
「…あ、あの木なんていうんだろう。白くて綺麗だなぁ」
話しているうちに景色は街並みから森に移り変わり、見る景色ほとんどが木になってきた。
ここら一帯は、白い木が群生しており、まるで冬のようである。

そうそう、この世界の季節は二つしかなくて前世で言う春と冬くらいかな?暑すぎないけど冷えるときは寒いみたいな。そんな季節が半々にやってくる。


諦めずに俺が必死に外の景色を絶賛していると遠くにわずかに黒いものが見えた。
空に昇っていくあれは…煙だ。
「あ、ほら。あそこなんてほら…煙が…煙?」
方角的にあっちは俺の家があるところである。
前回下見に来た時にはあんなものは見えなかった。
あるのは俺の家と森。
それと森の中にあるらしい「彼」のいる屋敷。

「え、ちょっと、なんで煙なんか出てんの?!まさか火事?!」
まだ、住んでもいないのに全焼とか勘弁してくれよ?!
それか、山火事か?いや、森火事?
俺の慌てっぷりにリウ君はさすがに冗談ではないと思ったのか、ゆっくりと顔を上げた。

「え、本当に煙がっ。おじさんっ」

御者席につながる小窓を開けながらリウ君が叫んだ。

「ああ、見えてる。あっちに向かって大丈夫なのかい、兄ちゃん。もし、あの煙が魔物を呼び寄せる魔道具からのものだった場合…やべぇぞ」

そ、そんなのあんの?聞いてないんだけど。
リウ君がフルフルと頭を振っている。

「もし、あの煙がその魔物を呼び寄せる魔道具だったとしてどうなります?」

恐る恐る聞いてみるとおじさんの笑うような声が聞こえた。

「そんなの、決まってるだろ。ここら一帯はもちろん、その先のハーベル王国まで被害が行くだろうな」
そんなことを言う御者のおじさん。
全然笑えないんだが?

脳裏に両国の揉める姿がまざまざと浮かんだ。

「いやいや、でもハーベル王国との国境にだって門番さんとかいるでしょ?」
それに魔物が来ないように結界とかあるんじゃないの?
小窓に乗り出すように叫ぶ俺。
「いたとて…なんだ?こちらから魔物を送ったと思われれば宣戦布告と取られてもしょうがない」

「むしろ、それを好機と捉えて戦を仕掛けてくるかもな」
そんな?!

いや、待て。落ち着け。そもそも魔物を呼び寄せる魔道具と決まったわけじゃない。
そうだ、ただの火事かも。

だからと言って俺の家が燃えている可能性もあるわけだから…とりあえず俺の家に急いでくれ!!


「実際、昔あったらしい。他の国の話だがな。二つの国を争わせて両方の国を乗っ取ろうとした奴が魔物を放ったんだ」

なにそれ。漁夫の利じゃん。こっわ。

馬車に揺られながらおじさんの話に耳を傾ける。

「ま、結局そいつの犯行だってバレて一族に留まらず親族まで刑罰を受けた。もちろん主犯の貴族は解体され死刑」

お、おお。恐ろしい単語が。
関係ない人はマジで可哀想なやつな。

「結構な死傷者が出たらしい。…だから、気を付けた方がいいぞ。国境沿いで森の中、何があるかわからない。詮索はしないが早めに引っ越しをした方がいいぞ」

そうなんだけどねぇ?俺だって引っ越したいけど!いろいろと問題があるんだよ。


あ――、安請け合いしたか?
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

英雄の溺愛と執着

AzureHaru
BL
転生した世界は前世でどハマりしたBLゲーム。最推しは攻略対象!ではなく、攻略対象達の剣術の師匠である、英雄の将軍閣下。メチャクチャイケオジでドストライクだった主人公はこのイケオジみたさにゲームをやっていた。その為に、ゲームの内容など微塵も覚えていなかった。 転生したからには将軍閣下を生でみないとというファン根性で付きまとう。 付き纏われていることに気づいていた将軍だか、自分に向けられる視線が他とは違う純粋な好意しかなかったため、戸惑いながらも心地よく感じていた。 あの時までは‥。 主人公は気づいていなかったが、自分達にかけらも興味を持たないことに攻略対象者達は興味をそそられ、次第に執着していく。そのことにいち早く気づいたのは剣術指南役の将軍のみ。将軍はその光景をみて、自分の中に徐々に独占欲が芽生えていくのを感じた。 そして戸惑う、自分と主人公は親子ほどに歳が離れているのにこの感情はなんなのだと。 そして、将軍が自分の気持ちを認めた時、壮絶な溺愛、執着がはじまる。

悪役の僕 何故か愛される

いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ 王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。 悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。 そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて… ファンタジーラブコメBL 不定期更新

魔王様の執着から逃れたいっ!

クズねこ
BL
「孤独をわかってくれるのは君だけなんだ、死ぬまで一緒にいようね」 魔王様に執着されて俺の普通の生活は終わりを迎えた。いつからこの魔王城にいるかわからない。ずっと外に出させてもらってないんだよね 俺がいれば魔王様は安心して楽しく生活が送れる。俺さえ我慢すれば大丈夫なんだ‥‥‥でも、自由になりたい 魔王様に縛られず、また自由な生活がしたい。 他の人と話すだけでその人は罰を与えられ、生活も制限される。そんな生活は苦しい。心が壊れそう だから、心が壊れてしまう前に逃げ出さなくてはいけないの でも、最近思うんだよね。魔王様のことあんまり考えてなかったって。 あの頃は、魔王様から逃げ出すことしか考えてなかった。 ずっと、執着されて辛かったのは本当だけど、もう少し魔王様のこと考えられたんじゃないかな? はじめは、魔王様の愛を受け入れられず苦しんでいたユキ。自由を求めてある人の家にお世話になります。 魔王様と離れて自由を手に入れたユキは魔王様のことを思い返し、もう少し魔王様の気持ちをわかってあげればよかったかな? と言う気持ちが湧いてきます。 次に魔王様に会った時、ユキは魔王様の愛を受け入れるのでしょうか?  それとも受け入れずに他の人のところへ行ってしまうのでしょうか? 三角関係が繰り広げる執着BLストーリーをぜひ、お楽しみください。 誰と一緒になって欲しい など思ってくださりましたら、感想で待ってますっ 『面白い』『好きっ』と、思われましたら、♡やお気に入り登録をしていただけると嬉しいですっ 第一章 魔王様の執着から逃れたいっ 連載中❗️ 第二章 自由を求めてお世話になりますっ 第三章 魔王様に見つかりますっ 第四章 ハッピーエンドを目指しますっ 週一更新! 日曜日に更新しますっ!

BLゲームの悪役に転生したら攻略対象者が全員ヒロインに洗脳されてた

BL
主人公のレオンは、幼少期に前世の記憶を思い出し、この世界がBLゲームで、自身は断罪される悪役だと気づく。 断罪を回避するため、極力攻略対象者たちと関わらないように生きてきた。 ーーそれなのに。 婚約者に婚約は破棄され、 気づけば断罪寸前の立場に。 しかも理由もわからないまま、 何もしていないはずの攻略対象者達に嫌悪を向けられてーー。 ※最終的にハッピーエンド ※愛され悪役令息

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

『悪の幹部ですが、正義のヒーローの愛が重すぎて殉職しそうです』

るみ乃。
BL
世界を脅かす悪の組織『デッド・エンド』。 その幹部として恐れられる「冷徹な死神」シャドウ…… しかしその正体は、組織壊滅を目的に潜入中の捜査官・瀬戸だった。 悪役を演じつつ任務に励む日々の中、彼の前に立ちはだかる最大の難敵は、正義のヒーロー「ルミエール」こと天道光希。 敵同士のはずなのに、なぜか光希は瀬戸を命がけで守り、 命がけで溺愛してくる。 爽やかさゼロ、純度100%、とにかく重い愛情に振り回されながら、 瀬戸は今日も正義と悪の狭間で右往左往。 これは、逃げたいのに逃げられない潜入捜査官と、愛が重すぎるヒーローが織りなす、甘くて騒がしいBLラブコメ。

処理中です...