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Vol.3.初デートでまさかの
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――にっこり、と、微笑みかけられている……。跪く王子様に。
どうしよう。胸が、高鳴る……。
アパレル系勤務で、それなりに、美男美女に慣れているあたしでも、もう、……蕩けそう。
だって。彼。ワイシャツの袖をまくっていて。肘から下が見えて、筋肉質で。細いのに、骨ばっていて。動作が俊敏。鍛え抜かれた男のからだだ。客商売をしているからそのくらいは分かる。――努力の人だ。
挙句。愛おしそうに眼を細め、「……大丈夫だから。気を付けていきな。ね」
頭をぽんぽんされた瞬間、本気で脳がシェイクされたかのような感覚を味わった。――気、気が、狂いそう……。
にっこりと微笑み、機敏な動作で立ち上がった彼は、するり。背を向けたので……
たまらずあたしはそのワイシャツの広い背中に呼び掛けた。「あ、あのぉっ……っ!」
細い腰に手を添えた彼は振り向いた。「……うん。どうしたの」
どうしたって、いや、あの、その……。
あなた。超絶的過ぎて言葉が出ないよう……。
苦しくなった胸を押さえていると、彼が、たたた、と、素早くあたしに近寄り、あたしの背に手を添えると、下からあたしの顔を覗き込んでくる。――きゅん。
「大丈夫? 具合悪いんなら、駅員さん呼ぼ――」
「……あなたのせいです」彼の言葉を遮った。「あ……あなたが。朝っぱらこんな……か、格好良すぎるから……知らない女を姫抱きするとかいったいあなた、なに考えてるんです!! そんなことされたら普通は、女は即オチですよ!」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。抜けた顔もキュートで可愛い。……が。彼は。腰を折り、平らなお腹を押さえて、ははは、と弾けるように笑い出した。
「ちょっとあなた……あたし、真剣なんですよ?」あたしは本気でむっとした。だって彼の笑った顔が、無邪気で、可愛いんだもの。「本当に……他の女にこんなことしたらストーキングされますよ。冗談じゃなく」
笑いを止め、目尻の涙を拭った彼は、真面目腐った顔であたしを見据えた。――きゅん。
彼の、端正な唇が動く。――大丈夫、と。
え? と口を開いたままのあたしに彼は、
「他の女の子に、こんなことしたりしないよ。……ごめん。正直に言うね。……おれ。
――きみに、一目惚れしたのかもしれない」
* * *
二回目に会った時、あなたは、仕事帰りのスーツ姿だったよね。あたしの休みに合わせて、わざわざ平日に、こっちに来てくれた。――へーえ。花見町に、住んでるんだ。住みたい街ランキング一位の街だよね。行ってみたいなあ……。
ワイシャツ姿も萌え萌えしたけど。紺のスーツでびしーっと決めたあなたも最高だった。逃走中かよ。
携帯もいじらず。あたしの勤務するビルの裏口の前で待つあなたは、夜闇のなかで、輝いて見えた。
白い肌が、鬱蒼とした桜の森のなか、浮かび上がって見えて……宝石みたいだった。
あたしに気づくとあなたはすぐに微笑んだ。そして……手を振った。
正直、その胸に飛び込みたいとさえ思った。あなたに姫抱きされた感触が、あたしを手放さないんだよ。……知ってる? 大樹。
あなたの息遣い。厚い胸板の感触。固いお腹。前を向いたときのきりりとした眼差し。首筋にうっすら汗をかいて……あたしの背や膝下に回されたあなたの大きな手のひらの感触。……どれもが、あたしを、虜にして、離さない。
自分から誘っておいてなんだけど。その日。せっかくの初デートなのに。あたしは、居酒屋で、寝落ちしてしまった。
あなたは、あたしを起こすことなどなく。携帯などいじらず。じぃーっとあたしを見ていた。起きた瞬間、美しい眼差しとかち合って、どぎまぎした。「うわごめんなさい。あたし、……寝ちゃってた? ああぁ本当……ごめんなさい!!」
テーブルに手をついて詫びるあたしの頭をぽんぽんするあなた。あたしが顔を起こすとあなたは、柔らかく笑い、「疲れているんだよ」と言っておしぼりを差し出す。
「中村さん。仕事帰りで疲れてるのに、むしろ、誘ってくれて、ありがとう。……眠ってくれて、むしろ役得だよ。
きみの、可愛い寝顔が見られたから……もっと、見ていたい」
「しっ……篠田さん……!」
「大樹って呼んで。美ー紗。おれたちもう、そういう関係だよね」
「そ、そういう関係ってどういう……」
頬杖をついたまま、彼はにっこりと微笑んだ。「おれはきみが大好きで。きみは、おれが、大好き。美紗。……おれたち、付き合おう」
――しかしながら、あたしはその提案を、すぐには受け入れられなかったのである。
*
どうしよう。胸が、高鳴る……。
アパレル系勤務で、それなりに、美男美女に慣れているあたしでも、もう、……蕩けそう。
だって。彼。ワイシャツの袖をまくっていて。肘から下が見えて、筋肉質で。細いのに、骨ばっていて。動作が俊敏。鍛え抜かれた男のからだだ。客商売をしているからそのくらいは分かる。――努力の人だ。
挙句。愛おしそうに眼を細め、「……大丈夫だから。気を付けていきな。ね」
頭をぽんぽんされた瞬間、本気で脳がシェイクされたかのような感覚を味わった。――気、気が、狂いそう……。
にっこりと微笑み、機敏な動作で立ち上がった彼は、するり。背を向けたので……
たまらずあたしはそのワイシャツの広い背中に呼び掛けた。「あ、あのぉっ……っ!」
細い腰に手を添えた彼は振り向いた。「……うん。どうしたの」
どうしたって、いや、あの、その……。
あなた。超絶的過ぎて言葉が出ないよう……。
苦しくなった胸を押さえていると、彼が、たたた、と、素早くあたしに近寄り、あたしの背に手を添えると、下からあたしの顔を覗き込んでくる。――きゅん。
「大丈夫? 具合悪いんなら、駅員さん呼ぼ――」
「……あなたのせいです」彼の言葉を遮った。「あ……あなたが。朝っぱらこんな……か、格好良すぎるから……知らない女を姫抱きするとかいったいあなた、なに考えてるんです!! そんなことされたら普通は、女は即オチですよ!」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。抜けた顔もキュートで可愛い。……が。彼は。腰を折り、平らなお腹を押さえて、ははは、と弾けるように笑い出した。
「ちょっとあなた……あたし、真剣なんですよ?」あたしは本気でむっとした。だって彼の笑った顔が、無邪気で、可愛いんだもの。「本当に……他の女にこんなことしたらストーキングされますよ。冗談じゃなく」
笑いを止め、目尻の涙を拭った彼は、真面目腐った顔であたしを見据えた。――きゅん。
彼の、端正な唇が動く。――大丈夫、と。
え? と口を開いたままのあたしに彼は、
「他の女の子に、こんなことしたりしないよ。……ごめん。正直に言うね。……おれ。
――きみに、一目惚れしたのかもしれない」
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二回目に会った時、あなたは、仕事帰りのスーツ姿だったよね。あたしの休みに合わせて、わざわざ平日に、こっちに来てくれた。――へーえ。花見町に、住んでるんだ。住みたい街ランキング一位の街だよね。行ってみたいなあ……。
ワイシャツ姿も萌え萌えしたけど。紺のスーツでびしーっと決めたあなたも最高だった。逃走中かよ。
携帯もいじらず。あたしの勤務するビルの裏口の前で待つあなたは、夜闇のなかで、輝いて見えた。
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あたしに気づくとあなたはすぐに微笑んだ。そして……手を振った。
正直、その胸に飛び込みたいとさえ思った。あなたに姫抱きされた感触が、あたしを手放さないんだよ。……知ってる? 大樹。
あなたの息遣い。厚い胸板の感触。固いお腹。前を向いたときのきりりとした眼差し。首筋にうっすら汗をかいて……あたしの背や膝下に回されたあなたの大きな手のひらの感触。……どれもが、あたしを、虜にして、離さない。
自分から誘っておいてなんだけど。その日。せっかくの初デートなのに。あたしは、居酒屋で、寝落ちしてしまった。
あなたは、あたしを起こすことなどなく。携帯などいじらず。じぃーっとあたしを見ていた。起きた瞬間、美しい眼差しとかち合って、どぎまぎした。「うわごめんなさい。あたし、……寝ちゃってた? ああぁ本当……ごめんなさい!!」
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「しっ……篠田さん……!」
「大樹って呼んで。美ー紗。おれたちもう、そういう関係だよね」
「そ、そういう関係ってどういう……」
頬杖をついたまま、彼はにっこりと微笑んだ。「おれはきみが大好きで。きみは、おれが、大好き。美紗。……おれたち、付き合おう」
――しかしながら、あたしはその提案を、すぐには受け入れられなかったのである。
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