トキメキは突然に

氷室龍

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恋人編~蒼虎の狩り~

ゲス男殲滅作戦開始

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今回も香港の方がお兄様を伴って登場です。

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ゲス男殲滅作戦開始

ホテルのラウンジに着くと敖炎ごうえん専務ががソファでくつろいでいた。
隣にはいたことのない男性が一緒だった。
その男性は敖炎氏によく似た面立ちのスマートな男性で恐らくお兄さんなのだろうと想像がついた。

「お待たせして申し訳ありません。」
「いえ、俺たちも今着いたばかりですので。」
「そうですか。
 それでそちらの方は?」
「申し遅れました。 兄の敖紹ごうしょうです。」

そう言って差し出された名刺を受けとりながら驚きを隠せない。
何故ならそこには『敖家有限公司 代表取締役社長』の肩書が見えたから。
私は失礼がないように自身の名刺を渡し、自己紹介をする。

「三浦商事、営業三課課長の一之瀬佳織です。」
「弟がお世話になっているようで。」
「いえ、そんな…。」
「聞けば弟の恋人はあなたの従妹だとか。」
「そうですね、弟しかいない私にとっては本当に妹ですよ。
 といっても、変に干渉はしていません。
 雫は心配性の叔父夫婦から頼まれて私の目の届くところに住まわせてるだけですから。」
「そうですか。」
「子供のころから、色々と見えないモノが見える・・・・・・・・・子でしたから。」
「それはどういうことですか?」
「そのままの意味です。
 母方が水神を祭る神社の神職でして…。
 雫の祖父は次男だったので分家して医者になったんです。
 そういうのに限って力が強く出るみたいです。」
「それはありますね。」

私は敖紹社長ととりとめもない話をする。
今回の来日は敖炎専務の進捗状況の確認と日本に留学時代の友人に会いに来たのだという。
なんでも女っ気のなかったその友人が結婚するらしいと聞きつけたので冷やかしに来たのだとか。
しかも相手がその友人の教え子だと聞いていて散々嫌味を言ってやろうと思ってるそうだ。
相手の友人に同情するわ。
そんな話ばかりしてると、敖炎専務が話を切り替えようと声を発した。

「兄さん、そろそろ本題に…。」
「そうだったね。
 一之瀬さん、そちら側の条件を伺えますか?」
「はい。 我が社としては…。」

私は資料を広げて商談を始めた。
商談は滞りなく進む。
商談もうまく纏まり、敖紹社長と握手を交わす。
と、敖炎専務が何かに気付いたようだった。

「専務どうしました?」
「あちらにいるのは一之瀬さんの部下ではありませんか?」
「え?」

敖炎専務の視線の先には確かに山中さんがいた。
勿論、一緒にいるのはあのゲス男だ。
鼻の下伸ばして舌なめずりするような視線に腹が立つ。

「相手は中川物産のドラ息子か…。」
「敖紹社長は彼をご存じなのですか?」
「知っているというか…。」
「?」
高雄カオシュンで問題を起こした男だったのでよく覚えているだけです。」
高雄カオシュンって台湾南部のあそこですか?」
「そうです。
 そこであの男は随分舐めた真似をしてくれましてね。」
「舐めた真似?」
「人の縄張りを荒らしたんですよ。」
「なるほど、彼ならやりそうですね。
 それで、海外へ左遷させられたので。」
「おや、そうだったのですか。」
「もしかして、あの男のせいで何か被害をこうむられたのですか?」
「被害というか、食い散らかしていったというのが正解でしょうか。
 おかげで、私が後始末をする羽目になりましたよ。」
「それは…。」
「一之瀬さん。」
「はい、なんでしょう?」
「放っておいてよいのですか?」
「と言われますと?」
「どう見ても、あの男の次の獲物はあなたの部下ですよ。」

敖紹社長は既に見抜いているようで私は息を呑んだ。
したり顔で目を細め、口の端を上げる敖紹社長。
どうやら、この型は私の意図に気付いているようだ。

「兄さん、何をするつもりなんだ?」
「何もしないよ。」
「何もしない?」
「ただ、傍観するだけさ。」
「何で…。」
「私がしなくても一之瀬さんがするのでしょ?」

私に話を振られため息をつくしかなかった。
敖紹社長は楽しくて仕方ないと言った感じだ。
これはもう引っ張り込むしかないな。

「そうですね。 既に手は打ってありますよ。」
「もしかしてその『手』というのは『紅龍ホンロン』ですか?」
「!!!」
「図星ですか。」
「紅龍をご存じなのですか?」
「彼には高雄の一件を手伝っていただきました。」
「そうですか…。」
「なので、今回は返礼ということでお付き合いさせてもらえませんか?」

私の答えなどとうに決まっている。
彼らも一緒ならあのゲス男を完膚なきまでに叩きのめせるのは間違いない。
私は静かに頷いた。
そして、二人の後を追いレストランへ向かい、その後の行動を見張る。
いつも通りに食事をしている。
問題はその後なんだよねぇ。

「どうやら、いつもの手のようですね。」
「アイツ、あんなことばかりしているのか?」
「ええ。」

私は敖兄弟にそう返すのが精いっぱいだった。
まさか、ここまでかわらずな手を使うとは…。

「喉元過ぎれば熱さ忘れる、ですか…。」
「その通り。 ヤツは下半身も緩けりゃ、頭も緩いんですよ。」

そう言って近づいてきたのは雅紀だった。
何故か、志穂を連れている。
私が首を傾げていると、肩を竦めながら苦笑いをする雅紀。

「偶然を装うためですよ。」
「なるほどね。」
「一応、釘を刺してきます。」
「よろしくね。」
「ちなみに部屋は最上階のスイートを取ってるみたい。」
「了解。」

で、雅紀は志穂を伴ってヤツのテーブルに近づき何事か話している。
ふむ、少し動揺したそぶりは見せてるが、結局は『糠に釘』か…。
計画に変更ないらしい。

「ところで、彼女はあの男の目的に気付いているんですか?」
「勿論です。 アイツがどういうことをしてきたのか話してあります。」
「つまり、彼女は『囮』だと?」
「まぁ、そんなところです。」
「そろそろ、動くみたいだ。」

敖炎専務の言葉に私たちは二人を見やる。
どうやら少し山中さんの足取りがおぼつかない。
でも、意識はしっかりあるっぽいから、もう少し泳がせるか…。

「我々も行きますか?」
「そうですね。」

私たちもレストランを後にする。
私はバッグの中身をもう一度確認した。
そこにあるのは例の眼鏡ケース。

(ホントはこれ、使いたくないんだけど)

そうは言っても、もはやヤツは禁忌を犯している以上制裁を加えるしかない。
そう思い、私は敖兄弟とともに最上階へと向かった。

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いよいよ、次回ゲス男を殲滅です。
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