トキメキは突然に

氷室龍

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恋人編~蒼虎の狩り~

ゲス男の末路

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いつもより短めです。

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ゲス男の末路

私たちは二人の後を追って部屋に入った。
すると、そこには見事に組み伏せられたゲス男がいた。

「ぐぇぇぇぇ。」
「あまり暴れないでもらえますか?
 でないと、関節外れちゃいますよ。」

そういってにこりと微笑む相楽さん。
眼が一向に笑っていない。
うん、さすがは空手の有段者だわ。

「随分と、無様な姿ね。」
「これ、は、どう、いう…。」
「…………。」

私はため息しか出なかった。
このどうしようもないゲス男は未だ私が誰か気づいていないのだ。
仕方なく、私はバッグに忍ばせていた伊達メガネをかける。
そして、髪を後ろで纏め、前髪を上げる。
すると、ようやく私が誰なのかわかったようでみるみる顔が青ざめていく。
その様子はあまりにも滑稽で笑いを堪えるのが一苦労だった。

「あ、あぁぁ…。」
「ふぅ、ようやく気付いたの?」
「ツ、蒼虎ツァンフー…。」
「そう、私は蒼虎ツァンフー
 尤もその呼び名は渾名であって本名ではない。
 ところで、中川さん。」
「へ?」
「私はあの時言ったはずですよね?」
「えっと…。」
「代表である父の代理だと。」

自分の都合のいいようにしか世界を見てこなかった彼にはまさかこれほど近くに『I.N.ファンド』の関係者がいるなど思いもよらなかったようだ。

「さて、私はもうひとつ忠告をしていたはずだけど覚えていらっしゃいますか?」
「もう一つ?」
「あなたの尻拭いをして佐竹と相馬を宥めた後のことよ。」
「?」
「『次はない』、私はそう言ったはずよ?」
「!!!!」
「漸く思い出したようね。」
「ど、どうするっていうんだ。」
「とりあえず、I.N.ファンドは中川物産から手を引くことになる。」
「ま、待ってくれ。 そんなことになったらうちは…。」
「それだけのことをしたのはあなた自身よ。」
「ぐっ。」
「結局、親の脛ばかり齧って自分の尻拭いもできず、挙句同じ轍を踏むような輩に投資するほどお人よしじゃないのよ。」

そういって、私は相楽さんを伴って部屋を後にした。
部屋を出たところで敖兄弟が肩を竦めて苦笑している。

「どうやら、我々の出番はなかったようですね。」
「もともと、お手を煩わせる気はありませんでしたから。」
「なるほど…。」
「ところで、これからどうするんですか?」
「あとは父が片付けてくれるでしょう。」
「御父君が?」
「I.N.ファンドの代表は父ですから。」

二人はその言葉に納得した様子でそれ以上何も言わず去っていった。
うち三浦商事との取引について次回の打ち合わせ日程だけは決めたけど。

「さて、私たちも帰りましょう。」
「はい。」

こうして、ゲス男殲滅作戦は呆気なく幕切れとなったのだった。

*****************************************************

それから、数日もしないうちに中川親子のスキャンダルがマスコミを賑わせた。
例の五年前のレイプ事件だ。
今回、中川親子は相馬から訴えられた。
どうやら父は佐竹とは別に相馬とも取り決めを交わしていたようだ。
それも大々的に記者会見まで開いての訴訟。
そして、タイミングよく横領疑惑やらゲス男の赴任先での醜態の暴露。
まぁ、出るわ出るわ。
どこでそんな情報誌入れたんだ突込みたくなるぐらいだった。

「そのために俺が監視役を務めてたんだよ。」

サラッと言ってのけた雅紀。
父ははじめから中川を潰すつもりだったのだろう。
雅紀の『監視役』はその為の情報収集だっという訳だ。
相変わらず徹底している。
おまけに私が敖兄弟と接触して、ゲス男の巧妙に隠された醜態の証拠を手に入れたことが決め手になったらしい。
当然、中川物産の株は急落。
にっちもさっちもいかなくなりそこをトルコ系企業に買収されるという形で会社を残すことになった。
それに合わせて中川親子は責任を負う形で経営から退くことが発表された。

「それで、結局中川親子はどうなったんだ?」
「無一文になって田舎に引っ込んだらしいわ。」
「そうなのか…。」

私と雅之さんはテレビのワイドニュースを見ながらそんな会話をしたのだ。
終わったことなので私はそこでテレビの電源を切り、話題を変えた。

「とりあえず、しばらくは静かになると思うわ。」
「だな。」
「という訳で、今日も頑張りましょうね。」
「えっと…。 それはベッドの上でってことかな?」
「そういこと。」

雅之さんはニヤリと口の端を上げ、私を横抱きに抱き上げる。
そしてそのまま寝室に消えたのは言うまでもない。

兎にも角にもこれで私の肩の荷は降りたわけで…。
雅之さんとの結婚に向けた準備を始めることに喜びを感じていたのだった。



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お読みいただきありがとうございます。

これにてこの章は完結です。
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