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第33章 作られた平和
経済を握るもの
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「あのーアメリアさん?」
本部裏手の射撃訓練用のレンジで射撃訓練中のアメリアの背後から、誠はそう言いながら声をかけた。
「なにーって……深刻な顔してるわね」
三マガジン目を撃ち終えたアメリアは振り向くといつもの糸目で誠を見つめた。いつものように長い紺色の髪と糸目が特徴のアメリアに見つめられて誠の鼓動は少し高鳴った。
「昨日、クバルカ中佐に寿司を奢ってもらいまして……」
「聞いてるわよ……よかったじゃないの。それだけ期待されてるってことよ」
アメリアはそう言うと射撃レンジの脇に部隊指定の銃であるHK33Eを置いた。
「それはおいしかったんですが……」
誠は照れながらも困惑した顔で話を続けた。
「僕は人を殺すかもしれないんですね」
少しうつむきながら誠はそうつぶやいた。
「そうね……東和宇宙軍に所属してたらたぶん実戦なんてしばらくは経験しないだろうしね……あそこはあくまで停戦宙域の監視業務しかないから……まあ誠ちゃんの腕じゃああそこの虎の子の『電子戦戦闘機』なんて乗せてもらえないでしょうし」
アメリアはそう言うと誠の手からHK33のカービンタイプであるHK53を受取ってそのストックを収納した。
「なんでですか?東和共和国は電子戦が強いと言いますけど……戦争を止めるほどなんですか?その強さって」
以前、アメリアに言われた『東和共和国は建国以来一人の戦死者も出していない』と言う話を思い出して誠はそう言った。
「今のところはね……もし、東和共和国に戦争を仕掛けようと準備を始めた段階でその国は『終わる』から」
「国が終わる?」
誠はアメリアの言葉の意味が分からずに聞き返した。
「戦争をするにも、平和に暮らすにも一番大事なのは『経済』……つまり『兵站』なのよ。ああ、誠ちゃんは経済の知識はほとんど無いんだっけ?『兵站』の意味も分からないわよね?」
「そんなこと無いです!人並みには……人並みより少し足りないくらいです」
明らかにさげすむようなアメリアの口調に反発したもののぼろが出るのは分かっているので誠は言いよどんだ。
「まず、秘密の閣議でもなんでもいいわ。そこで東和共和国に軍事的な圧力をかけるという合意がなされたとしましょう」
「偉い人が決めるんですね」
「『偉い人』って……まあいいわ。その情報が秘匿回線にでも漏れ出した数時間後……その国にある異変が起きるの」
「異変?」
アメリアの言葉の意味が分からず誠は首をひねる。
「そう、異変が起きる。それも経済的な……これまで何度かあった手としてはその国の国債の価格が三時間後には十分の一に暴落する……」
「そうなるとどうなんです?」
明らかに自分の言葉の重要性を理解していない誠のとぼけた顔を見てアメリアはため息をついた。
「国債って言うのは国の借金なの!その値段がその国の価値と言ってもいいわね。それが数時間で十分の一になるのよ。他にも時間が経つにつれて、株、社債、その他もろもろの有価証券の価格も急変して市場は大混乱……そうなればその国の指導者の首が飛ぶわ」
「はあ……」
理系脳の持ち主の誠には国の価値がなぜ国債や有価証券の価格で決まるのか今一つ理解できなかった。
「じゃあ、誠ちゃんでも知ってる歴史的事実を話しましょう!第二次世界大戦!これならわかるでしょ?」
珍しくイライラしながらアメリアは誠にそう言った。
「それくらいは知ってます!日本とドイツがアメリカと戦争したって話でしょ?」
「まあ……半分正解ぐらいにおまけしとくわ。その原因はその十数年前の世界的経済崩壊。それが経済のブロック化を招き、極端な思想に凝り固まった政権を生んで暴走したのが第二次世界大戦の原因よ」
誠はまた『経済崩壊』や『経済のブロック化』とか言う専門用語が理解できずに呆然と立ち尽くした。
「あー!嫌だ!本当に社会常識ゼロね!ともかく、東和共和国の兵士一人を殺すと殺した国の国民がほとんど失業して生活できなくなるの!そしたら、その国の政府は持たないでしょ?税金を払う人が居なくなるんだから!」
半分自棄になったようにアメリアはそう叫んだ。
「それは……大変だ」
さすがに失業したら税金を払えなくなることくらいの常識は誠にもあった。納得してうなづく誠をアメリアは冷ややかな目で見つめていた。
「東和共和国のアナログ量子コンピュータのシステムを牛耳っている『ビッグブラザー』はすべての通信が届く範囲の情報を常にため込んでその様子をうかがっているのよ……そして、その最大の武器は『経済の掌握』にあったってわけ。『形而上の存在は常に形而下の存在に規定される』……カール・マルクスとか言う経済学者の言葉なんだけど、まあ、こんなこと言っても誠ちゃんにはわからないでしょうけどね」
あからさまな蔑みの言葉だが、事実わからなかったので誠は愛想笑いを浮かべて頭を掻いた。
「なんです?その『形而上』とか……」
「いいわよ、誠ちゃんは知らなくても生きてこれたんでしょ?まあ、誠ちゃんには永遠に『形而上』の存在とは縁がなさそうだけど」
アメリアはそう言って誠に背を向けて射場を後にした。
「僕の死を『ビッグブラザー』は認めない……僕を殺せば僕を殺した国は終わる……だから死なないのか」
誠は東和共和国の軍事力によらない恒久平和がこうして実現している事実を理解しようとするが、『形而上』の話題であるそのようなことを理解できる脳を誠は持っていなかった。
「まあそれでも強引に東和共和国進攻を考えた国があるの。具体的に言うと私の作られた国の『ゲルパルト』。当時はゲルパルト帝国って名乗ってたわね。そこが実際に前の大戦の時に軍事的行動に出るべく準備を始めた……」
「でも前の大戦って東和は中立だったじゃないですか」
前の戦争の最中に生まれた誠にはその時の記憶は無いが、東和は戦争に参加していないという事実は知っていた。
「そうよ……それも前の戦争で『ゲルパルト帝国』が負けた原因の一つなんだけどね。戦時経済で何とかごまかしごまかししていたんだけど、実際に部隊を動かす段階で突然『兵站機能』に麻痺が生じたわけよ」
「兵站機能の麻痺?」
誠は意味が分からずそう聞き返した。
「補給部隊にめちゃくちゃな偽の命令が出たり、生産工場の電力施設が機能停止したりしたわけ」
「それは大変だ……」
分かったような分からないような話ではあるが、電気が無ければ工場が止まるということは誠にも分かった。
「それでもあの国は戦争を続けようとしたわけ。最終的には前線の兵器のシステムがクラッシュ!生命維持装置すら停まって全員窒息死!……どんなエースが乗ってようが動かない機動兵器はただの鉄の塊でしょ?それも宇宙じゃ死ぬしかないわね」
「訳も分からず窒息死って……そんな死に方、嫌ですね……」
誠も先の大戦の帰趨がそんなところでついたのかと驚きつつ、上層部の無茶な要求で死んだ兵士達に同情した。
「そんなところを完全に敗色濃厚だった外惑星連邦と遼北人民国がお得意の物量戦を仕掛けられて終了……ってわけよ」
「はあ……」
明らかに馬鹿にされていると分かるアメリアの口調だが、そこまで言われれば誠でも東和共和国に戦争を仕掛けることがいかに危険なことなのかはよく分かった。
「でも……アナログ式量子コンピュータでしたっけ?そんなの他の国でも作れそうじゃないですか……量子コンピュータの理論自体は地球のものなんでしょ?地球から来たゲルパルトや外惑星の国にも作れそうじゃないですか」
隣で響く射撃音に思わず大声を出しながら誠はそう尋ねた。
「そうよ……でも、そのプランが練り上げられる前に電子戦でおしまい……先手必勝って訳ね」
アメリアはそう言うとレンジに置かれた銃弾の箱を片付け始めた。
「つまり戦争とは経済戦争であり情報戦なの。そんな圧倒的優位を維持するためには諜報機関を使っての綿密な情報収集活動が必要になるわけ。東和共和国の場合は噂では国防費の十倍の諜報予算を組んでるって話……」
「十倍?」
「そう、十倍。まあ、予算として組んでるのはその数パーセントだけど……さっき言ったように銀河の『経済』を牛耳っている東和共和国にとってそのくらいの裏金を安全保障のためにねん出するくらい訳ないわね……いろいろあるのよ、東和共和国が裏金を作る方法……まあ経済知識ゼロの誠ちゃんにはいうだけ無駄ね」
アメリアはそう言うと置いていた銃を手に本部に向けて歩き始めた。
「そんな……馬鹿にしないでくださいよ……」
「だって『投資ファンド』とか『資源採掘権売買』とか……理解できる?この星に眠る潤沢な資源の採掘権を地球圏なんかの金持ちに売りつけて、その後まるで何事も無かったかのように採掘権の増資が必要になったからって雪だるま式にファンドの金額がデカくなっていく仕組みとか……って分かる?誠ちゃん」
「たぶん分からないです」
振り向きもせず経済用語を話し出すアメリアに誠はそう言って黙るしかなかった。
「ともかく、誠ちゃんは撃つことができるけれど、撃たれることは無いわけ。良いじゃないの、安全なんだから」
「そうなんですけど……」
誠はとりあえず自分が簡単に死ぬことは無いことが分かった。
「ランちゃんじゃないけど、少しは経済を勉強した方が良いかもね、誠ちゃんは。給料貯金してるんでしょ?隊にも結構投資ファンドで稼いでる人もいるみたいよ……最低、新聞やネットニュースの裏を取るくらいのことはしても罰は当たらないでしょ」
明らかに馬鹿にした口調でそう言うとアメリアは二挺の銃を手に射場を後にした。
「経済か……社会科学って苦手なんだよな……」
誠は苦笑いを浮かべながら自分が死なないらしいことだけは理解してアメリアに続いて射場を去った。
本部裏手の射撃訓練用のレンジで射撃訓練中のアメリアの背後から、誠はそう言いながら声をかけた。
「なにーって……深刻な顔してるわね」
三マガジン目を撃ち終えたアメリアは振り向くといつもの糸目で誠を見つめた。いつものように長い紺色の髪と糸目が特徴のアメリアに見つめられて誠の鼓動は少し高鳴った。
「昨日、クバルカ中佐に寿司を奢ってもらいまして……」
「聞いてるわよ……よかったじゃないの。それだけ期待されてるってことよ」
アメリアはそう言うと射撃レンジの脇に部隊指定の銃であるHK33Eを置いた。
「それはおいしかったんですが……」
誠は照れながらも困惑した顔で話を続けた。
「僕は人を殺すかもしれないんですね」
少しうつむきながら誠はそうつぶやいた。
「そうね……東和宇宙軍に所属してたらたぶん実戦なんてしばらくは経験しないだろうしね……あそこはあくまで停戦宙域の監視業務しかないから……まあ誠ちゃんの腕じゃああそこの虎の子の『電子戦戦闘機』なんて乗せてもらえないでしょうし」
アメリアはそう言うと誠の手からHK33のカービンタイプであるHK53を受取ってそのストックを収納した。
「なんでですか?東和共和国は電子戦が強いと言いますけど……戦争を止めるほどなんですか?その強さって」
以前、アメリアに言われた『東和共和国は建国以来一人の戦死者も出していない』と言う話を思い出して誠はそう言った。
「今のところはね……もし、東和共和国に戦争を仕掛けようと準備を始めた段階でその国は『終わる』から」
「国が終わる?」
誠はアメリアの言葉の意味が分からずに聞き返した。
「戦争をするにも、平和に暮らすにも一番大事なのは『経済』……つまり『兵站』なのよ。ああ、誠ちゃんは経済の知識はほとんど無いんだっけ?『兵站』の意味も分からないわよね?」
「そんなこと無いです!人並みには……人並みより少し足りないくらいです」
明らかにさげすむようなアメリアの口調に反発したもののぼろが出るのは分かっているので誠は言いよどんだ。
「まず、秘密の閣議でもなんでもいいわ。そこで東和共和国に軍事的な圧力をかけるという合意がなされたとしましょう」
「偉い人が決めるんですね」
「『偉い人』って……まあいいわ。その情報が秘匿回線にでも漏れ出した数時間後……その国にある異変が起きるの」
「異変?」
アメリアの言葉の意味が分からず誠は首をひねる。
「そう、異変が起きる。それも経済的な……これまで何度かあった手としてはその国の国債の価格が三時間後には十分の一に暴落する……」
「そうなるとどうなんです?」
明らかに自分の言葉の重要性を理解していない誠のとぼけた顔を見てアメリアはため息をついた。
「国債って言うのは国の借金なの!その値段がその国の価値と言ってもいいわね。それが数時間で十分の一になるのよ。他にも時間が経つにつれて、株、社債、その他もろもろの有価証券の価格も急変して市場は大混乱……そうなればその国の指導者の首が飛ぶわ」
「はあ……」
理系脳の持ち主の誠には国の価値がなぜ国債や有価証券の価格で決まるのか今一つ理解できなかった。
「じゃあ、誠ちゃんでも知ってる歴史的事実を話しましょう!第二次世界大戦!これならわかるでしょ?」
珍しくイライラしながらアメリアは誠にそう言った。
「それくらいは知ってます!日本とドイツがアメリカと戦争したって話でしょ?」
「まあ……半分正解ぐらいにおまけしとくわ。その原因はその十数年前の世界的経済崩壊。それが経済のブロック化を招き、極端な思想に凝り固まった政権を生んで暴走したのが第二次世界大戦の原因よ」
誠はまた『経済崩壊』や『経済のブロック化』とか言う専門用語が理解できずに呆然と立ち尽くした。
「あー!嫌だ!本当に社会常識ゼロね!ともかく、東和共和国の兵士一人を殺すと殺した国の国民がほとんど失業して生活できなくなるの!そしたら、その国の政府は持たないでしょ?税金を払う人が居なくなるんだから!」
半分自棄になったようにアメリアはそう叫んだ。
「それは……大変だ」
さすがに失業したら税金を払えなくなることくらいの常識は誠にもあった。納得してうなづく誠をアメリアは冷ややかな目で見つめていた。
「東和共和国のアナログ量子コンピュータのシステムを牛耳っている『ビッグブラザー』はすべての通信が届く範囲の情報を常にため込んでその様子をうかがっているのよ……そして、その最大の武器は『経済の掌握』にあったってわけ。『形而上の存在は常に形而下の存在に規定される』……カール・マルクスとか言う経済学者の言葉なんだけど、まあ、こんなこと言っても誠ちゃんにはわからないでしょうけどね」
あからさまな蔑みの言葉だが、事実わからなかったので誠は愛想笑いを浮かべて頭を掻いた。
「なんです?その『形而上』とか……」
「いいわよ、誠ちゃんは知らなくても生きてこれたんでしょ?まあ、誠ちゃんには永遠に『形而上』の存在とは縁がなさそうだけど」
アメリアはそう言って誠に背を向けて射場を後にした。
「僕の死を『ビッグブラザー』は認めない……僕を殺せば僕を殺した国は終わる……だから死なないのか」
誠は東和共和国の軍事力によらない恒久平和がこうして実現している事実を理解しようとするが、『形而上』の話題であるそのようなことを理解できる脳を誠は持っていなかった。
「まあそれでも強引に東和共和国進攻を考えた国があるの。具体的に言うと私の作られた国の『ゲルパルト』。当時はゲルパルト帝国って名乗ってたわね。そこが実際に前の大戦の時に軍事的行動に出るべく準備を始めた……」
「でも前の大戦って東和は中立だったじゃないですか」
前の戦争の最中に生まれた誠にはその時の記憶は無いが、東和は戦争に参加していないという事実は知っていた。
「そうよ……それも前の戦争で『ゲルパルト帝国』が負けた原因の一つなんだけどね。戦時経済で何とかごまかしごまかししていたんだけど、実際に部隊を動かす段階で突然『兵站機能』に麻痺が生じたわけよ」
「兵站機能の麻痺?」
誠は意味が分からずそう聞き返した。
「補給部隊にめちゃくちゃな偽の命令が出たり、生産工場の電力施設が機能停止したりしたわけ」
「それは大変だ……」
分かったような分からないような話ではあるが、電気が無ければ工場が止まるということは誠にも分かった。
「それでもあの国は戦争を続けようとしたわけ。最終的には前線の兵器のシステムがクラッシュ!生命維持装置すら停まって全員窒息死!……どんなエースが乗ってようが動かない機動兵器はただの鉄の塊でしょ?それも宇宙じゃ死ぬしかないわね」
「訳も分からず窒息死って……そんな死に方、嫌ですね……」
誠も先の大戦の帰趨がそんなところでついたのかと驚きつつ、上層部の無茶な要求で死んだ兵士達に同情した。
「そんなところを完全に敗色濃厚だった外惑星連邦と遼北人民国がお得意の物量戦を仕掛けられて終了……ってわけよ」
「はあ……」
明らかに馬鹿にされていると分かるアメリアの口調だが、そこまで言われれば誠でも東和共和国に戦争を仕掛けることがいかに危険なことなのかはよく分かった。
「でも……アナログ式量子コンピュータでしたっけ?そんなの他の国でも作れそうじゃないですか……量子コンピュータの理論自体は地球のものなんでしょ?地球から来たゲルパルトや外惑星の国にも作れそうじゃないですか」
隣で響く射撃音に思わず大声を出しながら誠はそう尋ねた。
「そうよ……でも、そのプランが練り上げられる前に電子戦でおしまい……先手必勝って訳ね」
アメリアはそう言うとレンジに置かれた銃弾の箱を片付け始めた。
「つまり戦争とは経済戦争であり情報戦なの。そんな圧倒的優位を維持するためには諜報機関を使っての綿密な情報収集活動が必要になるわけ。東和共和国の場合は噂では国防費の十倍の諜報予算を組んでるって話……」
「十倍?」
「そう、十倍。まあ、予算として組んでるのはその数パーセントだけど……さっき言ったように銀河の『経済』を牛耳っている東和共和国にとってそのくらいの裏金を安全保障のためにねん出するくらい訳ないわね……いろいろあるのよ、東和共和国が裏金を作る方法……まあ経済知識ゼロの誠ちゃんにはいうだけ無駄ね」
アメリアはそう言うと置いていた銃を手に本部に向けて歩き始めた。
「そんな……馬鹿にしないでくださいよ……」
「だって『投資ファンド』とか『資源採掘権売買』とか……理解できる?この星に眠る潤沢な資源の採掘権を地球圏なんかの金持ちに売りつけて、その後まるで何事も無かったかのように採掘権の増資が必要になったからって雪だるま式にファンドの金額がデカくなっていく仕組みとか……って分かる?誠ちゃん」
「たぶん分からないです」
振り向きもせず経済用語を話し出すアメリアに誠はそう言って黙るしかなかった。
「ともかく、誠ちゃんは撃つことができるけれど、撃たれることは無いわけ。良いじゃないの、安全なんだから」
「そうなんですけど……」
誠はとりあえず自分が簡単に死ぬことは無いことが分かった。
「ランちゃんじゃないけど、少しは経済を勉強した方が良いかもね、誠ちゃんは。給料貯金してるんでしょ?隊にも結構投資ファンドで稼いでる人もいるみたいよ……最低、新聞やネットニュースの裏を取るくらいのことはしても罰は当たらないでしょ」
明らかに馬鹿にした口調でそう言うとアメリアは二挺の銃を手に射場を後にした。
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