【完結】かみなりのむすめ。

みやこ嬢

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定められた運命

第61話:夜道

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 もうすぐ夜八時だというのに歩香あゆかちゃんはまだ家に帰っていなかった。

 ここは何もない田舎町。
 夜遅くまで遊べる場所なんかない。

 ゴールデンウィーク前に叶恵かなえちゃんが行方不明になり、保護者や消防の人たちが総出で探し回ったばかりだ。また何処かで倒れているかもしれないということで、お母さんは電話の向こうの相手と捜索について相談している。

「お兄ちゃん、あたし、帰り道で歩香ちゃんに似た人を見掛けたんだ。本人かは分かんないけど」

 電話中のお母さんに聞こえないように耳打ちすると、お兄ちゃんは顎に手を当てて考え込んだ。
 先日の勉強会の時に、叶恵ちゃんから歩香ちゃんの様子がおかしいと聞いている。だからこそ、これが単なる寄り道や家出だとは思えない。

 これ以上はリビングでは話せないので、場所をお兄ちゃんの部屋に移した。

「転校生の彼の家かもしれない」
「え、八十神やそがみくんち?」
「彼女は彼にご執心だったんだろ? 学校から出て自宅と真逆のこの辺に来てるってことは、その可能性が高い」
「……もしかして、付き合ってるのかなあ」
「それなら良いけどね。」

 遊びに行ったとして、そのままこんな時間まで居続けるなんて有り得るのかな。ていうか、八十神くんちってヤバい場所忌み地なんだよね。そんなところに長時間いたらマズいのでは?

「……あたし、様子見てくる!」

 そう言って立ち上がると、目の前にパッと七つの光が現れた。

『こんな時間に男の家に行くつもりか』
『そーそー、外は真っ暗なんだよ~?』
『大体おまえが行く義理はねーだろが』
『俺、前に言ったよな?』

 全員から反対された!!
 分かってたけど、でも、ほっとけないよ。

「みんなの言う通りだよ。おまえが行くのは僕も反対だ」
「なんで?」
「僕は知らない子より妹の方が大事だ。おまえに何かあったら母さんたちが悲しむ」
「うぅ……」

 そう言われてしまうと無茶が出来ない。
 すぐにでも外に飛び出したい気持ちを必死に我慢する。

 その時、お兄ちゃんのスマホにメールが届いた。

「あ、叶恵ちゃんからだ」
「なんて?」
「……歩香ちゃんが転校生が好きだってことは周りに知れ渡ってるから、彼の家にも確認しに行く話になってるらしい」

 歩香ちゃんがいなくなれば、親友の叶恵ちゃんにまず話がいくよね。だから情報が入ってくるんだ。
 でも、誰かが探しに行ってくれるなら安心だ。

「で、家が一番近いから母さんが頼まれた」
「えっ!?」

 お兄ちゃんがそう言うのと同時に、お母さんから声が掛かった。

朝陽あさひ夕月ゆうづき。お母さん今から裏の時哉ときやくんちに行ってくるわねー!」

 慌てて部屋から出ると、お母さんが玄関で靴を履いているところだった。

「あ、あたしも行く!」
「あらそう? じゃ、おいで」
「うん!」

 すぐにあたしも靴を履いた。
 耳元でギャーギャー反対する声が聞こえるけど無視する。今回は一人じゃないもんねーだ!

「夕月、建物には入るなよ」
「う、うん。わかった」

 八十神くんの家は忌み地だ。中に入ればどうなるか分からない。でも、玄関先で声を掛けるくらいなら前にもしたことあるし、お母さんも一緒だし、たぶん大丈夫だと思う。

 この辺りは街灯が少ないから、お母さんは懐中電灯を持って道を照らしている。あたしは七つの光が見えるから明るいけど、普通は見えないから夜道は真っ暗。

「夕方おかずを届けに行った時は特に変わった様子はなかったけど、その後で遊びに来たかもしれないし、一応確認しなきゃね」
「そ、そうだね」
「その歩香ちゃんて子、そんなに時哉くんのこと好きなの?」
「うん。学校にいる時はベッタリだよ」
「積極的ね~! あんたも負けてらんないわね」
「はぁ!?」

 何か誤解されてる気がする。

 あたしは八十神くんのことなんか別に……ううん、どう思ってるんだろう。よく分からない。
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