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28 お茶会1
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お茶会は二週間後で、場所は王太子宮内にあるサロンだという。シーナはその日に向けてマリベルから色々と教わった。
マリベルは元々アグネスの侍女だったので、社交界のことはよく知っているのだ。母が亡くなってからは社交から遠ざかったが、当時の作法はいまだに変わることなく受け継がれているので、影響はないだろうとの事だった。
「アグネス様もとんでもない美人だったからね。そりゃあもう、令嬢たちのやっかみが多かったのよ」
「ふうん……。お母さまもいじめられたりしたのかしら」
「いじめはあったけど、アグネス様は見た目に反して強いお方だったからねぇ。可憐な顔でニコッと笑いながら嫌味を受け流すと、大抵の娘さんはすごすごと引き下がっていったよ。でも今日お会いする方は手強いかもしれない。なんたって王太子の婚約者だし……しかもマシュウ様とはいとこ同士だからね。自分も王族みたいな気分なんだろうよ」
お茶会が開かれる日、シーナの髪を結いながらマリベルが言った。マシュウの母はダゥゼン公爵の妹なので、シェリアンヌとマシュウはいとこという間柄なのだ。プライドが高くなるのも分かる気がする。
今日のシーナはいつもとは違い、髪を編みこみにして後ろでひとつにまとめるスタイルにした。まだ若いがすでに夫人となったのだから、侮られないためにも髪は下ろさない方がいいらしい。髪を結い上げたシーナを見たマリベルは「アグネス様そっくりだね」と懐かしそうに呟いた。
最後にネックレスと耳飾りをつけて支度を終える。ルターナの指輪がついたネックレスは首にはつけず、ドレスの胸元に隠しておいた。
「さ、これでいいわ。派手に飾るより上品なほうがいいでしょ。なんたって、公爵夫人ですもんね。シーナ、レクオン様に用意して頂いた物は持った?」
「うん、大丈夫」
用意を終えたシーナとマリベルは、レクオンの執務室へ向かった。着飾った妻の姿をみたレクオンは眩しそうに目を細めたが、すぐに心配そうな顔になる。
「つらかったらすぐ戻っていいんだぞ。マリベル、シーナのことをよろしく頼む」
「お任せくださいませ」
「行って参りますね、レクオン様」
シーナが挨拶すると、彼は不安そうな表情のまま妻の頬に軽いキスをした。エントランスにはレクオンに命じられた騎士が控えており、今日の護衛を務めるという。馬車のなかにシーナとマリベルが乗り、騎士は騎乗して王宮へ向かった。古城からだと一時間ほどだ。
街道を進んでいると、物欲しそうな顔で道の端に佇む子供の姿が見えた。家には人影がなく、王都を離れだした人々もいるようだ。
「あの子供たちに、なにかしてやれる事はないかしら……。このままじゃ王都が寂れちゃうような気がするわ」
「そうねぇ……。バザーを開いてみたらどうかしらね。平民の人たち向けに、かなり安い金額で提供したら喜んでもらえるかもしれないよ。公爵夫人が開催するなら、かなり人が集まるでしょうね」
「バザーはいちど見たことがあるわ。お姉さまの代わりをしたときに……。その時は通りすぎただけだったけど、確かにすごく安かった。お茶会が終わったら考えてみるわ」
マリベルと話している間に王宮の門をくぐったが、馬車はとまることなく王太子宮へ進む。王宮は広大なので、門で馬車を降りた場合かなり歩くことになるらしい。窓から外を見ると他にも馬車が走っていて、お茶会に参加する令嬢が乗っている様子だ。
王太子宮の近くで馬車を降り、マリベルと騎士を伴って会場まで歩く。サロンに到着すると騎士は外で待つと告げた。本当に女性限定のお茶会なのだ。
「まぁ……本当に女性ばかりだわ」
サロンに足を踏み入れた瞬間、思わずひとり言がもれた。右も左も女性ばかり。こんな世界があったなんて驚きだ。令嬢たちはシーナを見ると、扇で口元を隠しながらひそひそと何か囁いている。
「わたし、なにか変かしら?」
「ふふ、シーナが社交界で噂になってる公爵夫人だからよ。令嬢たちの憧れだったレクオン様が迎えた妻だし、すごい美人だからね……。なにか言わないと気がすまないのよ」
そんなものだろうか。シーナは今まで生きるだけで精一杯だったので、他人の容姿や噂に耳を傾ける余裕はなかった。でもマリベルによると、貴族の令嬢というのはかなり暇を持て余すものらしい。だから噂に夢中になるのよ、とマリベルは呆れた口調で呟いていたものだ。
マリベルは元々アグネスの侍女だったので、社交界のことはよく知っているのだ。母が亡くなってからは社交から遠ざかったが、当時の作法はいまだに変わることなく受け継がれているので、影響はないだろうとの事だった。
「アグネス様もとんでもない美人だったからね。そりゃあもう、令嬢たちのやっかみが多かったのよ」
「ふうん……。お母さまもいじめられたりしたのかしら」
「いじめはあったけど、アグネス様は見た目に反して強いお方だったからねぇ。可憐な顔でニコッと笑いながら嫌味を受け流すと、大抵の娘さんはすごすごと引き下がっていったよ。でも今日お会いする方は手強いかもしれない。なんたって王太子の婚約者だし……しかもマシュウ様とはいとこ同士だからね。自分も王族みたいな気分なんだろうよ」
お茶会が開かれる日、シーナの髪を結いながらマリベルが言った。マシュウの母はダゥゼン公爵の妹なので、シェリアンヌとマシュウはいとこという間柄なのだ。プライドが高くなるのも分かる気がする。
今日のシーナはいつもとは違い、髪を編みこみにして後ろでひとつにまとめるスタイルにした。まだ若いがすでに夫人となったのだから、侮られないためにも髪は下ろさない方がいいらしい。髪を結い上げたシーナを見たマリベルは「アグネス様そっくりだね」と懐かしそうに呟いた。
最後にネックレスと耳飾りをつけて支度を終える。ルターナの指輪がついたネックレスは首にはつけず、ドレスの胸元に隠しておいた。
「さ、これでいいわ。派手に飾るより上品なほうがいいでしょ。なんたって、公爵夫人ですもんね。シーナ、レクオン様に用意して頂いた物は持った?」
「うん、大丈夫」
用意を終えたシーナとマリベルは、レクオンの執務室へ向かった。着飾った妻の姿をみたレクオンは眩しそうに目を細めたが、すぐに心配そうな顔になる。
「つらかったらすぐ戻っていいんだぞ。マリベル、シーナのことをよろしく頼む」
「お任せくださいませ」
「行って参りますね、レクオン様」
シーナが挨拶すると、彼は不安そうな表情のまま妻の頬に軽いキスをした。エントランスにはレクオンに命じられた騎士が控えており、今日の護衛を務めるという。馬車のなかにシーナとマリベルが乗り、騎士は騎乗して王宮へ向かった。古城からだと一時間ほどだ。
街道を進んでいると、物欲しそうな顔で道の端に佇む子供の姿が見えた。家には人影がなく、王都を離れだした人々もいるようだ。
「あの子供たちに、なにかしてやれる事はないかしら……。このままじゃ王都が寂れちゃうような気がするわ」
「そうねぇ……。バザーを開いてみたらどうかしらね。平民の人たち向けに、かなり安い金額で提供したら喜んでもらえるかもしれないよ。公爵夫人が開催するなら、かなり人が集まるでしょうね」
「バザーはいちど見たことがあるわ。お姉さまの代わりをしたときに……。その時は通りすぎただけだったけど、確かにすごく安かった。お茶会が終わったら考えてみるわ」
マリベルと話している間に王宮の門をくぐったが、馬車はとまることなく王太子宮へ進む。王宮は広大なので、門で馬車を降りた場合かなり歩くことになるらしい。窓から外を見ると他にも馬車が走っていて、お茶会に参加する令嬢が乗っている様子だ。
王太子宮の近くで馬車を降り、マリベルと騎士を伴って会場まで歩く。サロンに到着すると騎士は外で待つと告げた。本当に女性限定のお茶会なのだ。
「まぁ……本当に女性ばかりだわ」
サロンに足を踏み入れた瞬間、思わずひとり言がもれた。右も左も女性ばかり。こんな世界があったなんて驚きだ。令嬢たちはシーナを見ると、扇で口元を隠しながらひそひそと何か囁いている。
「わたし、なにか変かしら?」
「ふふ、シーナが社交界で噂になってる公爵夫人だからよ。令嬢たちの憧れだったレクオン様が迎えた妻だし、すごい美人だからね……。なにか言わないと気がすまないのよ」
そんなものだろうか。シーナは今まで生きるだけで精一杯だったので、他人の容姿や噂に耳を傾ける余裕はなかった。でもマリベルによると、貴族の令嬢というのはかなり暇を持て余すものらしい。だから噂に夢中になるのよ、とマリベルは呆れた口調で呟いていたものだ。
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