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第四章 西の国の救国の聖女編
迂闊の申し子
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泣き止んだのはそれから少し経ってからだった。泣くのは、それこそ声を出して泣くのなんて生まれて初めてだったのではないだろうか。それに多少の羞恥を感じつつ鼻を啜って、顔を上げるとそこには優しい顔をしたリマがいて理由のない安心感が体を包む。
つい体から力が抜けてゆっくりとしてしまいそうになるが、ステラには聞かなければいけないことがいくつかある。
「……おじいちゃん、私が生きているって知ってたんですか?」
「んー、ほほほ」
リマの皺だらけの手がステラの濡れた頬を撫でる。優しく慈愛に満ちた視線を受けながらステラはここに転移した瞬間を思い出した。
足元に現れた光魔法を表す白の魔法陣。この世界で精霊以外で転移魔法が使用できるのはステラを除けば教皇リマ唯一人だけなのだ。だから転移魔法が展開された時点でステラは誰が自分を呼んでいるのかわかっていた。
それはわかったけれど、驚いているのだ。だってステラは死んだことになっているはずだから。
リマはほっほ、と笑って白い髭を揺らした。
「女神様から教えて貰っていたんじゃよ」
「女神様から?」
ステラは驚きに目を丸くした。
「そうそう。勇者くんたちが戻ってきて、それから三日後くらいだったかのぅ。女神リーベがわしの夢に出てきて話してくれたのじゃ。ステラちゃんも、……それと魔王もまだ生きているということを」
「!」
「ああ大丈夫じゃよ。これを知っておるのはわししかおらんから」
リマの手が無意識に強張ったステラの背を撫でた。じっと顔を見てもリマの表情からは嘘を感じられない。いつもの優しいステラのよく知るリマの顔だ。けれどそれを信じていいのか、一抹の不安がステラの胸に影を落とす。
リヴィウスは、魔王は、人間の千年にも渡る敵だった。その存在が今も生きていて、しかもこの口振りだとステラと行動を共にしていることもわかっているのだろう。口の中が、急激に乾いてくようだった。
「違う! 違うよステラちゃん! 本当にわししか知らないからね! 本当に大丈夫だからね!」
びえ、という間抜けな効果音がつきそうな顔でステラの肩を掴んで滂沱の涙を流す姿にステラは瞬時に理解した。
(あ、これ大丈夫なやつだ)
リマは教皇という地位に就いていることから腹芸も何のその、というこの姿からは想像も出来ない一面を持っているけれどステラに対しては滅多なことがない限り嘘をつかない。過去つかれた嘘といえばステラが楽しみにしていたデザートをリマが食べてしまい、それを側近のせいにしたことだろうか。
どう頭を捻ってもその程度の嘘しか思い当たらないのだから、この人はステラにこんな嘘をつかないという信頼があった。
「女神様がな、ステラちゃんも魔王も頑張ったからこれから先は自由にしてあげるべきだって言っててな」
べそべそと泣きながら告げられた言葉にステラは瞬きを繰り返す。
「わしだって本当はステラちゃんにすぐ戻ってきて欲しかったけど、でもそれはわしの我儘じゃものな。……魔王を倒したら男の子として生活を保障するって約束もしておったし、何より魔王がいなくなったのなら、聖女のお仕事も終わりじゃからなあ」
そこまで言うとリマは裾の中に手を入れてごそごそとあるものを取り出した。リマの手のひらに乗る程度の球体のガラス玉だ。
「女神様がの、これでステラちゃんたちのことをたまに見せてくれていたんじゃ。だから元気に、楽しそうに過ごしておるのも知っておったよ」
慈しむように球体を撫でたリマがステラを見る。優しい表情にステラはまた少し鼻の奥が痛んだ。
「でもね」
低い声に鼻の痛みが引いた。ぱちぱちと瞬きをするとリマが慎重にガラス玉を裾にしまい直して、ステラの肩をガッと勢いよく掴んだ。
「!」
「迂闊が過ぎるんじゃよステラちゃああああん!」
ぐわんぐわんと揺らされながら切に訴えられた言葉にステラはただただ目を丸くする他なかった。
つい体から力が抜けてゆっくりとしてしまいそうになるが、ステラには聞かなければいけないことがいくつかある。
「……おじいちゃん、私が生きているって知ってたんですか?」
「んー、ほほほ」
リマの皺だらけの手がステラの濡れた頬を撫でる。優しく慈愛に満ちた視線を受けながらステラはここに転移した瞬間を思い出した。
足元に現れた光魔法を表す白の魔法陣。この世界で精霊以外で転移魔法が使用できるのはステラを除けば教皇リマ唯一人だけなのだ。だから転移魔法が展開された時点でステラは誰が自分を呼んでいるのかわかっていた。
それはわかったけれど、驚いているのだ。だってステラは死んだことになっているはずだから。
リマはほっほ、と笑って白い髭を揺らした。
「女神様から教えて貰っていたんじゃよ」
「女神様から?」
ステラは驚きに目を丸くした。
「そうそう。勇者くんたちが戻ってきて、それから三日後くらいだったかのぅ。女神リーベがわしの夢に出てきて話してくれたのじゃ。ステラちゃんも、……それと魔王もまだ生きているということを」
「!」
「ああ大丈夫じゃよ。これを知っておるのはわししかおらんから」
リマの手が無意識に強張ったステラの背を撫でた。じっと顔を見てもリマの表情からは嘘を感じられない。いつもの優しいステラのよく知るリマの顔だ。けれどそれを信じていいのか、一抹の不安がステラの胸に影を落とす。
リヴィウスは、魔王は、人間の千年にも渡る敵だった。その存在が今も生きていて、しかもこの口振りだとステラと行動を共にしていることもわかっているのだろう。口の中が、急激に乾いてくようだった。
「違う! 違うよステラちゃん! 本当にわししか知らないからね! 本当に大丈夫だからね!」
びえ、という間抜けな効果音がつきそうな顔でステラの肩を掴んで滂沱の涙を流す姿にステラは瞬時に理解した。
(あ、これ大丈夫なやつだ)
リマは教皇という地位に就いていることから腹芸も何のその、というこの姿からは想像も出来ない一面を持っているけれどステラに対しては滅多なことがない限り嘘をつかない。過去つかれた嘘といえばステラが楽しみにしていたデザートをリマが食べてしまい、それを側近のせいにしたことだろうか。
どう頭を捻ってもその程度の嘘しか思い当たらないのだから、この人はステラにこんな嘘をつかないという信頼があった。
「女神様がな、ステラちゃんも魔王も頑張ったからこれから先は自由にしてあげるべきだって言っててな」
べそべそと泣きながら告げられた言葉にステラは瞬きを繰り返す。
「わしだって本当はステラちゃんにすぐ戻ってきて欲しかったけど、でもそれはわしの我儘じゃものな。……魔王を倒したら男の子として生活を保障するって約束もしておったし、何より魔王がいなくなったのなら、聖女のお仕事も終わりじゃからなあ」
そこまで言うとリマは裾の中に手を入れてごそごそとあるものを取り出した。リマの手のひらに乗る程度の球体のガラス玉だ。
「女神様がの、これでステラちゃんたちのことをたまに見せてくれていたんじゃ。だから元気に、楽しそうに過ごしておるのも知っておったよ」
慈しむように球体を撫でたリマがステラを見る。優しい表情にステラはまた少し鼻の奥が痛んだ。
「でもね」
低い声に鼻の痛みが引いた。ぱちぱちと瞬きをするとリマが慎重にガラス玉を裾にしまい直して、ステラの肩をガッと勢いよく掴んだ。
「!」
「迂闊が過ぎるんじゃよステラちゃああああん!」
ぐわんぐわんと揺らされながら切に訴えられた言葉にステラはただただ目を丸くする他なかった。
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