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第四章 西の国の救国の聖女編
元気100倍おじいちゃん
「魔法は! もっと慎重に使わなきゃダメでしょ!」
リマの必死の言葉にステラは相変わらず目を丸くしたままだ。
「ネジュノでのおっきい火の球に、フロレ・シェリでは雷落として、それ以外では復興の手伝いとか言って大きな岩を風で運んだり水を浄化したり、極め付けはアズマヒの国での騒動じゃよ……!」
「……よ、よくご存知で」
ステラはリマが言わんとしていることがわかって笑顔が引き攣るのを感じた。そして再びキキョウの言葉が脳裏を過ぎる。
「ステラちゃんたちが大立ち回りをしてくれたおかげで助かった人たちが沢山いるのは知っておるけども、それでもやり過ぎ!」
「は、はいっ」
ステラは思わず背筋を伸ばした。
「おかげで巷では聖女ちゃんはまだ死んでいないみたいな噂だって流れているんじゃよ! 本当に極一部だけれども!」
「ええ⁉︎」
その噂は知らなくて流石にステラも驚きに目を見開いた。
「……その噂は流石に勇者くんたちが訂正してたけどのう。彼らはステラちゃんが目の前で倒れているのを知っているからの」
勇者たち、かつての仲間のことを聞いてステラは少し心が重たくなるのを感じた。ずっと気に掛かってはいたけれど声に出すことは出来なかったものを声に出す。
「……勇者たちは、元気ですか?」
鉛のような重たい声だった。たったそれだけの短い言葉を声に出すことがこれほどにまで気が重い。けれどそんなステラの感情を見透かしたようにリマがふわりと髭を持ち上げるように微笑んだ。
「元気じゃよ。みーんな元気じゃ。勇者くんはのう、どうやらエルフの姫君に押し切られそうじゃぞ」
「! そうですか」
勇者に恋心を抱き、猛アピールをしていた少女の念願が成就しそうだと聞いたステラは驚いたけれど次には笑っていた。リマからまずその話が出るということはみんな平和に過ごしているということだ。それにステラは心から安堵して肩から力を抜いた。
そんなステラの表情を見て、リマは目を細める。
「そうじゃよ。みんな大丈夫じゃ。今は魔族の残党を倒したり、ステラちゃんたちと同じように復興の手伝いに行ったりと大忙しじゃがな。でも概ねみんな元気で平和にやっておるよ。だからこそ」
再びステラの背筋が伸びる。
「ステラちゃんは! 迂闊に魔法を使わない! あんまりやり過ぎちゃったら普通に見つかって教会に戻ってくることになるんじゃからな! わしはそれでも全然大歓迎じゃし嬉しいけど、ステラちゃんは嫌じゃろ?」
「い、嫌という訳では」
咄嗟に首を振ろうとしたが言葉に詰まり、ステラの脳裏にはリヴィウスとてぷの姿が浮かぶ。教会に戻るということはこの二人にもう会えないということだ。それは、それだけは絶対に嫌だと思った。
「……いいんじゃよ、ちょっとは悲しいけどそれがステラちゃんの選んだ道ならわしはそれが一番良いと思っておるよ」
その言い淀んだ時間をまたしても察してくれたらしいリマの言葉にステラは眉を下げた。
「おじいちゃん」
「でもたまには報せをおくれ。手紙でも何でも良いから、ステラちゃんが元気に過ごしているというのを知りたいのじゃ」
「……はい、送ります」
ステラは今度は自分からリマを抱き締めた。小さな頃何度か抱き着いたことのある体は、その頃に比べて随分と細くなってしまったように思える。けれどそれと同じで自分が成長したのだなと考えると、それ程までに長い時間をこの人と過ごしてきたのだなと郷愁に目を細めた。
ぽんぽん、とリマの手がステラの背を撫でて二人は顔を見合わせる。
「うんうん。今日はな、それを言いたくてちょっと乱暴じゃったけどリーベ様に導かれてステラちゃんをここに呼んだんじゃよ。この機会を逃すとステラちゃんたちまた派手に人助けをしてしまいそうな気がしてのう」
またしても言葉に詰まった。迂闊に魔法を使わないようにと気にし始めたのはここ最近だが、ふとした拍子に魔法を使ってしまう癖は実はまだ抜けていない。それはそうだ。ステラやリヴィウス、そしててぷは魔法にあまりにも慣れ親しみ過ぎている。
もはや魔法は呼吸と同じなのだ。だからこそ目の前に少し枯れた井戸があると水を復活させてしまうし、箸が壊れてしまった村には風魔法でちょちょいのちょいと木を刻んで橋を作ってしまう。
ステラたちにとってはそれが当たり前なのだが、普通の人たちにとってはそんなものは神の御業以外の何者でもないのだ。
「き、気を付けます」
「うんうん、そうしておくれ。それとなステラちゃん、これは提案なんじゃが──」
リマの言葉に耳を傾けていた時、扉の前がにわかに慌ただしくなり間髪入れずに扉が開け放たれた。ドバァン! と静寂が満ちている空間にとても似つかわしくないけたたましい音にステラもリマも驚きに目を見開いて肩を跳ねさせた。
「猊下――――‼︎ 大変です!」
現れたのは旅立ちの時にステラを見送った側近だった。全身で息をしてズレた眼鏡を直し、前壇にいるリマとステラを見た途端眼鏡が割れそうな勢いで彼は絶叫した。
「ええええええええええ⁉︎ せいじょっ」
「ストップじゃ馬鹿もおおおおん!」
ステラの力によって体の痛みが消え去ったリマは走った。それこそ若者顔負けのスピードと瞬発力を見せつけ、扉を開けたまま絶叫している側近にドロップキックをせんばかりの勢いで飛び付いた。
「ぐふぉあ!」
吹っ飛んだ側近をよそにリマは華麗に着地をし、唸っている側近の服を掴んだリマは周囲を見渡してから側近を中に引き入れて扉を閉めた。あまりのスピードと勢いに目を丸くしていたステラだが、リマの「どうじゃ」と言わんばかりの表情に拍手を返すしかなかった。
リマの必死の言葉にステラは相変わらず目を丸くしたままだ。
「ネジュノでのおっきい火の球に、フロレ・シェリでは雷落として、それ以外では復興の手伝いとか言って大きな岩を風で運んだり水を浄化したり、極め付けはアズマヒの国での騒動じゃよ……!」
「……よ、よくご存知で」
ステラはリマが言わんとしていることがわかって笑顔が引き攣るのを感じた。そして再びキキョウの言葉が脳裏を過ぎる。
「ステラちゃんたちが大立ち回りをしてくれたおかげで助かった人たちが沢山いるのは知っておるけども、それでもやり過ぎ!」
「は、はいっ」
ステラは思わず背筋を伸ばした。
「おかげで巷では聖女ちゃんはまだ死んでいないみたいな噂だって流れているんじゃよ! 本当に極一部だけれども!」
「ええ⁉︎」
その噂は知らなくて流石にステラも驚きに目を見開いた。
「……その噂は流石に勇者くんたちが訂正してたけどのう。彼らはステラちゃんが目の前で倒れているのを知っているからの」
勇者たち、かつての仲間のことを聞いてステラは少し心が重たくなるのを感じた。ずっと気に掛かってはいたけれど声に出すことは出来なかったものを声に出す。
「……勇者たちは、元気ですか?」
鉛のような重たい声だった。たったそれだけの短い言葉を声に出すことがこれほどにまで気が重い。けれどそんなステラの感情を見透かしたようにリマがふわりと髭を持ち上げるように微笑んだ。
「元気じゃよ。みーんな元気じゃ。勇者くんはのう、どうやらエルフの姫君に押し切られそうじゃぞ」
「! そうですか」
勇者に恋心を抱き、猛アピールをしていた少女の念願が成就しそうだと聞いたステラは驚いたけれど次には笑っていた。リマからまずその話が出るということはみんな平和に過ごしているということだ。それにステラは心から安堵して肩から力を抜いた。
そんなステラの表情を見て、リマは目を細める。
「そうじゃよ。みんな大丈夫じゃ。今は魔族の残党を倒したり、ステラちゃんたちと同じように復興の手伝いに行ったりと大忙しじゃがな。でも概ねみんな元気で平和にやっておるよ。だからこそ」
再びステラの背筋が伸びる。
「ステラちゃんは! 迂闊に魔法を使わない! あんまりやり過ぎちゃったら普通に見つかって教会に戻ってくることになるんじゃからな! わしはそれでも全然大歓迎じゃし嬉しいけど、ステラちゃんは嫌じゃろ?」
「い、嫌という訳では」
咄嗟に首を振ろうとしたが言葉に詰まり、ステラの脳裏にはリヴィウスとてぷの姿が浮かぶ。教会に戻るということはこの二人にもう会えないということだ。それは、それだけは絶対に嫌だと思った。
「……いいんじゃよ、ちょっとは悲しいけどそれがステラちゃんの選んだ道ならわしはそれが一番良いと思っておるよ」
その言い淀んだ時間をまたしても察してくれたらしいリマの言葉にステラは眉を下げた。
「おじいちゃん」
「でもたまには報せをおくれ。手紙でも何でも良いから、ステラちゃんが元気に過ごしているというのを知りたいのじゃ」
「……はい、送ります」
ステラは今度は自分からリマを抱き締めた。小さな頃何度か抱き着いたことのある体は、その頃に比べて随分と細くなってしまったように思える。けれどそれと同じで自分が成長したのだなと考えると、それ程までに長い時間をこの人と過ごしてきたのだなと郷愁に目を細めた。
ぽんぽん、とリマの手がステラの背を撫でて二人は顔を見合わせる。
「うんうん。今日はな、それを言いたくてちょっと乱暴じゃったけどリーベ様に導かれてステラちゃんをここに呼んだんじゃよ。この機会を逃すとステラちゃんたちまた派手に人助けをしてしまいそうな気がしてのう」
またしても言葉に詰まった。迂闊に魔法を使わないようにと気にし始めたのはここ最近だが、ふとした拍子に魔法を使ってしまう癖は実はまだ抜けていない。それはそうだ。ステラやリヴィウス、そしててぷは魔法にあまりにも慣れ親しみ過ぎている。
もはや魔法は呼吸と同じなのだ。だからこそ目の前に少し枯れた井戸があると水を復活させてしまうし、箸が壊れてしまった村には風魔法でちょちょいのちょいと木を刻んで橋を作ってしまう。
ステラたちにとってはそれが当たり前なのだが、普通の人たちにとってはそんなものは神の御業以外の何者でもないのだ。
「き、気を付けます」
「うんうん、そうしておくれ。それとなステラちゃん、これは提案なんじゃが──」
リマの言葉に耳を傾けていた時、扉の前がにわかに慌ただしくなり間髪入れずに扉が開け放たれた。ドバァン! と静寂が満ちている空間にとても似つかわしくないけたたましい音にステラもリマも驚きに目を見開いて肩を跳ねさせた。
「猊下――――‼︎ 大変です!」
現れたのは旅立ちの時にステラを見送った側近だった。全身で息をしてズレた眼鏡を直し、前壇にいるリマとステラを見た途端眼鏡が割れそうな勢いで彼は絶叫した。
「ええええええええええ⁉︎ せいじょっ」
「ストップじゃ馬鹿もおおおおん!」
ステラの力によって体の痛みが消え去ったリマは走った。それこそ若者顔負けのスピードと瞬発力を見せつけ、扉を開けたまま絶叫している側近にドロップキックをせんばかりの勢いで飛び付いた。
「ぐふぉあ!」
吹っ飛んだ側近をよそにリマは華麗に着地をし、唸っている側近の服を掴んだリマは周囲を見渡してから側近を中に引き入れて扉を閉めた。あまりのスピードと勢いに目を丸くしていたステラだが、リマの「どうじゃ」と言わんばかりの表情に拍手を返すしかなかった。
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