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第一章 僕の話
※上書きするって言ったじゃん
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シーツの感触が直に肌に伝わる。
日の光が差し込んだ室内には朝の時間に似つかわしくない乱れた呼吸と僕の口からこぼれる声が響いていた。ベッドの周りには服が散乱し、汗ばんだ体を触れ合わせながら僕は強い快感に指先でシーツを乱した。
「ん、んんぅ…っ! ゃ、一緒、一緒なのいやだ…っ」
肌から滑り落ちた汗がシーツに染み込んでいく。男二人分の体重が乗ったベッドは少し身動ぎしただけでも軋んだ音がして、それが余計に僕たちの興奮を煽る。
シリウスの片手が僕の中心を握って上下に扱き、口は乳首を舐めている。大きくて骨張った手が敏感過ぎるそこを擦る度に火花が散るような快感に脳を焼かれて口からは芯のない声しか出ない。
くちゅくちゅと耳を塞ぎたくなるような音がする。それに僕が羞恥心を感じると知っていてシリウスはわざと音を立てて乳首を吸うし、それにすら僕の口からははしたない声が溢れてしまう。
「ぁあう…っ、ぁ、あ、やだ、やだ…っ」
「嫌じゃないよ」
かり、と弄られ続けて赤くなった乳首に鋭く歯を立てられる。
「んんっ!」
「アル、気持ち良いって言って?」
喋りながらでも器用に刺激を与え続けるシリウスを睨んだ。
「あーる」
「ぁうっ! ぁ、あ、言う…っ、言うから、噛むなぁっ」
噛まれたって痛いだけの筈なのに僕の口からは高くて甘えているような声が出る。こんな声も足を開かされているこの状況も顔から火が出るほど恥ずかしいのに、興奮が僕をおかしくさせる。
またシリウスがざらざらとした熱い舌で赤くなった乳首を舐める。舌先で弾くみたいに転がして、食べるみたいに吸い上げる。それに合わせて中心を擦る手も速さを増すから反射で中途半端に浮いている足に力が入る。
「~~っ! ふ、あ、ぁあ…っ、シリ、ウス…っ、これきもち、気持ちいいから…っ!」
快感に思考回路が一つずつ焼かれていくようだ。
体は僕の意思とは関係なく跳ねるし、腰が溶けそうな程熱い。弾けそうな熱を前に僕の中心は情けないくらいシリウスの手の中で悦んで先端から雫を溢れさせる。頭の中で何かが小さく弾けていくような感覚がする。
それがどんどん大きくなって腰が勝手に跳ねる。声だって我慢出来ない。
「アル」
いつの間にか胸から顔を離していたシリウス僕の顔をじっと見ている。
「アル、こういう時はイくって言うんだよ」
手の動きは止まらない。
いやらしい音と僕の声がどんどん大きくなる。
「は、は…っ、ぁ、イく…っ?」
「そう上手」
シリウスが褒めるように軽くキスをする。
褒めるのなんていつもは僕の役目なのに、こんな時だからか胸が高鳴る。
「アル、イっていいよ。俺にアルが気持ちよくなってるとこ見せて」
落ち着いているのに確かな熱がこもっている声が囁く。手の動きも強く激しくなっていってどんどん僕を限界に追い詰める。
咄嗟に唇を噛むけど快感が大き過ぎてそれも上手く出来なくて熱が膨れ上がっていって、目の前が白く染まり始めた。
「っ、んんっ、ぁ、あああっ! …っく、も、イく…っ! シリウス、イく、僕イっちゃ、~~っ」
ばちん、と膨れ上がった快感が弾けた。
兆した中心の先端から白濁が溢れてシリウスの手を汚すけど、気に掛ける余裕はない。全力疾走したみたいに荒くなった呼吸と全身を包む疲労感に体をベッドに預ける。
でも、ここで終わりじゃないって知っている。
「っ、ぁ…」
僕の白濁で濡れたシリウスの指が尻の割れ目をなぞる。指先が窄まりに触れた瞬間反射で息が詰まるけれど、息を吐いて体から力を抜く。
「指、挿れる」
「っぁ…! ぁ、く、」
違和感に喉が締まった。
腸壁が指を押し返そうとしているのがわかる。でもシリウスはそんなのお構い無しみたいに指を奥にまで挿れてくるから苦しくて思わず睨むと目が合った。
ああ、ずるい。
「んんぅっ」
金色に光る一等星が僕を見ている。それを理解しただけで腰に甘い熱が溜まるのがわかった。
「アル」
「ん、んぅ…っ! は、ぁ、シリウス、シリウス…っ」
甘く切ない声が僕を呼ぶ。
中に入った指がゆっくりと動いて、シリウスと繋がる準備をする。嫌悪感と戸惑いしかなかった筈の行為が関係性と感情だけでこうも捉え方が違う。苦しくて違和感しかないのに、この先を知っているからこそ驚くことに僕の中には喜びが芽生えていた。
「平気?」
「ん、大丈、夫…っ。ん、ふ…ぁあっ!」
僕の返事を聞いた瞬間、シリウスの中指が内側から腹側を押し上げた。
瞬間、目の前に星が散る。
「ひ、ぅ、ぁああっ!」
陸に打ち上げられた魚みたいに腰が浮いた。中心を扱かれるのとは全然違う種類の快感に体が思わず上に逃げる。逃げたくなるくらいの強烈な快感が僕を襲う。
「駄目」
強い力が腰を掴んで引き寄せた。
力じゃ僕は絶対にシリウスに勝てない。こんな状況なら尚更だ。
「ぁ、あっ、ぁんっ! そこ、きもち良すぎるからやだ、ゃ、ぁあっ」
「大丈夫、大丈夫だよアル」
長くて太い指が僕の駄目な場所を執拗に押し上げる。前の時もここが嫌だった。理性も思考も根こそぎ刈り取っていくような強烈な快感を生み出すそこが嫌だったのに、今は少し違う。
「指増やすよ」
「! ぁ、ふ…っ、ぅう~っ」
また苦しさが増す。でもその直後に襲うのは脳を焼き切るような快感だ。
声も出せずに腰がデタラメに跳ねる。上半身を捻って快感から逃げようとするのにシリウスがそれを許してくれなくて、敏感なしこりを指二本で攻め立てられる。目の前がチカチカする。何もかもが上手く考えられなくなる。
「ぁあんっ、ぁ、あ…っ、だめ、だめシリウス、シリウスっ」
部屋は明るくて目も見えるはずなのに何も視認出来ない。見えているものがなんなのか処理することができない。それくらいの刺激が断続的に僕を襲う。
でもどれだけ激しい快感を僕に与えてもシリウスは中々絶頂させてくれない。その間際にまでは導くくせにその手前で必ず手を止める。何回も繰り返されるそれに意識がふわふわと定まらなくなった頃にはもう後孔に指が三本も挿れられていた。
それでもずっと寸止めされているせいかもう苦しさは感じないし、あるのは言いようのないもどかしさ。
「…ごめんな、アル」
低く響く声が静かに告げる。
「俺のわがまま」
中から指がずるりと抜けるその感覚すら今の僕には劇薬に等しい。
シリウスの手が僕の下腹部に触れて、そこから少しだけ魔力が送り込まれるのがわかった。そして一拍もおかず、中に違和感が生じる。
「ふぁ…っ」
「これで大丈夫」
中からじゅわりと粘度の高い液体が溢れる。シリウスの魔法だとぼんやりと理解はするのにそのまま入口にぴとりと充てがわれた熱に一瞬体が跳ねた。
シリウスの熱が、昂りが、僕の濡れた後孔の入口を擦る。そこには性感帯なんてない。ないはずなのに、僕の口からは勝手に嬌声が漏れる。目がシリウスから離せなくて呼吸も不自然に上がり心臓がバクバクと破裂しそうなくらいに脈打っている。
「怖い?」
穏やかとも思える声が訊く。
「こわく、ない…っ」
「じゃあうれしい?」
いつも根拠のない絶対的な自信に溢れている声に不安が見えた。
大きな体だと思う。鍛えられていて筋肉が全身についているし、肌も健康的に焼けている。こんなことをしている今でも輝くような魔力が全身から立ち昇っている天才の名をほしいままにしている男が、僕を前に不安を抱えていた。
情けなく下がった眉尻に僕は見覚えがあった。いつもの甘えるみたいな顔じゃない、本当に不安に思っている顔。見たのはいつだったか、もう随分前だ。
頭は回らないし、中途半端に高められた身体は今も震えている。でもこんな顔をしているシリウスを前に僕は頬を緩めた。
「…ああ、うれしいよ」
またシリウスの顔が歪む。案外泣き虫なこいつを慰めてやりたいとも思うけれど、今はそうじゃない。僕は片足を浮かせてシリウスの腰を脹脛で擦った。
「…シリウス。……泣くのは、後にしろ」
はやく。
はしたなく強請る僕を見てシリウスが限界まで目を見開いた。表情筋の忙しい男にまた笑ってやると黙っていれば男前な顔が複雑なくらいくしゃくしゃになった。
「もー! 全然カッコつかないんだけど!」
「お前が格好良いことなんて何ひとつとしてない」
「アルー…」
「でも、そんなお前だから良いんだ」
固くシーツを握り込んでいた手を離して両腕を伸ばす。
そうすると条件反射みたいにシリウスが腕の中に収まって、べそべそと泣いている犬みたいな顔に口角が上がる。
「…かわいいと格好いいのリョーリツはずるい」
「言ってろ」
吐息みたいな声で会話を交わして、どちらともなく唇を触れ合わせる。
ぐ、とシリウスの腰が前に押し出される。
「っ、ふ…っ、ぅ」
指で解されて柔らかくなったそこに張り詰めた熱が押し当てられて、ゆっくりと僕の中に入ってくる。みちみちと音がしそうなくらいの質量と圧迫感に自然と体に力が入って爪先をきゅうっと丸める。
思わず首を振って唇を離し、シリウスの背中に爪を立てる。
「っ、は…っ、ぁ、おおき、い」
耳元で歯を食い縛る音がした。それと余裕のない「ごめん」の声が聞こえたのはそんなに差は無かった。
「~~~ッ!」
ぐぷん、と一番太い場所が一気に僕の体を貫いた。
内臓を押し上げられている圧迫感と繋がれた多幸感で思考がショートする。快感なんてまだない。だけどそれでも僕の中にシリウスがいるのが嬉しいと思う僕はおかしいのだろうか。
「! ぁ、うぅっ! ぁ、あ、しり、うす…っ」
「ごめ、アル…っ」
ずちゅ、ぱちゅ、濡れた音がする。
熱の塊が僕の中を行き来して粘膜を擦り上げた。苦しいはずなのに声が勝手に上擦る。
「アル、ある、好きっ、…大事にしたいのに…っ、ごめ、腰動く…っ」
「へ、き…っ、は、ぅ、ぁあっ! っ、シリウス、しりうす…っ」
長大な楔が律動をする度に奥へと入っていく。出っ張った部分が中を掻き混ぜて、すっかり快感を与えられることに慣れてしまった敏感なしこりを押し上げた。
頭が真っ白になるくらいの快感だった。
自分の口から信じられないくらい甘ったるい声が出て、全身でシリウスを求めるみたいに抱き着く。そうしていないと不安だった。
男同士のセックスでこんなに気持ちよくなってしまっている自分が不安だった。
でもシリウスが僕を好きだと言ってくれるから、余裕なく僕を求めてくれるから。
「シリウス、きす、キスしたい…っ」
痛いくらいの強さで唇が重なってシリウスの荒い呼吸が僕の中に流れ込んでくる。
近い距離で目を見たかったのにばちゅん! と腰を打ち付けられたことでそんな願望も消え去った。
力強く腰が打ち下ろされて肌の打つかる音が聞こえる。頭がおかしくなりそうな快感だった。
「ぁ…っ、く、きもち…ッ」
余裕のない声が好きだと思った。
激しく僕を求めてくれる姿が、僕のことを宝物だと思っているような目が、触れている体温が、この人の全部が好きだと思った。
「…すき」
「っ!」
「好き、シリウス…っ、ぁ、すき、す…ぁああっ!」
「ほんと、お前…!」
自分がもう何を口走っているのかもわからない。中を抉られるのが気持ちよくて、奥を押し上げられるのが堪らなくて、中心の昂りに触れてもいないのにそこから雫が止まらなくて腹がどんどん濡れていく。
耳元でシリウスの荒い呼吸が聞こえる。それに僕の呼吸と声が混ざっていく。汗の滲む体をこれ以上ないくらい密着させて、もう一緒に溶けちゃうんじゃないかってくらい気持ちいい。
「っ、く、あ…っ、ある、アル…!」
もう何もわからないのにシリウスの声だけははっきりと聞こえる。
何度も何度も与えられる快感に目の前がスパークしていき視界がどんどん白く染まっていく。指先から全身に痺れが広がって、大きなあらがいようのない波が迫ってくる。それにどれだけ恐怖を訴えて苛烈な快感は止まず、僕はどんどん追い詰められる。
「 」
一番奥をどぢゅ、と貫かれたと同時。
耳元で聞こえたシリウスの声に僕の身体は快感に打ち震えて絶頂を迎え、中に広がる熱と、首筋に走った僅かな痛みを最後に僕は意識を手放した。
その日の昼過ぎに目を覚ました僕は鏡を見て絶句することになる。
「上書きするって言ったじゃん」
聞いてなかったの? 仕方ないやつだなぁ。みたいな顔をしている馬鹿を殴った僕は絶対に悪くない。
でも体中に残された赤い痕がほんの少し、本当にほんの少しだけ嬉しかったなんてことは未来永劫、言うつもりはない。
日の光が差し込んだ室内には朝の時間に似つかわしくない乱れた呼吸と僕の口からこぼれる声が響いていた。ベッドの周りには服が散乱し、汗ばんだ体を触れ合わせながら僕は強い快感に指先でシーツを乱した。
「ん、んんぅ…っ! ゃ、一緒、一緒なのいやだ…っ」
肌から滑り落ちた汗がシーツに染み込んでいく。男二人分の体重が乗ったベッドは少し身動ぎしただけでも軋んだ音がして、それが余計に僕たちの興奮を煽る。
シリウスの片手が僕の中心を握って上下に扱き、口は乳首を舐めている。大きくて骨張った手が敏感過ぎるそこを擦る度に火花が散るような快感に脳を焼かれて口からは芯のない声しか出ない。
くちゅくちゅと耳を塞ぎたくなるような音がする。それに僕が羞恥心を感じると知っていてシリウスはわざと音を立てて乳首を吸うし、それにすら僕の口からははしたない声が溢れてしまう。
「ぁあう…っ、ぁ、あ、やだ、やだ…っ」
「嫌じゃないよ」
かり、と弄られ続けて赤くなった乳首に鋭く歯を立てられる。
「んんっ!」
「アル、気持ち良いって言って?」
喋りながらでも器用に刺激を与え続けるシリウスを睨んだ。
「あーる」
「ぁうっ! ぁ、あ、言う…っ、言うから、噛むなぁっ」
噛まれたって痛いだけの筈なのに僕の口からは高くて甘えているような声が出る。こんな声も足を開かされているこの状況も顔から火が出るほど恥ずかしいのに、興奮が僕をおかしくさせる。
またシリウスがざらざらとした熱い舌で赤くなった乳首を舐める。舌先で弾くみたいに転がして、食べるみたいに吸い上げる。それに合わせて中心を擦る手も速さを増すから反射で中途半端に浮いている足に力が入る。
「~~っ! ふ、あ、ぁあ…っ、シリ、ウス…っ、これきもち、気持ちいいから…っ!」
快感に思考回路が一つずつ焼かれていくようだ。
体は僕の意思とは関係なく跳ねるし、腰が溶けそうな程熱い。弾けそうな熱を前に僕の中心は情けないくらいシリウスの手の中で悦んで先端から雫を溢れさせる。頭の中で何かが小さく弾けていくような感覚がする。
それがどんどん大きくなって腰が勝手に跳ねる。声だって我慢出来ない。
「アル」
いつの間にか胸から顔を離していたシリウス僕の顔をじっと見ている。
「アル、こういう時はイくって言うんだよ」
手の動きは止まらない。
いやらしい音と僕の声がどんどん大きくなる。
「は、は…っ、ぁ、イく…っ?」
「そう上手」
シリウスが褒めるように軽くキスをする。
褒めるのなんていつもは僕の役目なのに、こんな時だからか胸が高鳴る。
「アル、イっていいよ。俺にアルが気持ちよくなってるとこ見せて」
落ち着いているのに確かな熱がこもっている声が囁く。手の動きも強く激しくなっていってどんどん僕を限界に追い詰める。
咄嗟に唇を噛むけど快感が大き過ぎてそれも上手く出来なくて熱が膨れ上がっていって、目の前が白く染まり始めた。
「っ、んんっ、ぁ、あああっ! …っく、も、イく…っ! シリウス、イく、僕イっちゃ、~~っ」
ばちん、と膨れ上がった快感が弾けた。
兆した中心の先端から白濁が溢れてシリウスの手を汚すけど、気に掛ける余裕はない。全力疾走したみたいに荒くなった呼吸と全身を包む疲労感に体をベッドに預ける。
でも、ここで終わりじゃないって知っている。
「っ、ぁ…」
僕の白濁で濡れたシリウスの指が尻の割れ目をなぞる。指先が窄まりに触れた瞬間反射で息が詰まるけれど、息を吐いて体から力を抜く。
「指、挿れる」
「っぁ…! ぁ、く、」
違和感に喉が締まった。
腸壁が指を押し返そうとしているのがわかる。でもシリウスはそんなのお構い無しみたいに指を奥にまで挿れてくるから苦しくて思わず睨むと目が合った。
ああ、ずるい。
「んんぅっ」
金色に光る一等星が僕を見ている。それを理解しただけで腰に甘い熱が溜まるのがわかった。
「アル」
「ん、んぅ…っ! は、ぁ、シリウス、シリウス…っ」
甘く切ない声が僕を呼ぶ。
中に入った指がゆっくりと動いて、シリウスと繋がる準備をする。嫌悪感と戸惑いしかなかった筈の行為が関係性と感情だけでこうも捉え方が違う。苦しくて違和感しかないのに、この先を知っているからこそ驚くことに僕の中には喜びが芽生えていた。
「平気?」
「ん、大丈、夫…っ。ん、ふ…ぁあっ!」
僕の返事を聞いた瞬間、シリウスの中指が内側から腹側を押し上げた。
瞬間、目の前に星が散る。
「ひ、ぅ、ぁああっ!」
陸に打ち上げられた魚みたいに腰が浮いた。中心を扱かれるのとは全然違う種類の快感に体が思わず上に逃げる。逃げたくなるくらいの強烈な快感が僕を襲う。
「駄目」
強い力が腰を掴んで引き寄せた。
力じゃ僕は絶対にシリウスに勝てない。こんな状況なら尚更だ。
「ぁ、あっ、ぁんっ! そこ、きもち良すぎるからやだ、ゃ、ぁあっ」
「大丈夫、大丈夫だよアル」
長くて太い指が僕の駄目な場所を執拗に押し上げる。前の時もここが嫌だった。理性も思考も根こそぎ刈り取っていくような強烈な快感を生み出すそこが嫌だったのに、今は少し違う。
「指増やすよ」
「! ぁ、ふ…っ、ぅう~っ」
また苦しさが増す。でもその直後に襲うのは脳を焼き切るような快感だ。
声も出せずに腰がデタラメに跳ねる。上半身を捻って快感から逃げようとするのにシリウスがそれを許してくれなくて、敏感なしこりを指二本で攻め立てられる。目の前がチカチカする。何もかもが上手く考えられなくなる。
「ぁあんっ、ぁ、あ…っ、だめ、だめシリウス、シリウスっ」
部屋は明るくて目も見えるはずなのに何も視認出来ない。見えているものがなんなのか処理することができない。それくらいの刺激が断続的に僕を襲う。
でもどれだけ激しい快感を僕に与えてもシリウスは中々絶頂させてくれない。その間際にまでは導くくせにその手前で必ず手を止める。何回も繰り返されるそれに意識がふわふわと定まらなくなった頃にはもう後孔に指が三本も挿れられていた。
それでもずっと寸止めされているせいかもう苦しさは感じないし、あるのは言いようのないもどかしさ。
「…ごめんな、アル」
低く響く声が静かに告げる。
「俺のわがまま」
中から指がずるりと抜けるその感覚すら今の僕には劇薬に等しい。
シリウスの手が僕の下腹部に触れて、そこから少しだけ魔力が送り込まれるのがわかった。そして一拍もおかず、中に違和感が生じる。
「ふぁ…っ」
「これで大丈夫」
中からじゅわりと粘度の高い液体が溢れる。シリウスの魔法だとぼんやりと理解はするのにそのまま入口にぴとりと充てがわれた熱に一瞬体が跳ねた。
シリウスの熱が、昂りが、僕の濡れた後孔の入口を擦る。そこには性感帯なんてない。ないはずなのに、僕の口からは勝手に嬌声が漏れる。目がシリウスから離せなくて呼吸も不自然に上がり心臓がバクバクと破裂しそうなくらいに脈打っている。
「怖い?」
穏やかとも思える声が訊く。
「こわく、ない…っ」
「じゃあうれしい?」
いつも根拠のない絶対的な自信に溢れている声に不安が見えた。
大きな体だと思う。鍛えられていて筋肉が全身についているし、肌も健康的に焼けている。こんなことをしている今でも輝くような魔力が全身から立ち昇っている天才の名をほしいままにしている男が、僕を前に不安を抱えていた。
情けなく下がった眉尻に僕は見覚えがあった。いつもの甘えるみたいな顔じゃない、本当に不安に思っている顔。見たのはいつだったか、もう随分前だ。
頭は回らないし、中途半端に高められた身体は今も震えている。でもこんな顔をしているシリウスを前に僕は頬を緩めた。
「…ああ、うれしいよ」
またシリウスの顔が歪む。案外泣き虫なこいつを慰めてやりたいとも思うけれど、今はそうじゃない。僕は片足を浮かせてシリウスの腰を脹脛で擦った。
「…シリウス。……泣くのは、後にしろ」
はやく。
はしたなく強請る僕を見てシリウスが限界まで目を見開いた。表情筋の忙しい男にまた笑ってやると黙っていれば男前な顔が複雑なくらいくしゃくしゃになった。
「もー! 全然カッコつかないんだけど!」
「お前が格好良いことなんて何ひとつとしてない」
「アルー…」
「でも、そんなお前だから良いんだ」
固くシーツを握り込んでいた手を離して両腕を伸ばす。
そうすると条件反射みたいにシリウスが腕の中に収まって、べそべそと泣いている犬みたいな顔に口角が上がる。
「…かわいいと格好いいのリョーリツはずるい」
「言ってろ」
吐息みたいな声で会話を交わして、どちらともなく唇を触れ合わせる。
ぐ、とシリウスの腰が前に押し出される。
「っ、ふ…っ、ぅ」
指で解されて柔らかくなったそこに張り詰めた熱が押し当てられて、ゆっくりと僕の中に入ってくる。みちみちと音がしそうなくらいの質量と圧迫感に自然と体に力が入って爪先をきゅうっと丸める。
思わず首を振って唇を離し、シリウスの背中に爪を立てる。
「っ、は…っ、ぁ、おおき、い」
耳元で歯を食い縛る音がした。それと余裕のない「ごめん」の声が聞こえたのはそんなに差は無かった。
「~~~ッ!」
ぐぷん、と一番太い場所が一気に僕の体を貫いた。
内臓を押し上げられている圧迫感と繋がれた多幸感で思考がショートする。快感なんてまだない。だけどそれでも僕の中にシリウスがいるのが嬉しいと思う僕はおかしいのだろうか。
「! ぁ、うぅっ! ぁ、あ、しり、うす…っ」
「ごめ、アル…っ」
ずちゅ、ぱちゅ、濡れた音がする。
熱の塊が僕の中を行き来して粘膜を擦り上げた。苦しいはずなのに声が勝手に上擦る。
「アル、ある、好きっ、…大事にしたいのに…っ、ごめ、腰動く…っ」
「へ、き…っ、は、ぅ、ぁあっ! っ、シリウス、しりうす…っ」
長大な楔が律動をする度に奥へと入っていく。出っ張った部分が中を掻き混ぜて、すっかり快感を与えられることに慣れてしまった敏感なしこりを押し上げた。
頭が真っ白になるくらいの快感だった。
自分の口から信じられないくらい甘ったるい声が出て、全身でシリウスを求めるみたいに抱き着く。そうしていないと不安だった。
男同士のセックスでこんなに気持ちよくなってしまっている自分が不安だった。
でもシリウスが僕を好きだと言ってくれるから、余裕なく僕を求めてくれるから。
「シリウス、きす、キスしたい…っ」
痛いくらいの強さで唇が重なってシリウスの荒い呼吸が僕の中に流れ込んでくる。
近い距離で目を見たかったのにばちゅん! と腰を打ち付けられたことでそんな願望も消え去った。
力強く腰が打ち下ろされて肌の打つかる音が聞こえる。頭がおかしくなりそうな快感だった。
「ぁ…っ、く、きもち…ッ」
余裕のない声が好きだと思った。
激しく僕を求めてくれる姿が、僕のことを宝物だと思っているような目が、触れている体温が、この人の全部が好きだと思った。
「…すき」
「っ!」
「好き、シリウス…っ、ぁ、すき、す…ぁああっ!」
「ほんと、お前…!」
自分がもう何を口走っているのかもわからない。中を抉られるのが気持ちよくて、奥を押し上げられるのが堪らなくて、中心の昂りに触れてもいないのにそこから雫が止まらなくて腹がどんどん濡れていく。
耳元でシリウスの荒い呼吸が聞こえる。それに僕の呼吸と声が混ざっていく。汗の滲む体をこれ以上ないくらい密着させて、もう一緒に溶けちゃうんじゃないかってくらい気持ちいい。
「っ、く、あ…っ、ある、アル…!」
もう何もわからないのにシリウスの声だけははっきりと聞こえる。
何度も何度も与えられる快感に目の前がスパークしていき視界がどんどん白く染まっていく。指先から全身に痺れが広がって、大きなあらがいようのない波が迫ってくる。それにどれだけ恐怖を訴えて苛烈な快感は止まず、僕はどんどん追い詰められる。
「 」
一番奥をどぢゅ、と貫かれたと同時。
耳元で聞こえたシリウスの声に僕の身体は快感に打ち震えて絶頂を迎え、中に広がる熱と、首筋に走った僅かな痛みを最後に僕は意識を手放した。
その日の昼過ぎに目を覚ました僕は鏡を見て絶句することになる。
「上書きするって言ったじゃん」
聞いてなかったの? 仕方ないやつだなぁ。みたいな顔をしている馬鹿を殴った僕は絶対に悪くない。
でも体中に残された赤い痕がほんの少し、本当にほんの少しだけ嬉しかったなんてことは未来永劫、言うつもりはない。
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遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
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