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§ Blue moon —Side Ryo
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関根の頑張りが実を結び、酒も進んで会話が盛り上がる。気まずかった見合話から話題は趣味へ。趣味が合うらしい関根と小夜は意気投合、無言で酒を飲み続けている俺と瑞稀を放置したまま、楽しそうだ。
「亮、ちょっと携帯貸して」
返事をする間も無く俺の携帯電話を手に取った関根に、パスワードがあっさり解除されてしまった。やはりこいつに秘密は通用しない。半ば呆れて様子を見ていると、携帯電話を手にした小夜ちゃんとこそこそとなにかをはじめた。
小夜ちゃんが弄っている携帯電話は二台。一台は瑞稀の物だろう。席を外した隙に、連絡先を交換するつもりらしい。
関根の恋路に巻き込むな、と、言いたいところだが、瑞稀の連絡先を知りたい本音もないわけではないから、勝手にやらせておく。
化粧室から戻ってきた瑞稀が、なぜかすぐに席へ戻らずにテーブルの向こう側に立ったまま首を傾げている。その視線の先へ目を向けたその瞬間、彼女の手が関根の髪を掴み、毟り取った。
「ええっ? うっそぉ?」
「ほらね、小夜。やっぱりこの頭は詐欺だわ」
一瞬のできごとに目を白黒させている関根をよそに、したり顔の瑞稀の手元と関根の頭を見比べ、小夜ちゃんが驚愕している。
もう数年前になるか。会社を退職し暫くふらふらしていた関根は、ある日突然、頭を丸めた。所謂スキンヘッドだ。普段は涼しげなその頭で過ごしているが、会社でのアルバイト中や飲みに出るときには、そのほうが世間に馴染むからと、鬘と眼鏡を使う。
俺の知る限り鬘を見破られたのは初めてだ。まさか毟り取られるとは思ってもみなかったが。
禿げを連呼して笑い転げる小夜ちゃんとふたりの世界を築いている関根を放置し、瑞稀はまたひとり、カクテルを飲み始めた。俺もまた蚊帳の外。おとなしく新たな酒を呷る。
そろそろ日付も変わる頃、関根と小夜ちゃんが席を立つ。交渉成立、関根はかわいい女の子をお持ち帰りするらしい。ごちそうさま、と支払いもせず出て行く背中に、明日水増しした請求書を叩き付けてやろうと本気で思った。
「まだ飲みますか?」
俺の存在なんて眼中にないだろうと思っていた瑞稀に話しかけられた。
「いや、どうするかな。君は?」
「そうね……どちらでも」
瑞稀はダブルのマティーニからここまで、アルコール度数の高いカクテルばかり、かなりの量を飲んでいる。酔いも相当回っているはずだ。こんなに夜遅く、ひとりで帰すわけにもいかない。
「送ろうか? それとも……」
「場所変えて飲み直しますか? いいですよ、それでも」
投げ遣りな口調。だが、その美しく挑発的な眼差しに、俺は魅せられてしまった。
この女、おもしろい。
飲み直しを口実に、瑞稀を俺の家へと連れ帰るのに躊躇いは無い。ひと目惚れなんてものは信じない質だが、彼女をもっと知りたいと思ってしまったのも本当だった。
了
「亮、ちょっと携帯貸して」
返事をする間も無く俺の携帯電話を手に取った関根に、パスワードがあっさり解除されてしまった。やはりこいつに秘密は通用しない。半ば呆れて様子を見ていると、携帯電話を手にした小夜ちゃんとこそこそとなにかをはじめた。
小夜ちゃんが弄っている携帯電話は二台。一台は瑞稀の物だろう。席を外した隙に、連絡先を交換するつもりらしい。
関根の恋路に巻き込むな、と、言いたいところだが、瑞稀の連絡先を知りたい本音もないわけではないから、勝手にやらせておく。
化粧室から戻ってきた瑞稀が、なぜかすぐに席へ戻らずにテーブルの向こう側に立ったまま首を傾げている。その視線の先へ目を向けたその瞬間、彼女の手が関根の髪を掴み、毟り取った。
「ええっ? うっそぉ?」
「ほらね、小夜。やっぱりこの頭は詐欺だわ」
一瞬のできごとに目を白黒させている関根をよそに、したり顔の瑞稀の手元と関根の頭を見比べ、小夜ちゃんが驚愕している。
もう数年前になるか。会社を退職し暫くふらふらしていた関根は、ある日突然、頭を丸めた。所謂スキンヘッドだ。普段は涼しげなその頭で過ごしているが、会社でのアルバイト中や飲みに出るときには、そのほうが世間に馴染むからと、鬘と眼鏡を使う。
俺の知る限り鬘を見破られたのは初めてだ。まさか毟り取られるとは思ってもみなかったが。
禿げを連呼して笑い転げる小夜ちゃんとふたりの世界を築いている関根を放置し、瑞稀はまたひとり、カクテルを飲み始めた。俺もまた蚊帳の外。おとなしく新たな酒を呷る。
そろそろ日付も変わる頃、関根と小夜ちゃんが席を立つ。交渉成立、関根はかわいい女の子をお持ち帰りするらしい。ごちそうさま、と支払いもせず出て行く背中に、明日水増しした請求書を叩き付けてやろうと本気で思った。
「まだ飲みますか?」
俺の存在なんて眼中にないだろうと思っていた瑞稀に話しかけられた。
「いや、どうするかな。君は?」
「そうね……どちらでも」
瑞稀はダブルのマティーニからここまで、アルコール度数の高いカクテルばかり、かなりの量を飲んでいる。酔いも相当回っているはずだ。こんなに夜遅く、ひとりで帰すわけにもいかない。
「送ろうか? それとも……」
「場所変えて飲み直しますか? いいですよ、それでも」
投げ遣りな口調。だが、その美しく挑発的な眼差しに、俺は魅せられてしまった。
この女、おもしろい。
飲み直しを口実に、瑞稀を俺の家へと連れ帰るのに躊躇いは無い。ひと目惚れなんてものは信じない質だが、彼女をもっと知りたいと思ってしまったのも本当だった。
了
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