4 / 42
第2話 真の姿 エマ&リナス視点
しおりを挟む
『当主殿、この度は迷惑をかけてしまいましたな。こちらは感謝の気持ちとなります故、どうぞお受け取りくだされ』
『いやぁ、エマ君が話の分かる人間でよかった! 誰にだって、間違いはあるからな。スムーズに進んで一安心だ』
ランドル家邸内でロバンおじ様から謝罪ではなく感謝という名目でお詫びの金を渡され、まるで他人事のように満面の笑みを向けられる。そして帰路で、とある方から丁寧な謝罪を受けたあとのこと。自室に戻って紅茶を飲んでいた私は、ある日の出来事を思い出していた。
「……私とケヴィンが、婚約の報告を行った時……。ほんの一瞬だけ、リナス・ファスルの目の色が変わった」
お淑やかで、気弱。清廉潔白な印象を放つ、掛け値なしの美少女。そのおっとりとしたタレ目に、まるでタチの悪いハイエナのような――。狡猾で攻撃的な色が宿った。
「おじ様もケヴィンも、誰かが少しでもリナスの悪口を言うと怒り出す。だから言えなかったのだけれど」
彼女は、清廉潔白なんかじゃない。
あれは皮を被っているだけで、その本性は恐らく――
〇〇
「ふふっ、ふふふふふっ。上手くいったわ」
ケヴィンお兄様が帰ったあとのこと。自室で紅茶を飲んでいたわたしは、彼の言葉とその時の表情を思い出して含み笑っていた。
『無事、エマとの婚約を解消できることになった! 君と婚約、結婚をできるようになったんだよっ!』
幼い頃からじわじわと関係を深めていって、でも――。『妹』から『異性』へと認識を変えさせようとしていると、余計な女に目が眩んでしまったケヴィン。
少しだけ焦ったものの、軌道の修正は無事に成功。予定通りわたしの婚約者となり、結婚が確定的となった。
「これでわたしは、次期侯爵夫人。数ランクアップした毎日を過ごせるようになったわ」
はっきり言ってわたしは、あの人にはまったく興味がない。興味があるのは、あの人の地位と財のみ。
侯爵夫人になればお茶会でもペコペコせずに済むし、今と違って好きなものを自由に変える。あの男は、そのための道具にすぎないのよね。
「あ~あ、早く式の日が来ないかな。一日も早く、侯爵家の一員になりた――」
「リナス……。もうやめてくれ……」「もう、やめて頂戴……」
早くなりたいと考えていたら、部屋の扉が開いてパパとママがやって来た。
「侯爵家の人間を利用しようとしている、それが露見してしまえば……。我々ファスル家は大変な目に遭ってしまう……」
「お願いよ、リナス……。そういうことは、やめて……」
「嫌よ。わたしはもっと上質な人生を送りたいの。……パパもママも、しつこいわよ。これ以上繰り返すなら、あの件を暴露するからね」
そう言うと2人は顔を真っ青にして、即座にその場から消えた。
2人は汚職をしていて、わたしはその証拠を握っている。実際に暴露したら、子どもであるわたしも困るけど――パパとママは、も~っと困ってしまう。だからこれがある限り、2人は逆らえない。ずっと、わたしの手足となるのよね。
「せっかく、蒔いた種が実をつけたんだもの。止めるはずないでしょ」
パパとママが居た場所に呆れの息を吐き、窓の外を眺める。そしてその方向に投げキッスをして、わたしはニヤリと口元を緩めるのだった。
「3か月後から始まる新婚生活が、楽しみだわ。これからたっぷりと甘い汁を吸わせてもらうわよ、ケヴィンお兄様」
『いやぁ、エマ君が話の分かる人間でよかった! 誰にだって、間違いはあるからな。スムーズに進んで一安心だ』
ランドル家邸内でロバンおじ様から謝罪ではなく感謝という名目でお詫びの金を渡され、まるで他人事のように満面の笑みを向けられる。そして帰路で、とある方から丁寧な謝罪を受けたあとのこと。自室に戻って紅茶を飲んでいた私は、ある日の出来事を思い出していた。
「……私とケヴィンが、婚約の報告を行った時……。ほんの一瞬だけ、リナス・ファスルの目の色が変わった」
お淑やかで、気弱。清廉潔白な印象を放つ、掛け値なしの美少女。そのおっとりとしたタレ目に、まるでタチの悪いハイエナのような――。狡猾で攻撃的な色が宿った。
「おじ様もケヴィンも、誰かが少しでもリナスの悪口を言うと怒り出す。だから言えなかったのだけれど」
彼女は、清廉潔白なんかじゃない。
あれは皮を被っているだけで、その本性は恐らく――
〇〇
「ふふっ、ふふふふふっ。上手くいったわ」
ケヴィンお兄様が帰ったあとのこと。自室で紅茶を飲んでいたわたしは、彼の言葉とその時の表情を思い出して含み笑っていた。
『無事、エマとの婚約を解消できることになった! 君と婚約、結婚をできるようになったんだよっ!』
幼い頃からじわじわと関係を深めていって、でも――。『妹』から『異性』へと認識を変えさせようとしていると、余計な女に目が眩んでしまったケヴィン。
少しだけ焦ったものの、軌道の修正は無事に成功。予定通りわたしの婚約者となり、結婚が確定的となった。
「これでわたしは、次期侯爵夫人。数ランクアップした毎日を過ごせるようになったわ」
はっきり言ってわたしは、あの人にはまったく興味がない。興味があるのは、あの人の地位と財のみ。
侯爵夫人になればお茶会でもペコペコせずに済むし、今と違って好きなものを自由に変える。あの男は、そのための道具にすぎないのよね。
「あ~あ、早く式の日が来ないかな。一日も早く、侯爵家の一員になりた――」
「リナス……。もうやめてくれ……」「もう、やめて頂戴……」
早くなりたいと考えていたら、部屋の扉が開いてパパとママがやって来た。
「侯爵家の人間を利用しようとしている、それが露見してしまえば……。我々ファスル家は大変な目に遭ってしまう……」
「お願いよ、リナス……。そういうことは、やめて……」
「嫌よ。わたしはもっと上質な人生を送りたいの。……パパもママも、しつこいわよ。これ以上繰り返すなら、あの件を暴露するからね」
そう言うと2人は顔を真っ青にして、即座にその場から消えた。
2人は汚職をしていて、わたしはその証拠を握っている。実際に暴露したら、子どもであるわたしも困るけど――パパとママは、も~っと困ってしまう。だからこれがある限り、2人は逆らえない。ずっと、わたしの手足となるのよね。
「せっかく、蒔いた種が実をつけたんだもの。止めるはずないでしょ」
パパとママが居た場所に呆れの息を吐き、窓の外を眺める。そしてその方向に投げキッスをして、わたしはニヤリと口元を緩めるのだった。
「3か月後から始まる新婚生活が、楽しみだわ。これからたっぷりと甘い汁を吸わせてもらうわよ、ケヴィンお兄様」
41
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
公爵令嬢は運命の相手を間違える
あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。
だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。
アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。
だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。
今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。
そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。
そんな感じのお話です。
捨てられた私は遠くで幸せになります
高坂ナツキ
恋愛
ペルヴィス子爵家の娘であるマリー・ド・ペルヴィスは来る日も来る日もポーションづくりに明け暮れている。
父親であるペルヴィス子爵はマリーの作ったポーションや美容品を王都の貴族に売りつけて大金を稼いでいるからだ。
そんな苦しい生活をしていたマリーは、義家族の企みによって家から追い出されることに。
本当に家から出られるの? だったら、この機会を逃すわけにはいかない!
これは強制的にポーションを作らせられていた少女が、家族から逃げて幸せを探す物語。
8/9~11は7:00と17:00の2回投稿。8/12~26は毎日7:00に投稿。全21話予約投稿済みです。
【完結】地味令嬢の願いが叶う刻
白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。
幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。
家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、
いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。
ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。
庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。
レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。
だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。
喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…
異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
僕の婚約者は今日も麗しい
蒼あかり
恋愛
公爵家嫡男のクラウスは王命により、隣国の王女と婚約を結ぶことになった。王家の血を引く者として、政略結婚も厭わないと覚悟を決めていたのに、それなのに。まさか相手が子供だとは......。
婚約相手の王女ローザもまた、国の安定のためにその身を使う事を使命としていたが、早い婚約に戸惑っていた。
そんなふたりが色々あって、少しづつ関係を深めていく。そんなお話。
変わり者の作者が、頑張ってハッピーエンドを目指します。
たぶん。きっと。幸せにしたい、です。
※予想外に多くの皆様に読んでいただき、驚いております。
心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
ご覧いただいた皆様に幸せの光が降り注ぎますように。
ありがとうございました。
虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。
ラディ
恋愛
一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。
家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。
劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。
一人の男が現れる。
彼女の人生は彼の登場により一変する。
この機を逃さぬよう、彼女は。
幸せになることに、決めた。
■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です!
■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました!
■感想や御要望などお気軽にどうぞ!
■エールやいいねも励みになります!
■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。
※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。
ある公爵令嬢の死に様
鈴木 桜
恋愛
彼女は生まれた時から死ぬことが決まっていた。
まもなく迎える18歳の誕生日、国を守るために神にささげられる生贄となる。
だが、彼女は言った。
「私は、死にたくないの。
──悪いけど、付き合ってもらうわよ」
かくして始まった、強引で無茶な逃亡劇。
生真面目な騎士と、死にたくない令嬢が、少しずつ心を通わせながら
自分たちの運命と世界の秘密に向き合っていく──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる