私との婚約は、選択ミスだったらしい

柚木ゆず

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第6・5話 ルシアン・レインズ様 エマ視点(2)

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「エマ・サーレル様。突然の申し出を受け入れてくださり、ありがとうございます。こうしてお話しする機会を与えていただけて、幸せです」

 邸内の1階部分にある、広めに設計されている応接室。そんな場所の、中央付近。テーブルを挟んだ対面にあるソファーに腰を下ろされている、穏やかで真っすぐなブルーの瞳が印象的な方――ルシアン・レインズ様は、改めて口元を緩められた。

 目の前にいらっしゃる方は、隣国の御三家であるレインズ公爵家の次期当主様。お父様は席を外されていて、今は初めての1対1の状況となっている。今日レインズ様がいらっしゃられた目的は、『好き』にまつわるお話をされるため。
 などなど。

 この場にはたくさんの緊張する要素があって、でも――。

((なのに……。緊張感は、ない))

 私がそうなっているのはきっと、レインズ様のお人柄によるもの。瞳に宿る性質と同じ『優しいもの』を雰囲気として纏われているので、思考にも鼓動にも精神的にも肉体的にも、余裕を持てているのだと思う。

「それでは早速ですが、俺がこの胸に抱いている――ずっと抱いていた感情について、説明をさせていただきます。お聞きください」
「はい。レインズ様、お願い致します」

 姿勢を正されたレインズ様に合わせ、私も今一度姿勢を出す。そうしてお互いの準備が整うと、大切なお話が始まって――


 介抱した際の私の姿と台詞によって、一目惚れをしてくださっていたこと。

 想いを告げようと、考えてくださっていたこと。

 その数日前にケヴィンから告白されていたことを知り、その心に蓋をされていたこと。

 ケヴィンとの婚約解消を知り、心の蓋を外して挑戦を決めたこと。

 ――それらを、理解した。
 そう、なんだ。そう、だったのですね。

「レインズ様は。あの時――初めてお会いした時に。そのように、想ってくださっていたのですね」
「はい。…………こういった出来事は、小説の中でのみ起きる現象だと思っていました。ですがそれは、大間違いでした。俺はあの日、生まれて初めて恋をしたのです」

 レインズ様はご自身のお胸に右手を添え、美しい微笑みを浮かべられた。
 そして。それに合わせて、自然と――。私の顔もまた、心からの微笑みを作っていたのでした。

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