私との婚約は、選択ミスだったらしい

柚木ゆず

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リナス編 リナスのその後~運命的な出会い~ 俯瞰視点(1)

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「やった……っ。やったわ……っ! やっと出られた……っ! わたしはもう自由よ…………っ!」

 とある子爵家の不祥事が発覚してから、四季が十数回繰り返されたある日。独りの女性が、茜色に染まる空を見上げて歓喜の声をあげていました。
 金色の髪を後ろで縛った、頬がややこけている三十四歳の女性。そんな彼女の名は、リナス。かつてはファスル子爵家の長女だった、今は平民以下の身分に堕ちてしまった人間でした。

((今日からは、あんなところで暮らさなくてもいい……! 逆転劇の始まりよ……!!))

 暗く、狭く、汚い場所での生活は、十数年続きました。ですがリナスはまったく反省しておらず、それどころか――


『なんでわたしがこんな目に遭わないといけないのよ!!』

『ケヴィンと両親だったバカさえ、余計な真似をしなければ……!!』

『ここを出たら、絶対にアイツらより良い生活をしてやるんだから……!!』


 と、日々怒り続けていました。
 そのため3人より良い生活を手に入れるべく、再び自由を手に入れた彼女は即座に動き出します。

((今持ってるのは、国から出所者に渡される施し僅かなお金だけ。これじゃ、まともな家では暮らせない。まずは、ソレを確保しないとね))

 そうしてリナスがまず目指したのは、中古の服を取り扱うお店。そこで一番露出度の高いものへと着替え、この街で最も繁盛している酒場を目指します。

((そこなら、きっと――。ピッタリの人が、いるわね))

 彼女が行おうとしていること、それは『誰かの恋人になる』。

 酒場で騙せそうな男を見つけて声をかけ、巧みな話術や身体で誘惑する。そうしてその者の家に上がり込み、養わせる・・・・。そしてある程度態勢が整ったら全財産を盗って捨て、別の街に行って新たな男を――1ランク上の男を探す。

 リナスはこうして、じわじわと生活の水準を上げていこうと企んでいたのです。

((こんな状況になっても、わたしなら挽回できるわ。……ケヴィン、あの2人、エマも。見てなさいよぉ……っ))

 にやり。タチの悪いハイエナのような笑みを浮かべ、酒の匂い、肉と揚げ物匂い、大声に包まれた場所へと入り――。獲物を、物色。
 広い広い店内をじっくりと眺め回し、

((………………………………ふふ。バカでちょろそうな男、みぃ~つけた))

 隅の席にいた、ひげを蓄えた男性をロックオン。心の中ではぺろりと舌なめずりをしながら、その男に声をかけたのでした。

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