私との婚約は、選択ミスだったらしい

柚木ゆず

文字の大きさ
32 / 42

リナス編 リナスのその後~運命的な出会い~ 俯瞰視点(2)

しおりを挟む
「……え? お、俺? お兄さんって、俺か?」
「ええ、そうですよ。お隣に座っても、いいですか?」

 相手がケヴィンと知らずに声をかけた、リナス。彼女はぱっくりと開いた胸元を強調し、色っぽさを全面的に出して首を傾けました。

「お兄さんが目に入った途端に、『一緒に飲んだら楽しそう』って思っちゃいまして。ご一緒しても、構いませんか?」
「あ、ああ。ああっ、もちろんだともっ。座ってくれっ!」

 リナスは口調や所作を変えている上に、十数年の月日が経過しています。そのためケヴィンも相手の正体に気付かず、上機嫌で左隣にある木製のイスを叩きました。

「ありがとうございます。……わぁ。近くで見ると、もっとカッコよくなるんですね……っ」
「そ、そうか? いやぁ、照れるなぁ。あははははっ」

 ケヴィンもまた、いつまで経ってもケヴィン。あの頃のようにあっさりと懐に入られてしまい、上機嫌で乾杯。2人は笑顔でグラスをぶつけ合い、満面の笑みと共にビールを飲み干しました。

「おっ、いけるねえ美人さんっ。酒良く飲むの? 酒強いのっ?」
「お酒は、年に数回飲む程度ですね。元々アルコールに強い人みたいです」

 収監中は年に2度――現国王の誕生日と建国日に、いつもよりも豪華な食事が出されていました。リナスはその際にビールと出会い、酒に強いと知っていたのです。

「お兄さんも、お酒強いんですね~。わたし、お酒が強い人も、タイプなんですよ」
「へぇ~。じゃあさ、他はどんなヤツがタイプなの? 『も』ってことは、まだあるんでしょ?」
「そうですね。他には…………内面だと、しっかりとしている人、引っ張っていってくれる人、自分に自信がある人、ですね。外見だったら、背が高い人と、ひげが似合う人、ですね」

 リナスはワザと、目の前の相手が――ケヴィンが自分の長所だと思っていそうな点と、ケヴィンの容姿に当てはまる点を挙げます。そして意図的にしばらく間を開け、「お兄さんと一致しますね」とはにかみました。

「あ~、そうだね~っ。……ちなみに、さ。俺って今は・・、フリーなんだよね」

 日常の態度や追放貴族といったものにより、ケヴィンに好意を示す女性はいませんでした。彼にとっては、追放後初めてやってきたチャンスでした。
 そのためケヴィンはまんまと術中にはまり、上半身を横へと向けました。

「……あの、さ。君は、どうなの? 恋人とか、好きな人、いるの?」
「はい、いますよ。好きな人はいます」
「……そっか。美人だもんなぁ、そりゃそうか――」
「目の前に、いますよ。…………さっきの『楽しそう』は、実は切っ掛けづくりだったんです。わたしは、お兄さんに一目惚れをしています」

 嬉しい誤算だわっ。この男は簡単に操れる――。そう感じたリナスは一気に攻め、それによってケヴィンの頬はだらしなく緩みます。

((ふふふ、さすが私。一人目は、楽々ゲットできそうね))

 じゅるり。心の中で再び舌なめずりをしたリナス――でしたが。残念ながら、そう上手くはいきません。
 やがてリナスにとっては嬉しくない誤算が発生しはじめ、状況は大きく変わってしまうのでした――。

しおりを挟む
感想 216

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします

たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。 荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。 「この猫に構うな。人間嫌いだから」 冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。 猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

公爵令嬢は運命の相手を間違える

あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。 だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。 アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。 だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。 今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。 そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。 そんな感じのお話です。

捨てられた私は遠くで幸せになります

高坂ナツキ
恋愛
ペルヴィス子爵家の娘であるマリー・ド・ペルヴィスは来る日も来る日もポーションづくりに明け暮れている。 父親であるペルヴィス子爵はマリーの作ったポーションや美容品を王都の貴族に売りつけて大金を稼いでいるからだ。 そんな苦しい生活をしていたマリーは、義家族の企みによって家から追い出されることに。 本当に家から出られるの? だったら、この機会を逃すわけにはいかない! これは強制的にポーションを作らせられていた少女が、家族から逃げて幸せを探す物語。 8/9~11は7:00と17:00の2回投稿。8/12~26は毎日7:00に投稿。全21話予約投稿済みです。

【完結】地味令嬢の願いが叶う刻

白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。 幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。 家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、 いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。 ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。 庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。 レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。 だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。 喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…  異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆ 

僕の婚約者は今日も麗しい

蒼あかり
恋愛
公爵家嫡男のクラウスは王命により、隣国の王女と婚約を結ぶことになった。王家の血を引く者として、政略結婚も厭わないと覚悟を決めていたのに、それなのに。まさか相手が子供だとは......。 婚約相手の王女ローザもまた、国の安定のためにその身を使う事を使命としていたが、早い婚約に戸惑っていた。 そんなふたりが色々あって、少しづつ関係を深めていく。そんなお話。 変わり者の作者が、頑張ってハッピーエンドを目指します。 たぶん。きっと。幸せにしたい、です。 ※予想外に多くの皆様に読んでいただき、驚いております。 心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。 ご覧いただいた皆様に幸せの光が降り注ぎますように。 ありがとうございました。

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

ある公爵令嬢の死に様

鈴木 桜
恋愛
彼女は生まれた時から死ぬことが決まっていた。 まもなく迎える18歳の誕生日、国を守るために神にささげられる生贄となる。 だが、彼女は言った。 「私は、死にたくないの。 ──悪いけど、付き合ってもらうわよ」 かくして始まった、強引で無茶な逃亡劇。 生真面目な騎士と、死にたくない令嬢が、少しずつ心を通わせながら 自分たちの運命と世界の秘密に向き合っていく──。

処理中です...