お姉様、今度は貴方の恋人をもらいますわ。何でも奪っていく妹はそう言っていますが、その方は私の恋人ではありませんよ?

柚木ゆず

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プロローグ

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「お姉様。生意気にも、わたくしに隠し事をしていましたのね」

 休日のお昼過ぎ、自室の窓辺で読書をしていた時でした。ノックなしで扉が勢いよく開き、高価なイヤリングやネックレスを身につけた、リスを連想させるツリ目の子が――実妹のニネットが、意地の悪い笑みを浮かべてやって来ました。

「隠し事……? なんのこと……?」
「とぼけても無駄ですわ。すでに気付いているんですのよ。わたくしやお父様やお母様に隠れて、交際を行っていることに」
「……交際? え……?」

 まるで推理を終えて、犯人を指さす探偵のよう。自信満々でニヤニヤとしていて、私はそんな妹に対して再び大きく首を傾げました。

 確かに私アンジェリーヌには、隠れて交際をしている人がいました。

 その方は私達姉妹が通う『王立・サンテルク学院』での私の同学年生である、エズラル侯爵家のフレデリク様。フレデリク様は学院の生徒会長を務められていて、私は会長の補佐を行う副会長に選出されています。そのため同じ時間を過ごすことが多く、その中でお互いを知ってゆき、気が付くと想い合うようになっていたのです。
 私はとある事情で、ずっと言えずにいたのですが……。フレデリク様が想いを告げてくださり、躊躇う私を優しさで包み込んでくださって、私達は半年前に恋人となったのでした。

 でも――。

『お姉様、お誕生日おめでとうございます。……そこにあるのは、お友達から贈られたプレゼントですわね?』
『そ、そうだよ。それが、どうしたの……?』
『そのクマのぬいぐるみ、気に入りましたわ。プレゼントはずっと本人が所持しないといけない、そんなルールはありませんもの。くださいな』

『お姉様。そのイヤリングは、わたくしが身につけておくべきものですわ。差し出してくださいまし』
『それは、できないよ……。これはおばあ様が私に遺してくださった、大切な形見で――』
『「もらった」という思い出ができたのだから、それで充分でしょう? イヤリングだってわたくしにつけてもらった方が幸せなんですしね。差し出してくださいまし、さあ早く』

 ニネットは私のものをなんでも欲しがり、お父様とお母様はそんなこの子を溺愛。いつも甘やかし、理不尽な我が儘を許してきました。

 そのため発覚すると妹はフレデリク様に迫り、あの方は揺らがない人。なのでニネットは怒り、両親が何かしらの行動を起こすのはご迷惑をおかけしてしまうことは確定的でした。

 それに、フレデリク様が――

『この男はもう、貴方の恋人なのですから。これからは僕が、貴方を守り幸せにしますよ』
『そんな家に居ても、苦労をするだけです。卒業と同時にネズレント子爵家を出て、結婚しましょう』
『アンジェリーヌ様の以後の立場や評判を考え、家を出る際には色々なものを用意いたします。……全て、僕にお任せください。貴方を必ず、薔薇色の未来へと導きますので』

 そう仰ってくださっていて、ずっと水面下で動いてくださっていました。ですので、関係の漏えいは厳禁。2人で過ごす際は『生徒会長と副会長の相談』という形を取っていて、しかも密室を――生徒会長室を使用していたため、1つ下の学年に在籍しているものの、ニネットは絶対に悟れないのです。

 ……この子はいったい、誰のことを言っているのでしょうか……?

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