お姉様、今度は貴方の恋人をもらいますわ。何でも奪っていく妹はそう言っていますが、その方は私の恋人ではありませんよ?

柚木ゆず

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第12話 変化 ニネット視点(1)

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『先ほどは騒がしくしてしまって、申し訳ございません。エドモン様、おはようございます』

 廊下で取り乱してしまった件を謝罪し、目の前にいらっしゃる想い人に朝のご挨拶を行った。その、直後でしたわ。わたくしは違和感を覚え、心の中で大きく首を傾げていた。

((エドモン様って……。こんな方だったかしら……?))

 堀が深くてがっしりとした、堅牢な騎士のような御方。圧倒的な覇気を纏われる人だったはずなのに……。今朝のエドモン様は、なんだかゴリラみたい。
 ここにいるのは、本当にエドモン様? エドモン様では、ありませんわよね? ハーフアニバーサリーのサプライズで、人間にそっくりなゴリラを連れてきているのかしら……?

「……おじ様、おば様。こちらは、どういった趣向なのでしょうか……?」
「「は? 趣向?」」
「ニネット、お前は何を言っているんだ? ……そして、なぜ俺が喋っただけでそんなにも驚くんだ?」

 だ、だって……。ゴリラが人語を操ったと思ったからで……。
 え? えっ? 目の前にいるのは、服を着たゴリラじゃないですの!? これが、エドモン様!?

「あ、あはははは。え、エドモン様、おじ様、おば様。し、失礼致しました。お席につきますわ」

 信じられないけど、事実みたいだから受け入れるしかない。わたくしはテーブルについて朝食が始まり、ここからはいつも通りの楽しい時間――とは、ならなかった。

((……エドモン様って……。こんなにもバカみたいで、偉そうな喋り方だったかしら……?))

 俺がその気になれば、この世に様々な『革命』を起こせる――。俺はすごいんだ――。ダーファルズ家有史以来の天才なんだ――。おまえもそう思うだろ――? そんな男の婚約者になれて、さぞ幸せだろう――。
 などなど。この方の口から出てくるのは、こういったものばかりで……。はっきり言って、不快でつまらない。そのせいでわたくしは終始不愉快で、美味しいはずの食事をちゃんと味わえない。結局はたっぷりとストレスを溜めて、自室に戻ってきたのでした。

「はぁ……予想とは真逆の、最低な朝食になりましたわね……。急に、どうしてしまったのかしら……?」

 ベッドの縁に腰を掛け、腕組みをして小首を何度も傾げる。
 素敵だったエドモン様がゴリラになっていて、聡明で楽しいはずの会話はバカで呆れる内容になっていた。何が起きていますの……?

「昨夜までは今まで通りだったのに、急に変貌してしまうなんて……。何が起きているんですの……?」

 変わったことなんて何一つないのに、大変わりしてしまっている。なぜ、そんなことになってしまったのかしら……?

「昨夜お休みのご挨拶をしてから、食堂に入るまでに……。何かあった……?」

 昨日までは正常だったのだから、原因があるとしたらその間。そこでわたくしは記憶を振り返り――…………。
 やがて、気付いてしまったのだった。

「分かり、ましたわ……。わたくしは、今まで……。エドモン様を、色眼鏡で見てしまっていたんですわ……」

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