26 / 37
第11話 その後のオスカー(エピローグ オスカー編)俯瞰視点(3)
しおりを挟む
「今から三週間ほど前。ヴィクトリアさんはプチ傷心旅行として隣国の観光名所を訪れており、俺達はその際に偶然出会ったのですよ」
観光を行っている最中にヴィクトリアが私物をうっかり落としてしまい、それを偶々その場に居たサミュエルが拾う。そうして関係が生まれ、出会った時から2人ともに、相手の雰囲気を心地よいと感じていました。そのため旅行中に何度か食事などを行い、やがて恋仲となった。
サミュエルの口から思いもよらない内容が飛び出し、オスカーはたまらずぽかんと大口を開けてしまいました。
「……僕が知らない間に、そんな事があったなんて……。全然、知らなかった……」
「貴方は、彼女を自分の都合で捨てた人間です。知る必要なんてありませんよ」
サミュエルはヴィクトリアから、旅行の理由を――一方的な撤回の一部始終を聞いていました。そのためオスカーの全身に、今一度冷たく鋭い視線が突き刺さります。
「その様子ですと、関係の修復に来られたのですね? 言葉は悪くなってしまいますが――。ふざけるなよ? どれだけ彼女を振り回せば気が済むんだ?」
「っっ!! しょっ、初対面の相手に失礼だぞ!! 撤回し謝罪しろ!!」
「…………自分の都合で彼女の尊厳を踏みにじる言葉を吐き、あまつさえやり直したいとほざく。貴様のような輩には、礼儀なんて不要だ」
「っ……! っっ!!」
全身に鳥肌が立ってしまう、絶対零度のような静かな怒り。それによってオスカーは無意識的に一歩下がってしまい、ですが、このまま引き下がる事は彼のプライドが許せません。
そこで彼は、なんとも彼らしい、情けない手段に出ました。
「おいお前っ!! 僕は伯爵家の人間で、侯爵家にも多く友人がいるんだっ!! これ以上生意気を言うのであれば、持てる力を使ってお前の家に抗議を行うぞっ? それもでもいいのか!?」
虎の威を借るキツネ。彼は他力を存分に使って脅しをかけ、けれど――。その優位は、瞬く間に崩壊してしまいます。
「謝るなら、今のうちだぞっ? 後悔する羽目になってもいいのかっ?」
「ああ、好きにすればいい。権力を持ち出すのは大人げないが――そっちがその気なら、仕方がない。ファリュスト公爵家の力を使って、相手をしてやろうじゃないか」
「………………え…………? ふぁりゅすと……? ファリュスト……!?」
ファリュスト公爵家といえば、隣国御三家の一つ。王族とも深い繋がりを持つ、伝統と実力を兼ね備えた名家だったのです。
観光を行っている最中にヴィクトリアが私物をうっかり落としてしまい、それを偶々その場に居たサミュエルが拾う。そうして関係が生まれ、出会った時から2人ともに、相手の雰囲気を心地よいと感じていました。そのため旅行中に何度か食事などを行い、やがて恋仲となった。
サミュエルの口から思いもよらない内容が飛び出し、オスカーはたまらずぽかんと大口を開けてしまいました。
「……僕が知らない間に、そんな事があったなんて……。全然、知らなかった……」
「貴方は、彼女を自分の都合で捨てた人間です。知る必要なんてありませんよ」
サミュエルはヴィクトリアから、旅行の理由を――一方的な撤回の一部始終を聞いていました。そのためオスカーの全身に、今一度冷たく鋭い視線が突き刺さります。
「その様子ですと、関係の修復に来られたのですね? 言葉は悪くなってしまいますが――。ふざけるなよ? どれだけ彼女を振り回せば気が済むんだ?」
「っっ!! しょっ、初対面の相手に失礼だぞ!! 撤回し謝罪しろ!!」
「…………自分の都合で彼女の尊厳を踏みにじる言葉を吐き、あまつさえやり直したいとほざく。貴様のような輩には、礼儀なんて不要だ」
「っ……! っっ!!」
全身に鳥肌が立ってしまう、絶対零度のような静かな怒り。それによってオスカーは無意識的に一歩下がってしまい、ですが、このまま引き下がる事は彼のプライドが許せません。
そこで彼は、なんとも彼らしい、情けない手段に出ました。
「おいお前っ!! 僕は伯爵家の人間で、侯爵家にも多く友人がいるんだっ!! これ以上生意気を言うのであれば、持てる力を使ってお前の家に抗議を行うぞっ? それもでもいいのか!?」
虎の威を借るキツネ。彼は他力を存分に使って脅しをかけ、けれど――。その優位は、瞬く間に崩壊してしまいます。
「謝るなら、今のうちだぞっ? 後悔する羽目になってもいいのかっ?」
「ああ、好きにすればいい。権力を持ち出すのは大人げないが――そっちがその気なら、仕方がない。ファリュスト公爵家の力を使って、相手をしてやろうじゃないか」
「………………え…………? ふぁりゅすと……? ファリュスト……!?」
ファリュスト公爵家といえば、隣国御三家の一つ。王族とも深い繋がりを持つ、伝統と実力を兼ね備えた名家だったのです。
66
あなたにおすすめの小説
(完結)無能なふりを強要された公爵令嬢の私、その訳は?(全3話)
青空一夏
恋愛
私は公爵家の長女で幼い頃から優秀だった。けれどもお母様はそんな私をいつも窘めた。
「いいですか? フローレンス。男性より優れたところを見せてはなりませんよ。女性は一歩、いいえ三歩後ろを下がって男性の背中を見て歩きなさい」
ですって!!
そんなのこれからの時代にはそぐわないと思う。だから、お母様のおっしゃることは貴族学園では無視していた。そうしたら家柄と才覚を見込まれて王太子妃になることに決まってしまい・・・・・・
これは、男勝りの公爵令嬢が、愚か者と有名な王太子と愛?を育む話です。(多分、あまり甘々ではない)
前編・中編・後編の3話。お話の長さは均一ではありません。異世界のお話で、言葉遣いやところどころ現代的部分あり。コメディー調。
(完)婚約破棄ですか? なぜ関係のない貴女がそれを言うのですか? それからそこの貴方は私の婚約者ではありません。
青空一夏
恋愛
グレイスは大商人リッチモンド家の娘である。アシュリー・バラノ侯爵はグレイスよりずっと年上で熊のように大きな体に顎髭が風格を添える騎士団長様。ベースはこの二人の恋物語です。
アシュリー・バラノ侯爵領は3年前から作物の不作続きで農民はすっかり疲弊していた。領民思いのアシュリー・バラノ侯爵の為にお金を融通したのがグレイスの父親である。ところがお金の返済日にアシュリー・バラノ侯爵は満額返せなかった。そこで娘の好みのタイプを知っていた父親はアシュリー・バラノ侯爵にある提案をするのだった。それはグレイスを妻に迎えることだった。
年上のアシュリー・バラノ侯爵のようなタイプが大好きなグレイスはこの婚約話をとても喜んだ。ところがその三日後のこと、一人の若い女性が怒鳴り込んできたのだ。
「あなたね? 私の愛おしい殿方を横からさらっていったのは・・・・・・婚約破棄です!」
そうしてさらには見知らぬ若者までやって来てグレイスに婚約破棄を告げるのだった。
ざまぁするつもりもないのにざまぁになってしまうコメディー。中世ヨーロッパ風異世界。ゆるふわ設定ご都合主義。途中からざまぁというより更生物語になってしまいました。
異なった登場人物視点から物語が展開していくスタイルです。
(完)婚約解消からの愛は永遠に
青空一夏
恋愛
エリザベスは、火事で頬に火傷をおった。その為に、王太子から婚約解消をされる。
両親からも疎まれ妹からも蔑まれたエリザベスだが・・・・・・
5話プラスおまけで完結予定。
[完結]だってあなたが望んだことでしょう?
青空一夏
恋愛
マールバラ王国には王家の血をひくオルグレーン公爵家の二人の姉妹がいる。幼いころから、妹マデリーンは姉アンジェリーナのドレスにわざとジュースをこぼして汚したり、意地悪をされたと嘘をついて両親に小言を言わせて楽しんでいた。
アンジェリーナの生真面目な性格をけなし、勤勉で努力家な姉を本の虫とからかう。妹は金髪碧眼の愛らしい容姿。天使のような無邪気な微笑みで親を味方につけるのが得意だった。姉は栗色の髪と緑の瞳で一見すると妹よりは派手ではないが清楚で繊細な美しさをもち、知性あふれる美貌だ。
やがて、マールバラ王国の王太子妃に二人が候補にあがり、天使のような愛らしい自分がふさわしいと、妹は自分がなると主張。しかし、膨大な王太子妃教育に我慢ができず、姉に代わってと頼むのだがーー
(完結)貴女は私の親友だったのに・・・・・・
青空一夏
恋愛
私、リネータ・エヴァーツはエヴァーツ伯爵家の長女だ。私には幼い頃から一緒に遊んできた親友マージ・ドゥルイット伯爵令嬢がいる。
彼女と私が親友になったのは領地が隣同志で、お母様達が仲良しだったこともあるけれど、本とバターたっぷりの甘いお菓子が大好きという共通点があったからよ。
大好きな親友とはずっと仲良くしていけると思っていた。けれど私に好きな男の子ができると・・・・・・
ゆるふわ設定、ご都合主義です。異世界で、現代的表現があります。タグの追加・変更の可能性あります。ショートショートの予定。
(完)親友なんて大嫌い!ーあなたは敵なの? 味方なの? (全5話)
青空一夏
恋愛
私はセント・マーガレット学園に通うアニエス・フィルム公爵令嬢。私の悩みは親友のベル・シクラメル公爵令嬢のこと。
普段はとても仲が良くて優しいのに、私のボーイフレンドをいつも横取りするわ。両親に言っても、ベルの味方ばかりする。だから私は修道院に入ってやった。これでもうベルなんかと関わらないで済むもんね。
そしたら・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風の残酷なしの恋愛物語。貴族社会でもある程度自由恋愛の許される世界です。幼い頃から婚約者を取り決める風習のない国です。
王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。
これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。
しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。
それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。
事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。
妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。
故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。
(完結)お姉様、私を捨てるの?
青空一夏
恋愛
大好きなお姉様の為に貴族学園に行かず奉公に出た私。なのに、お姉様は・・・・・・
中世ヨーロッパ風の異世界ですがここは貴族学園の上に上級学園があり、そこに行かなければ女官や文官になれない世界です。現代で言うところの大学のようなもので、文官や女官は○○省で働くキャリア官僚のようなものと考えてください。日本的な価値観も混ざった異世界の姉妹のお話。番の話も混じったショートショート。※獣人の貴族もいますがどちらかというと人間より下に見られている世界観です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる