私を利用するための婚約だと気付いたので、別れるまでチクチク攻撃することにしました

柚木ゆず

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第4話 デート、またの名を周囲への仲良しアピール エリック視点 (1)

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「リナ。久しぶりの買い物は、やっぱり楽しいね」

 爽やかな日差しが降り注ぐ、午後の2時過ぎ。俺達は、二人きりで――厳密にはウチが用意した護衛2人を従え、アンゼサールの街を並んで歩いている。
 今日の仕事は、デート。この街にいる衆人に、リナとの『良い関係』を認識させることが目的だ。

「はい、エリックさん。すっごく楽しいです……っ」

 右隣にいるリナは顔を綻ばせ、大事そうに買い物袋を抱き締める。
 大好きな人と一緒で、しかも気に入った服を買ってもらえた。そんな二つの出来事が嬉しくてたまらなく、さっき店を出た時から更に機嫌が良くなっている。

((ふっ。チョロいな))

 適当に甘い言葉をかけて、適当に高価なものを与えていれば喜ぶ。リウ以外の女は極めて単純な、操り人形同然の生き物だ。
 残念ながら、コイツを処分するまで最愛の人とデートはできないが――。間抜けにコントロールされる様を眺めて、溜飲を下げるとしよう。

「リナ。今日は一か月に一回の、買い物デートだ。欲しい物があればなんでも、遠慮なく言ってね」
「そんなっ。可愛いお洋服をいただきましたし、お昼ご飯もご馳走になりました。もう結構ですよ……っ」
「君にプレゼントをする事も、俺の楽しみの一つなんだ。この心を満足させる為にも、何か受け取って欲しいな」

 いつものように心ない言葉を、今回は少しだけ大きめに発する。そうすれば、

『見て見てっ。ミオファ様とサーハル様よっ。今の、聞いた?』
『聞いた聞いたっ。いいなぁ』
『サーハル様、愛されてるわね~っ。アタシもあんな、カッコよくて彼女想いの人が欲しいな~』

 近くを通行していた女共がヒソヒソ話を始め、黄色い声が上がる。
 俺にとってリナが最愛の人だと思わせておけば、消した際に疑われはしない。本来これはリウへ贈りたい台詞なのだが、今は我慢をして吐いておく。

「うーん、プレゼントは何がいいかなぁ? 服は見たから、何か別の物を――そうだっ。ネックレスをプレゼントしよう」

 首を傾けていた俺は小さく手を叩き、事前に用意していた言葉を出す。

「四日後には、ワーズ公爵主催のパーティーがある。先日いつもつけていたものが壊れたと言っていたから、新しい物を買わせてもらうよ」
「い、いえっ。そんな――」
「もちろん美貌で君に敵う者はいないけれど、生憎と社交界では『飾り』も加味されてしまう。そんな理由で下に見られるのは悔しくて、俺のためにも買わせてよ。ね?」
「エリックさん……。分かりました、です」

 リナは頬をピンク色に染め、コクリと頷く。
 ふふっ、想像通りの反応だ。ウチの操り人形は、本当に操りやすいな。

「そうと決まれば、アクセサリーショップに入ろう。この先に『ミューズ』という良いお店があるから、そこを覗いてみようか」
「はい。そうですね」

 近くに『アクシー』という名店があるが、そこはリウが大好きな店――いつか二人で一緒に買い物をしようと約束をしている店で、先にこんなヤツと一緒に入りたくない。それにそこでは先日購入したばかりで、何かと面倒なことになりかねないからな。
 あれこれ理由をつけて、アクシーはスルーしよう。

((そもそもそこは、コイツが興味を示さないラグジュアリー系を取り扱う店。言い訳をしなくても、入ろうとはしないだろうが――))
「ぁ。このお店、素敵ですね。エリックさん、こちらに入ってみたいです」

 念のために理由付けをしようとしていたら、リナの視線がアクシーに注がれた。
 な……。うそ、だろ……?

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