私を利用するための婚約だと気付いたので、別れるまでチクチク攻撃することにしました

柚木ゆず

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第5話 悪口と陰口、それは墓穴のはじまり エリック視点 (1)

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「ハッキリ言って、昨日は最悪の日だったよ。いつもにも増して不愉快な時間で、よかった事と言えばぬか喜びする姿が見れたことぐらいだ」

 魔のデート仕事があった、次の日。今夜は人目を忍んでリウの部屋を訪れていて、寛いだあと俺はバカ女の話をしていた。
 いつもは愛する人の前でこんな話題は出さないが、前日は本当に酷かった。貶さないとやってられない。
 幸いリウもアイツに対する悪口は大歓迎で、会話の花の一つとしてドンドン喋っていく。

「まずは、朝。迎えに行ったら弾けるような笑顔を浮かべて、『楽しみで昨夜はあまり眠れませんでした……っ』って言ったんだよ。笑えるよね?」
「心待ちにしていたものは、嘘だらけ。そんな事も知らずに待ちわびているのは、滑稽ですわよね」
「そうそうっ。でね! 現地に着いてショッピングを始めて、最初に入った店でも愉快だったんだよ」

 リウが淹れてくれた美味しい紅茶で口内を潤し、ソファーに座り直して続ける。

「何回も試着をして、いちいち『どうですか?』『似合っていますか?』って聞いてくるんだよ。緊張しながら」
「相思相愛と思い込んでるんですから、必然ですわよね。それでエリックは、どう答えたんですの?」
「とっても似合ってる、これが一番だよ。天使が舞い降りたみたいだ! って返したよ。更に十四回、試着させたあとにね」
「十四って。遊んだら可哀想ですわよっ」

 リウはプッと噴き出し、お腹を抱えて大笑い。たっぷり笑ったあとは人差し指で目尻を拭(ぬぐ)い、笑いが起因の涙を拭いた。

「あの女の服なんて、どうでもいいのに……っ。絶対に、途中から面白くなってますわよね? どうせ、自動着せ替え人形とか思ってたんでしょう?」
「さすが俺のリウ、大正解だよ。アレの表情を見るのが別の意味で楽しくなっちゃって、飽きるまでやらせちゃったよ」

 このあとランチの予約を入れていなかったら、もう少し粘っていた。そのくらい、あの姿は滑稽だったな。

「それで次は、昼食。いつものように食事中に何度も俺を見てきて、目が合うとニッコリはにかむんだよ」
「また出ましたわね。こちらは…………」
「自動はにかみ人形。だよ」
「そうそう、そうでしたわ。昨日の貴方は、それに対してどう反応しましたの?」
「今回は俺も頻繁に見るようにして、そうしたらさっ! アイツは見られてたらすぐ目を合わせないといけないと思ったみたいで、そわそわして俺の視線を気にするようになったんだよ。その結果小まめに確認をしすぎて、途中からは全く料理に集中できていませんでした」
「ぶぷっ! 貴方、意地が悪いですわっ! 純情を弄んではいけませんわよっ!」

 今度は噴き出した後、両足を小さくバタつかせながら大笑い。2回目の大笑いは涙の量が多く、白のハンカチで左右の目を3回も拭った。

「昨日は……っ。いつにも増して、面白いですわね……っ。他には、何がありましたの……っ?」
「残念ながら、ここからは不愉快ばかりだったよ。もう一着服を買ってやった時はまあ面白かったけど、その次が最悪。衆人を意識してネックレスを買うようにしたんだけどさ、これが苦労と苛立ちの始まりだったんだ」
「あの女が貴方をそうさせるなんて、珍しいですわよね。何があったんですの?」
「操り人形が生意気に、意思を持ったんだよ。こっちはミューズで買おうと誘導してるのに、途中にあるアクシ――ぁっ!」

 しまった。アクシーの件は、リウに内緒だった!!
 だ、大丈夫だよな? まだ途中だったから、怪しまれてはいないよな?

「アクシー? 今、アクシーと言いかけましたの?」

 目だけを動かして恐る恐る確認してみると、正面にあった表情がすっかり変わっていた。
 参ったぞ……。あのバカ女のせいで、ピンチだ……。

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