12 / 41
第5話 悪口と陰口、それは墓穴のはじまり エリック視点 (2)
しおりを挟む
「もしかして、アクシーに入りましたの? わたくしより先に、あの女と二人で?」
さっきまでの笑い顔は鳴りを潜め、冷たさを覚える目が見据えてくる。
マズイな……。どうにかして否定しないと、この上なく面倒な事になってしまうぞ……っ。
「ちっ、違うんだよリウっ。違うんだっ!」
とりあえず即否定をして、首を振りながら考える。
どう言い訳すればいい? どうすれば…………。どうすれば………………。
「あのねっ! アクシーに入ろうとして、焦った。必死に止めたから周りに変な目で見られて大変だったっ。そう伝えようとしていたんだよっっ」
「………………ふーん。だったらどうして、『あっ』と焦ったんですの?」
「そ、それは……。その……」
ぐ。
その理由は……。理由は…………。理由は………………。
「君と俺にとってアクシーは特別で、名前を出す事さえも君が嫌がるかもと気付いたんだ。そのため大急ぎでやめようとして、ああなってしまったんだよっ」
「……………………」
「ほっ、本当だよっ? 作り話じゃないからねっ?」
「……………………」
「だっ、だったら明日、証拠を見せに来るよっ。俺は必ず領収書などを保管する男だと知ってるよね? 昨日ミューズで購入した領収書がちゃんとあるから、それをここに持ってくるよっ! 君に見せに来るよっっ! この国の領収書にはお金を支払った日時まで記されていて、その前の洋服店のものと並べたら、どこにも寄り道していないと証明できるよねっ?」
ミューズの店長に金を積んで領収書を偽装させたら、日付や時間はいくらでも操作できる。
偽装は違法なためリスキーで、リウもここまでするとは思わないだろう。納得、してくれるよな……?
「………………分かりましたわ。持ってきたものが言葉通りだったのなら、貴方を信用しますわ」
よ、よかった……っ。これでどうにか、関係の悪化は阻止できたぞ……っっ。
「ありがとう、リウ。人気(ひとけ)が多い時間は露見しかねないから、様子を見計らって夜に来るよ」
「ええ、そうしてくださいな。……もしも嘘を吐いてたら、許しませんからね?」
「君を裏切る真似は、しないよ。明日を楽しみにしていてください」
そうして俺は窮地を乗り越え、次の日に偽装した領収書を見せて彼女は納得。念には念をで200万もの口止め料を渡す羽目になってしまったものの、無事騙し通すことに成功したのだった。
…………ふぅ。これでようやく、忌まわしきネックレス騒動に終止符を打てたぞ。
さっきまでの笑い顔は鳴りを潜め、冷たさを覚える目が見据えてくる。
マズイな……。どうにかして否定しないと、この上なく面倒な事になってしまうぞ……っ。
「ちっ、違うんだよリウっ。違うんだっ!」
とりあえず即否定をして、首を振りながら考える。
どう言い訳すればいい? どうすれば…………。どうすれば………………。
「あのねっ! アクシーに入ろうとして、焦った。必死に止めたから周りに変な目で見られて大変だったっ。そう伝えようとしていたんだよっっ」
「………………ふーん。だったらどうして、『あっ』と焦ったんですの?」
「そ、それは……。その……」
ぐ。
その理由は……。理由は…………。理由は………………。
「君と俺にとってアクシーは特別で、名前を出す事さえも君が嫌がるかもと気付いたんだ。そのため大急ぎでやめようとして、ああなってしまったんだよっ」
「……………………」
「ほっ、本当だよっ? 作り話じゃないからねっ?」
「……………………」
「だっ、だったら明日、証拠を見せに来るよっ。俺は必ず領収書などを保管する男だと知ってるよね? 昨日ミューズで購入した領収書がちゃんとあるから、それをここに持ってくるよっ! 君に見せに来るよっっ! この国の領収書にはお金を支払った日時まで記されていて、その前の洋服店のものと並べたら、どこにも寄り道していないと証明できるよねっ?」
ミューズの店長に金を積んで領収書を偽装させたら、日付や時間はいくらでも操作できる。
偽装は違法なためリスキーで、リウもここまでするとは思わないだろう。納得、してくれるよな……?
「………………分かりましたわ。持ってきたものが言葉通りだったのなら、貴方を信用しますわ」
よ、よかった……っ。これでどうにか、関係の悪化は阻止できたぞ……っっ。
「ありがとう、リウ。人気(ひとけ)が多い時間は露見しかねないから、様子を見計らって夜に来るよ」
「ええ、そうしてくださいな。……もしも嘘を吐いてたら、許しませんからね?」
「君を裏切る真似は、しないよ。明日を楽しみにしていてください」
そうして俺は窮地を乗り越え、次の日に偽装した領収書を見せて彼女は納得。念には念をで200万もの口止め料を渡す羽目になってしまったものの、無事騙し通すことに成功したのだった。
…………ふぅ。これでようやく、忌まわしきネックレス騒動に終止符を打てたぞ。
16
あなたにおすすめの小説
敗戦国の元王子へ 〜私を追放したせいで貴国は我が帝国に負けました。私はもう「敵国の皇后」ですので、頭が高いのではないでしょうか?〜
六角
恋愛
「可愛げがないから婚約破棄だ」 王国の公爵令嬢コーデリアは、その有能さゆえに「鉄の女」と疎まれ、無邪気な聖女を選んだ王太子によって国外追放された。
極寒の国境で凍える彼女を拾ったのは、敵対する帝国の「氷の皇帝」ジークハルト。 「私が求めていたのは、その頭脳だ」 皇帝は彼女の才能を高く評価し、なんと皇后として迎え入れた!
コーデリアは得意の「物流管理」と「実務能力」で帝国を黄金時代へと導き、氷の皇帝から極上の溺愛を受けることに。 一方、彼女を失った王国はインフラが崩壊し、経済が破綻。焦った元婚約者は戦争を仕掛けてくるが、コーデリアの完璧な策の前に為す術なく敗北する。
和平交渉の席、泥まみれで土下座する元王子に対し、美しき皇后は冷ややかに言い放つ。 「頭が高いのではないでしょうか? 私はもう、貴国を支配する帝国の皇后ですので」
これは、捨てられた有能令嬢が、最強のパートナーと共に元祖国を「実務」で叩き潰し、世界一幸せになるまでの爽快な大逆転劇。
姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
『婚約破棄された令嬢、白い結婚で第二の人生始めます ~王太子ざまぁはご褒美です~』
鷹 綾
恋愛
「完璧すぎて可愛げがないから、婚約破棄する」――
王太子アルヴィスから突然告げられた、理不尽な言葉。
令嬢リオネッタは涙を流す……フリをして、内心ではこう叫んでいた。
(やった……! これで自由だわーーーッ!!)
実家では役立たずと罵られ、社交界では張り付いた笑顔を求められる毎日。
だけど婚約破棄された今、もう誰にも縛られない!
そんな彼女に手を差し伸べたのは、隣国の若き伯爵家――
「干渉なし・自由尊重・離縁もOK」の白い結婚を提案してくれた、令息クリスだった。
温かな屋敷、美味しいご飯、優しい人々。
自由な生活を満喫していたリオネッタだったが、
王都では元婚約者の評判がガタ落ち、ざまぁの嵐が吹き荒れる!?
さらに、“形式だけ”だったはずの婚約が、
次第に甘く優しいものへと変わっていって――?
「私はもう、王家とは関わりません」
凛と立つ令嬢が手に入れたのは、自由と愛と、真の幸福。
婚約破棄が人生の転機!? ざまぁ×溺愛×白い結婚から始まる、爽快ラブファンタジー!
---
悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~
咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」
卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。
しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。
「これで好きな料理が作れる!」
ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。
冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!?
レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。
「君の料理なしでは生きられない」
「一生そばにいてくれ」
と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……?
一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです!
美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!
居候と婚約者が手を組んでいた!
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!
って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!
父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。
アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。
最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。
虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……
くわっと
恋愛
21.05.23完結
ーー
「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」
差し伸べられた手をするりとかわす。
これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。
決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。
彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。
だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。
地位も名誉も権力も。
武力も知力も財力も。
全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。
月並みに好きな自分が、ただただみっともない。
けれど、それでも。
一緒にいられるならば。
婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。
それだけで良かった。
少なくとも、その時は。
婚約破棄させたいですか? いやいや、私は愛されていますので、無理ですね。
百谷シカ
恋愛
私はリュシアン伯爵令嬢ヴィクトリヤ・ブリノヴァ。
半年前にエクトル伯爵令息ウスターシュ・マラチエと婚約した。
のだけど、ちょっと問題が……
「まあまあ、ヴィクトリヤ! 黄色のドレスなんて着るの!?」
「おかしいわよね、お母様!」
「黄色なんて駄目よ。ドレスはやっぱり菫色!」
「本当にこんな変わった方が婚約者なんて、ウスターシュもがっかりね!」
という具合に、めんどくさい家族が。
「本当にすまない、ヴィクトリヤ。君に迷惑はかけないように言うよ」
「よく、言い聞かせてね」
私たちは気が合うし、仲もいいんだけど……
「ウスターシュを洗脳したわね! 絶対に結婚はさせないわよ!!」
この婚約、どうなっちゃうの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる