私を利用するための婚約だと気付いたので、別れるまでチクチク攻撃することにしました

柚木ゆず

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第12話 再会と、その先にあるもの リナ視点 (3)

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「私は実態を見抜けず、お父様とお母様が愛した葡萄畑に危険を及ぼしかけていました。ちゃんとした目を持っていない今の私は、レオ様に相応しくありません」

 エリックさん達は狡猾で、綻びが生まれるまでは完璧に近い行動を取っていました。
 ですがそれでも、ずっと間近で居たのなら見破ることができたはず。告白の言葉や日頃の態度に、愛がないと気が付けたはずです。
 それに――。
 私はいずれ葡萄畑と製造所の責任者となるのですが、今はまだまだ未熟。現責任者であるお父様の、足元にも及びません。

 こんな方からの告白はとても嬉しくって、もっと関わらせてもらいたい気持ちはあります。

 けれど今の私は、この方――自分を厳しく磨き上げた人の隣に立つ資格、権利なんてないのです。

「ですので、レオ様。一つ、お願いをしても構いませんか?」
「うん、いいよ。なにかな?」
「私が、貴方に相応しい人間になった時。もしも貴方がまだ、私を一番に想ってくださっていたなら。その時は私から申し込んで、結婚を前提としたお付き合いをしてくださいませんか?」
「勿論。そのお願いを受け取って、ずっと待っているよ」

 それは、即答。言下、爽やかな声が返ってきました。

「僕は十二年間、リナちゃんに一途だったんだ。今更他の誰かに好意が移る事なんて、絶対にないからね」
「……レオ様……っ。ありがとう、ございます……っ」
「こちらこそ、真剣に向き合ってくれてありがとう。リナちゃんらしい返事で、ますます君を好きになったよ」

 レオ様は立ち上がりつつ頬を緩め、右手を動かそうとしていたら――。左方向から、大笑いが聞こえてきました。

「ユーゴよっ、実にこやつららしいやり取りだったな! こそばゆく痛快だっ」
「ええ、全くです。レオ様とリナらしい、一幕でしたね」

 閣下はお腹を抱えて笑っていて、お父様はその隣で密かにニヤニヤっとしています。
 ……そういえばこの場には、他にも人がいたんですよね……。つい忘れてしまっていて、なんだか急に恥ずかしくなってきました。

「おっと、すまんすまん。つい大きな声で笑ってしまった。よい空気を壊してしまってすまなかったな」

 私の赤面を見た閣下は目尻を擦り、「ちょっとしたお詫びをするとしよう」と続けました。
 お詫び? なんなのでしょうか……?

「このあとレオには予定が入っているのだが、その仕事はわたしが処理しよう。今日は二人でゆっくり過ごすといい」
「募る話もあるでしょうし、それがよろしいですね。ああ、そういえば急ぎの用事があった。わたしも閣下と共に、この場を去るとしようかな」

 グエールズ閣下とお父様は揃って扉の向こうへと消え、この部屋には私達2人だけとなりました。
 閣下、ありがとうございます。そのお詫びは『ちょっとした』ではなく『素敵な』で、とても嬉しいです。

「レオ様。御言葉に甘えて、ここでお話をしましょう」
「そうだね、あの時のように楽しくお喋りをしよう。でもその前に、さっきやろうとした事をするね」

 レオ様は軽く咳払いをして、小指を差し出しました。
 大笑いで止まってしまいましたが、先ほど右手を動かしかけていました。あの手は、こうなる予定だったのですね。

「他国には『指切り』という風習があって、大事な約束をする時は小指と小指を絡め合うんだ。……リナちゃん。僕は改めて、君を待ち続けると約束するよ」
「はい、ありがとうございます。……レオ様。私は改めて、レオ様に相応しい人間になると約束しますね」

 出された指に指を添え、優しく静かに絡め合う。
 そうして一緒に約束した私達はクスっと笑い合い、揃ってカーペットに座って――。あの日と全く同じ形で、あの日のように仲良く楽しくお喋りを始めたのでした。

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