私を利用するための婚約だと気付いたので、別れるまでチクチク攻撃することにしました

柚木ゆず

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番外編

その1 太っちょレオが変わった日(1)

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「レオよ。出掛ける前に、伝えておかなければならない事があるのだ」

 サーハル邸でひと騒動あった日から、9日後のお昼。リナに改めてお詫びとお礼を伝えに行こうとしていたら、父親マティスに呼び止められました。

「お父様……? なんでしょうか……?」
「………………」
「おとう、様?」

 口籠るなんて、珍しい。どうしたのかな?
 レオが不思議そうに目をパチクリさせていると、マティスはゆっくりと膝を曲げて――。レオに目線を合わせ、彼の右肩にそっと手を載せました。

「これから伝える事は、お前が原因ではない。全ての責任は、わたしにあるのだ。それを忘れずに、聞いてくれ」
「は、はい……。なん、ですか……?」
「…………リナ・サーハル。彼女は、性格が変化しているようなのだ」

 一家全員参加の食事会などなど、ここ最近はレオも多忙だった。そのため一先ず使者に改めての謝罪などを頼んでいたら、

『すでにあの明るさ活発さはなく、別人のように落ち着いていた』

 そのような報告が、入ってきた。
 マティスは引き続きゆっくりと、落ち着いた声調で説明をしました。

「あの行動は間違いなく素晴らしいものだったが、悪しき者の前では周囲に大きな被害をもたらすものとなってしまう。あの家にはブドウ畑など特別なものもあり、尚更その手の行為を利用されかねないのだ。……あの子はそういう人間・・・・・・故に、そのように決めたのだろう」
「……………………………………」
「レオ、繰り返すぞ。この非は、わたしにある。あの者達の教育を間違え、その場で彼女の善行を完全に肯定できず、悪しき者の跋扈を許している、このわたしに責任があるのだ」
「……………………………………」
「お主は、被害者なのだ。このあと彼女に会っても、決して自分を責めるでない――」
「違う……。僕が、悪いんです……。僕があんなに泣いて、何も言えなかったせいで……。リナちゃんは……っ。そうなっちゃったんだ……っ」

 レオの瞳から、涙が零れるようになります。
 その量はあっという間に、ポロポロからボロボロに。顔中涙まみれになって、頭を抱えました。

「僕が、『泣き虫レオ』だから……っ。ちっとも勇気がないから……っっ。リナちゃんが突き飛ばされても、何もできないくらい弱虫だから……っっっ。こんなことに…………なっちゃったんだ……っっっっ」
「レオ……。あのな、お前は――」
「僕は、お世話になりっぱなしで……。助けてくれた人を……大好きになった人を……守れなかった……。大変なことを、しちゃった……。どう、しよう……っ。どうしたらいいの……!?」

 あの日の出来事が蘇って、消えて。また蘇って、また消えて。
 どんなに戻りたいと願っても、叶わなくて。
 レオの頭の中は、パニック寸前。

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 自分でも、何をしたいのか分からない。何のためにそうしているのか、分からない。
 気が付くと彼は無意識的に叫びながら走り出していて、マティスの声も制止も意味はありませんでした。レオはそのまま自室に駆け込んで鍵をかけ、ベッドにある掛け布団キルトをすっぽりとかぶって丸まりました。

「うわああああああああああああああああああああああああっ!! うわあああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」

 叫んで、泣いて。叫んで、泣いて。
 後悔をして。
 叫んで、泣いて。叫んで、泣いて。
 後悔をして。

 ずっと、その繰り返し。

「うわああああああああああああああああああああああああっ!! うわあああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」

 何度ドアが叩かれても、叫んで、泣いて、後悔をして。
 そんな時間が、1時間は流れたでしょうか。
 涙が枯れるまで涙したレオは疲れ果てて眠ってしまい、その際に、とある夢を見るのでした。


 それは、太っちょレオを変える夢――。

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