困った時だけ泣き付いてくるのは、やめていただけますか?

柚木ゆず

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第10話 当主がいない理由 イブライム視点(9)

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「いっ、一体どこだ!? 俺達はどこで住むんだ!? 教えてくれ!!」
「そちらは、今は秘密です。新たな生活の場には、貴方がたの全ての作業が終わり次第案内させていただきます。どうぞお楽しみに」
「楽しみにできるはずがないだ――はずがないでしょう! おっ、教えてください! 回避できないならっ、せめて心構えだけでもさせてください!」
「そちらも、お断りします。……僕にはこの後、この場でやらなければならないことがあるのですよ。これ以上アンをお待たせするわけにもいきませんし、そろそろお別れの時間ですよ」

 そう告げ、エリオッツが「お願いします」と続ける。そうすれば――っっ! 部屋に大男が6人入って来て、俺達を拘束した。

「この方々は父の陰、先述した監視役。これより貴方がたはハーニエル邸へと引き返し、先ほど指示した内容で動いていただきます。可能な限り短時間で済ませたいために激務となりますが、よろしくお願い致します」
「まっ、待ってくれ! 教えてくれ! おしえ――ぁああああああああ!」

 まだ喋っている途中なのに……。俺達は引っ張られ、ずるずると引きずられていく。

「ぁ、ぁぁぁぁ……」
「ぁぁぁぁあ……」
「ぁぁぁぁぁ……」

 男達は力が強く振りほどけないし、振りほどけたとしても敵対貴族への漏えいがあるから逃げられない。
 なので俺達は、抵抗できなくて……。
 屋敷から連れ出され……。馬車に押し込まれて……。馬車は無情に走り出して――

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