わたしとの約束を守るために留学をしていた幼馴染が、知らない女性を連れて戻ってきました

柚木ゆず

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第16話 そこに居る理由~再び起きた、突然~ ミシェル・ラワトルス視点

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「ごめんなさい、フィリベールより好きな人が出来てしまったの。婚約を解消して頂戴」

 わたくしは死ぬまで、ううん。肉体が滅びようとも『わたくし』という自我がある限り、フィリベールが『一番』なのだと思っていた。でもあの夜、出逢ってしまったの。
 真の運命の相手と――ミゾエルエ伯爵令息・ゾルジュ様と。

((まあ、なんて素敵なのかしら……!!))

 つい先日まで3年間隣国『ダーナズ』に留学されていたゾルジュ様は、魅力の宝箱。
 たてがみのような雄々しいツンツンとした金髪。気の強そうなブルーのツリ目。ピンとしたお鼻。野性味あふれる犬歯が覗くお口。たくましい筋肉。190センチ越えの高身長。ライオンのような男らしい雰囲気。自信たっぷりの振る舞い。
 そんなお姿を夜会で目にした瞬間ビビビビビっと来て、わたくしはすぐにお声をかけた。そうしたら――まあ! まあまあ!

「オレも、君に目を奪われていたんだよ」

 ゾルジュ様もわたくしに感じるものがあって、おんなじ気持ちの持ち主なのだからあっという間に意気投合する。
 だ・か・ら、そうなるのは必然ですわよね。
 わたくしの中にあった『LOVE』はフィリベールからゾルジュ様へと移動して、すぐお父様に相談。お願いをしたら婚約を白紙にしてくださることになって、無事フィリベールと別れてゾルジュ様と一緒になれるようになりましたの!

「ゾルジュ様。ず~っと、死ぬまで一緒に居ましょうね。死んだ後も、お墓の中で一緒に過ごしましょうね!」
「ああ。ずっと一緒だ。生きている間も死んでからも、お前だけを見るさ!」
「その約束、ぜ~ったいに破らないでくださいね?」
「当たり前だ! 愛しているよ、ミシェル!」

 法律上すぐ婚約はできないし、世間体があるから交際を公表できない。だから魅力的なゾルジュ様に女性が近づいてくる可能性があった。なのに今までのように、虫が寄って来ないように傍で目を光らせることもできなかった。
 だから不安だったけど、ゾルジュ様は正直者でブレなかった。だからだからとっても幸せで、こんな時間は続くと思っていたのだけれど――

((え!? フィリベールっ!?))

 ゾルジュ様とお出かけした際に偶然、馬車に乗り込むフィリベールを目撃する。そんな出来事によって、わたくしの恋の物語は転機を迎えることになるのでした。

((すごく、キラキラしてる……。あの頃以上に、格好よくなっている……))

 しばらく見ない間にフィリベールは、別人になっていた。前が100点だとしたら、150――ううん、200点になっていたの!

((…………フィリベール、いい。やっぱりフィリベールが一番だわ!))

 フィリベールフィリベールフィリベールフィリベールフィリベールフィリベールフィリベール――。
 ゾルジュ様一色だった頭の中は瞬く間にフィリベールで染まり、わたくしはすぐに動き出した。

「ごめんなさいゾルジュ様、フィリベールとヨリを戻したいと思っていますの」
「えっ!? そうなのかい!! とても悲しいことだけど愛するミシェルの意思を尊重するよっ! 全力で応援する!!」

 さすがはゾルジュ様。相思相愛だったからなかなか諦めないと思っていたけどあっさり認めてくれて、わたくしはフリーの状態となった。
 なのですぐさま、レイオズン邸へと馬車を走らせ――

「え!? レイオズン家の馬車が前を通っていった!? ……フィリベールの匂いがしますわ。追いかけなさい!」

 ――そんな乙女の勘は、大正解。追いかけた先でフィリベールの姿を発見して――

「フィリベール! お久しぶりですわ! 貴男にお話がありますの!」

 ――関係を戻すために、走り寄ったのでした!


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