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第15話 幼馴染2人のその後~リュクレースの場合・その5~ リュクレース視点(2)
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「……綺麗……。緑と星の世界、ですね……!」
「ええ、そうなんですよ。美しい景色ですよね」
あのあとわたし達が向かったのは、お屋敷から馬車で40数分のところにある『エジュトーンの森』。そちらでわたしは木々の間から見える夜空を見上げていて、その幻想的な光景に心を奪われていました。
『有名なスポットではないのですが、幼い頃から好きな場所があるんです。僕はとても綺麗と思っていましてね、是非お見せしたいのですよ』
そう仰られていたように、こちらの場所――この景色の評判は、今まで耳にしたことがありませんでした。
ですが、同じく仰る通り。有名でないのがおかしいと感じるほどに、魅せられる光景が広がっていました。
「ちょうど今、この時期だと午後7時半頃が、僕の中でベストなんです。明るすぎても暗すぎても駄目。丁度いい具合に風を受けてふわりと揺れる木々が見えて、その間から夜空が覗く――。このバランスが、すごくいいんです」
「……分かる……分かります。一秒ごとに、様々な顔を見せてくれていますね」
風が吹く量や角度は常に異なりますし、空もゆっくりと動いていきます。それらが無限の組み合わせを生み、常に新鮮な景色が目に飛び込んでくるんです。
「目まぐるしい、でも落ち着いている変化。それに惹かれてこの場所と景色が好きになり、それによって知った――好きになった曲があるんですよ」
「そうなのですね……! そちらは、どんな曲なのですか?」
「作曲者は、この地方で生まれ育ったラルズ・モーランという男性。タイトルは、『フランス語で万華鏡』というものなのですよ」
ラルズ・モーラン様……。カレイドスコープ……。
曲名もそうですが、その方のお名前も初めて聞きます。
「ベルデール様のマトローシュルズ湖のようにこの景色に魅了されて、その光景とその際の感情を音にしたんです。その落とし込みは本当に素晴らしいのですが……母親がピアニストだった商人の息子で、自身も商人。生涯を通して2形態制作したものの、あくまで趣味で制作したものなので公に出たことはないのですよ」
「そう、だったのですね。納得致しました」
「作者ラルズは祖父と付き合いがあり、それが縁でウチの倉庫に楽譜が眠っていたのですよ。ココが好きになった僕に父がその存在を教えてくれて、知り、引き込まれたというわけです」
「素敵な御縁、出逢いですね。わたしも聴いてみたくなりました」
「でしたらあとで、演奏させていただきますよ。同じ感想を抱かれたリュクレース様なら、きっと気に入ってくださると思いま――」
「フィリベール! お久しぶりですわ! 貴男にお話がありますの!」
フィリベール様のお声を突如遮った、わたしの後方から響いてきた声。そんな不思議な声の主を知るために、急ぎで振り向くと――…………。
そこでは信じられない方が、頬を上気させながら立っていたのでした。
「………………ミシェル……。なぜ君がここに居るんだ……?」
「ええ、そうなんですよ。美しい景色ですよね」
あのあとわたし達が向かったのは、お屋敷から馬車で40数分のところにある『エジュトーンの森』。そちらでわたしは木々の間から見える夜空を見上げていて、その幻想的な光景に心を奪われていました。
『有名なスポットではないのですが、幼い頃から好きな場所があるんです。僕はとても綺麗と思っていましてね、是非お見せしたいのですよ』
そう仰られていたように、こちらの場所――この景色の評判は、今まで耳にしたことがありませんでした。
ですが、同じく仰る通り。有名でないのがおかしいと感じるほどに、魅せられる光景が広がっていました。
「ちょうど今、この時期だと午後7時半頃が、僕の中でベストなんです。明るすぎても暗すぎても駄目。丁度いい具合に風を受けてふわりと揺れる木々が見えて、その間から夜空が覗く――。このバランスが、すごくいいんです」
「……分かる……分かります。一秒ごとに、様々な顔を見せてくれていますね」
風が吹く量や角度は常に異なりますし、空もゆっくりと動いていきます。それらが無限の組み合わせを生み、常に新鮮な景色が目に飛び込んでくるんです。
「目まぐるしい、でも落ち着いている変化。それに惹かれてこの場所と景色が好きになり、それによって知った――好きになった曲があるんですよ」
「そうなのですね……! そちらは、どんな曲なのですか?」
「作曲者は、この地方で生まれ育ったラルズ・モーランという男性。タイトルは、『フランス語で万華鏡』というものなのですよ」
ラルズ・モーラン様……。カレイドスコープ……。
曲名もそうですが、その方のお名前も初めて聞きます。
「ベルデール様のマトローシュルズ湖のようにこの景色に魅了されて、その光景とその際の感情を音にしたんです。その落とし込みは本当に素晴らしいのですが……母親がピアニストだった商人の息子で、自身も商人。生涯を通して2形態制作したものの、あくまで趣味で制作したものなので公に出たことはないのですよ」
「そう、だったのですね。納得致しました」
「作者ラルズは祖父と付き合いがあり、それが縁でウチの倉庫に楽譜が眠っていたのですよ。ココが好きになった僕に父がその存在を教えてくれて、知り、引き込まれたというわけです」
「素敵な御縁、出逢いですね。わたしも聴いてみたくなりました」
「でしたらあとで、演奏させていただきますよ。同じ感想を抱かれたリュクレース様なら、きっと気に入ってくださると思いま――」
「フィリベール! お久しぶりですわ! 貴男にお話がありますの!」
フィリベール様のお声を突如遮った、わたしの後方から響いてきた声。そんな不思議な声の主を知るために、急ぎで振り向くと――…………。
そこでは信じられない方が、頬を上気させながら立っていたのでした。
「………………ミシェル……。なぜ君がここに居るんだ……?」
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