わたしとの約束を守るために留学をしていた幼馴染が、知らない女性を連れて戻ってきました

柚木ゆず

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第15話 幼馴染2人のその後~リュクレースの場合・その5~ リュクレース視点(1)

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「リュクレース嬢、フィリベール。演奏大成功、おめでとう!」
「リュクレースさん、フィリベール。おめでとうございます」
「リュクレース様、兄様、おめでとうございます!」
フィリベールの父テオドール様フィリベールの母エマ様フィリベールの5歳年下の弟レオン様、ありがとうございます!」
「父上、母上、レオン。ありがとうございます」

 6月12日の午後5時過ぎ。わたしはレイオズン伯爵邸にて、およそ1か月遅れの『後祝い』を行っていました。

 ――当初の予定では、公演のすぐあとに行われるはずでした――。

 ですがあの演奏でわたし達に興味を持ってくださった方が沢山いらっしゃり、あちこちから『是非演奏して欲しい』というお声をいただくようになりました。

『リュクレースちゃん、フィリーベルちゃん、こんな機会滅多にないよ。今後色んな形で役に立つだろうから、勉強しておいで』

 ですのでわたし達はあちこちの招待していただいた場で演奏を行っていて、なかなか時間が合わず本日となったのです。

「あのマリィ・セラトルフ様の前座をすることになった。フィリベールからそう聞かされた時は、本当に驚いたものだ」
「そうね、あなた」
「ボクもでした」
「でも、実際に聴いて得心したよ。実に素晴らしい演奏だった」

 テオドール様は豊かなお髭の下にあるお口を緩められ、エマ様もレオン様も大きく頷いてくださりました。

「それと、スカッとしました。だって周りの人は兄様たちの悪口ばかり言っていて、そんな人達がみんな拍手してましたからね!」
「あの音を聴いてしまうと、そうなってしまうわよね。わたくしも同じ気持ちで、評価が変わって嬉しいわ。ただ……人気がありすぎるものも、困りものよねぇ」

 様々な場所に呼んでいただけるため、その分ふたりきりで落ち着いて弾く時間は減ってしまいます。エマ様は――テオドール様もレオン様も、お優しいことにそちらを心配してくださっていました。

「父上母上、レオンも、心配はいりませんよ。その点は先生が配慮してくださっています」
「マリィ先生がスケジュールを調整してくださったり、早めに入ってふたりだけで弾ける時間を確保したりしてくださったりしていまして。今後はきちんと確保できるようになっております」

 こちらに移動する前にわざわざいらっしゃって、『広めたワタシが責任を持って調整するよ』と仰ってくださいました。ですのでこれからは、今までとさほど変わらない時間を過ごせるのですよね。
 それに――

「リュクレース様。参りましょうか」
「はい。皆様、いってまいります」

 ――今日は『明日の演奏場所』は現在地点から一緒に向かった方が都合が良いという判断になり、こちらのお屋敷で一泊させていただくことになっていまして。その影響で今夜たっぷりと『ふたりきり』で演奏することができますし、実はこれから、とても楽しみな予定があるんです。
 そちらを行うためフィリベール様と共に馬車に乗り込み、とある場所を目指したのでした。




 ――その時のわたしは……わたし達はまだ、知りませんでした――。
 その行き先で、あんなことが待っているだなんて。

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