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エピローグ 1年後 カサンドラ視点(2)
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((…………あたた、かい……))
心臓の鼓動に合わせて、ぬくもりが全身に広がってゆく。そんな、不思議な感覚が発生したのです。
((…………もしか、して……))
意識や記憶に変化はなく、わたしの中には『カサンドラ』のものしかありません。
でも、こんなことは人生で初めて。
可能性は、あります。
((い、いき、ましょう……))
期待。不安。興奮。恐怖。様々な感情を抱きながらわたしは、初めてお会いする方へと近づいていきます。
((確かあの方は……。フォサエズ伯爵家の次男、リアン様))
アンジェル経由で得たロドルフ様の情報によると、あの方は3年間隣国に留学されていたとのこと。
産まれはこの国で『手の届く範囲』で誕生していますし、年齢はわたしと同じ。条件はすべて、満たしています。
((あの方が、ルズサンド様……?))
わたしがかつて心から愛した方が、同じ空間にいる?
それとも、いない? わたしの勘違い? フォサエズ様は初めてお会いする人だから、願望がそうさせている?
引き続きプラスとマイナス両方の感情を交錯させながら近づいてゆき、
「ご、ごきげんよう」
無意識的に爪を手のひらに食い込ませてしまいながら、フォサエズ様にお声をかけました。
そうすると――
「ごきげんよう」
――フォサエズ様は品よく応じてくださり、それによって初めて、わたし達の視線が合い――
「ルズサンド」
「シーナ」
――気が付くとお互いの口から、ひとりでに大切な人の名前が零れ落ちていました。
「い、いま……。口が、勝手に……」
「え、ええ……。勝手に、動きました……。こ、これは、なんなのでしょう……?」
「……荒唐無稽なお話に感じると思いますが、どうか信じてください。貴方様とわたしは、ぜん――ぁ」
『シーナ、ごめん、よ……。約束を、守れなくて……』
『ルズサンドっ! 謝らないでください! 貴方は何も悪くありませんっ!』
『あ、ありがとう……。あ、あの、ね……』
『はっ、はい! なんですかっ!』
『この人生では、むり、だけど…………次の人生では、約束を、守りたい……。生まれ変われたら……。そのときは……。結婚、して、くれますか……?』
『もちろんです! しますっ! させてください!!』
『あり、が、とう……。ぜったい、に、生まれ、かわって……。きみを、むかえに、いく、よ…………』
また、ひとりでに――。頭の中にそんなやり取りが響いてきて、初めて見る男性のお顔がハッキリと浮かんだ瞬間でした。
頭の中で何かが弾けたような感覚が走り、気が付くとシーナの記憶が蘇っていました。
「…………すべて、思い出しました……。おもい、だせました……」
「…………僕も、だよ。すべて、思い出した。僕はかつてルズサンドという名前で、シーナという女性を愛していた」
!!
「そしてその最愛の人は、今、目の前にいる。僕には、分かる」
「わたしも、分かりますよ。最愛の人は、今、目の前にいるのだと」
もう、無意識的や『なんとなく』ではありません。
はっきりと、存在を感じ取れます。
「…………ずっと、会いたかった」
「…………ずっと、会いたかったです」
もっと一緒に居たかった。結婚して色んなことを共有したかった。
でもあの頃は、お別れしないといけなくなった。
「…………シーナ」
「…………ルズサンド」
でも。でも。
わたし達はこうして、また出会えました。
「また会えたねっ! 会えて、嬉しいよ!!」
「また会えましたねっ! 会えて、嬉しいです!!」
二度と聞けないと思っていた声。
二度と感じられないと思っていた感触。
わたし達は涙を零しながら抱き合い、五感すべてで愛する人を感じ合ったのでした――。
心臓の鼓動に合わせて、ぬくもりが全身に広がってゆく。そんな、不思議な感覚が発生したのです。
((…………もしか、して……))
意識や記憶に変化はなく、わたしの中には『カサンドラ』のものしかありません。
でも、こんなことは人生で初めて。
可能性は、あります。
((い、いき、ましょう……))
期待。不安。興奮。恐怖。様々な感情を抱きながらわたしは、初めてお会いする方へと近づいていきます。
((確かあの方は……。フォサエズ伯爵家の次男、リアン様))
アンジェル経由で得たロドルフ様の情報によると、あの方は3年間隣国に留学されていたとのこと。
産まれはこの国で『手の届く範囲』で誕生していますし、年齢はわたしと同じ。条件はすべて、満たしています。
((あの方が、ルズサンド様……?))
わたしがかつて心から愛した方が、同じ空間にいる?
それとも、いない? わたしの勘違い? フォサエズ様は初めてお会いする人だから、願望がそうさせている?
引き続きプラスとマイナス両方の感情を交錯させながら近づいてゆき、
「ご、ごきげんよう」
無意識的に爪を手のひらに食い込ませてしまいながら、フォサエズ様にお声をかけました。
そうすると――
「ごきげんよう」
――フォサエズ様は品よく応じてくださり、それによって初めて、わたし達の視線が合い――
「ルズサンド」
「シーナ」
――気が付くとお互いの口から、ひとりでに大切な人の名前が零れ落ちていました。
「い、いま……。口が、勝手に……」
「え、ええ……。勝手に、動きました……。こ、これは、なんなのでしょう……?」
「……荒唐無稽なお話に感じると思いますが、どうか信じてください。貴方様とわたしは、ぜん――ぁ」
『シーナ、ごめん、よ……。約束を、守れなくて……』
『ルズサンドっ! 謝らないでください! 貴方は何も悪くありませんっ!』
『あ、ありがとう……。あ、あの、ね……』
『はっ、はい! なんですかっ!』
『この人生では、むり、だけど…………次の人生では、約束を、守りたい……。生まれ変われたら……。そのときは……。結婚、して、くれますか……?』
『もちろんです! しますっ! させてください!!』
『あり、が、とう……。ぜったい、に、生まれ、かわって……。きみを、むかえに、いく、よ…………』
また、ひとりでに――。頭の中にそんなやり取りが響いてきて、初めて見る男性のお顔がハッキリと浮かんだ瞬間でした。
頭の中で何かが弾けたような感覚が走り、気が付くとシーナの記憶が蘇っていました。
「…………すべて、思い出しました……。おもい、だせました……」
「…………僕も、だよ。すべて、思い出した。僕はかつてルズサンドという名前で、シーナという女性を愛していた」
!!
「そしてその最愛の人は、今、目の前にいる。僕には、分かる」
「わたしも、分かりますよ。最愛の人は、今、目の前にいるのだと」
もう、無意識的や『なんとなく』ではありません。
はっきりと、存在を感じ取れます。
「…………ずっと、会いたかった」
「…………ずっと、会いたかったです」
もっと一緒に居たかった。結婚して色んなことを共有したかった。
でもあの頃は、お別れしないといけなくなった。
「…………シーナ」
「…………ルズサンド」
でも。でも。
わたし達はこうして、また出会えました。
「また会えたねっ! 会えて、嬉しいよ!!」
「また会えましたねっ! 会えて、嬉しいです!!」
二度と聞けないと思っていた声。
二度と感じられないと思っていた感触。
わたし達は涙を零しながら抱き合い、五感すべてで愛する人を感じ合ったのでした――。
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