隣にある古い空き家に引っ越してきた人達は、10年前に縁を切った家族でした

柚木ゆず

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第5話 その結果は 俯瞰視点(1)

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「軌道に乗ったらもうこっちのものだ。我々の勝利、あちらの敗北は確定的だ」

 帰宅してすぐ。ターズンは大口を開けて笑いました。

 〇〇

「お父様」
「なんだ、ネフール?」
「それなりに時間が経つのに、変化がありませんわ。本当に効きますの?」
「当たり前だろう。まったく、お前はまだまだ子どもだな」
「???」
「噂というのは不思議なもの。一切の根拠がなくても、時間に比例して勝手に信憑性が増していくのだよ」
「火のないところに煙は立たない、そんな心理が働くのでしょうね。安心しなさい、ネフール。1週間もすれば――あと4日もすれば、変化が見えるようになるわよ」

 作戦が動き出して3日後。眉を顰めるフルールに、ターズンとレーラはニヤリと口元を緩めてみせました。

 〇〇

「今日で、一週間になりましたわ。そろそろ、かしら?」
「私の経験だと、頃合いだろうな。どれ、確認してみるか」
「確認……? どうやって……?」
「街を適当に歩いて、さり気なく『ホライリース』への印象を聞いて見るのだよ」
「なるほど!」
「無論まだ全員が全員ではないが、そうだな、このタイミングでも3割近くは変化し始めているだろう。10人当たれば3人は、くだんの噂に触れる。楽しみにしているといい」

 作戦が動き出して7日後。今日は一週間に一度だけある完全休日のため、3人は直接効果を確かめるべく自宅を後にしたのでした。
 貴族時代に成功例があるが故に、特にターズンは自信満々で歩を進め――4時間後。3人は調査を終えて家に戻ってきました。

「…………どうなっているのだ!?」
「…………どうなっているの!?」
「…………どうなっているんですの!?」

 家に入ったターズン達の表情は、出発時とは真逆。全員の顔が、動揺と怒りで染まっていました。
 なぜ180度異なる状態になっているのかというと、その理由は街の人々の反応にありました。

「ホライリース? とっても素敵なお店ですね。いつか伺ってみたいです」

「オーナーシェフのガスパールさん? 素晴らしい経営者であり料理人だと思います」

「??? いえ、悪い印象は抱いておりませんわよ?」

「ワシは前から予約していて、明日がようやくその時なんですよ。楽しみで仕方がないですなぁ」

 というように、世間の評判印象にまったく変化はなし。声をかけた人全員が引き続き絶賛しており、悪く言う人間は一人もいなかったのです。


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