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第14話 いざ 真鈴視点(1)
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「わたしのために、わざわざありがとうございます。よかったら、どうぞ」
「えっ? ありがとうございますっ」
「ありがとうございます」
次の日の夜6時過ぎ。北山さんのお家にお邪魔すると、テーブルにお茶とお菓子が置かれた。
奈々子さんは意地悪な人じゃなくて、心が深く傷ついて信じられなくなってしまっていてああなっていた。
子どもの春斗くんが信じてくれていることもあって、昨日よりは距離が縮まっている。
「水前寺くん、頂いちゃおうか」
「そうですね。奈々子さん、ありがたくいただきます」
冷たい麦茶と水ようかん。今日みたいなまだまだ暑い日にはピッタリで、ホッと一息つけた。
「美味しかったです。……穂波さん奈々子さん、お願いします」
「はい。澄香、あっちで遊んでいて頂戴ね」
「お母さんが呼ぶまで、リビングでゲームでもしていて。春斗と澄香ちゃんが好きがポテトチップスも置いてあるから」
「「はーいっ」」
これからお見せするものは、澄香ちゃんや春斗くん――小学3年生は、見ない方がいいと思う。お母さん2人にお願いをして、部屋から出てもらった。
「もう、大丈夫そうだね。奈々子さん、お待たせしました。お見せしますね」
隣に置いてある鞄を開いて、中から算数の教科書とノートを1冊ずつ取り出した。
「…………」
「「??」」
テーブルに置いた教科書をノートを見た水前寺くんは顔を歪ませて、奈々子さんと穂波さんはキョトンとした。
お昼休みに打ち合わせをした時に、水前寺くんに先に見せて詳しい話をした。コレが何なのか知っているから、不安げに私を見てくれた。
「………………」
「平気平気。昼間も言ったけど、もう過去の話。見たところであの頃に戻らないんだから、大丈夫だよ」
トラウマ、ってやつかな? この教科書とノートに触れると、勝手に嫌な汗が出てくる。真夏日の昼間に外に出てる時くらい、ぼたぼた出てくる。
それでも、終わったこと。あっちに置いてきたこと。
もう、怖くはない。
「だ、大丈夫、ですか……?」
「大丈夫、ですか……?」
「奈々子さん、穂波さん、大丈夫ですよ。私のことは気にせず、こちらをご覧ください」
お二人に苦笑いを浮かべて、教科書とノートを順番に広げる。そうしたら――
《気持ち悪》
《きもすぎ》
《近寄るな》
《学校に来るな》
《私、幽霊がみえまーす!》
《みんな~! 信じてくださいよ~!》
《ふしぎちゃんでーす!》
《芸能人デビュー、めざしてま~す!》
《元親友って子が、もう二度と関わりたくなって言ってたよ》
《気持ち悪いから、もらったプレゼント捨てたって言ってた》
《ひとりぼっちになって悲しいでしょ? 幽霊に助けてもらえば?》
《幽霊が友達になってくれるよ!》
《さあ、勇気を出して呼んでみよー!》
――ページ内に書かれた、そんな文字たちが見えるようになったのでした。
「えっ? ありがとうございますっ」
「ありがとうございます」
次の日の夜6時過ぎ。北山さんのお家にお邪魔すると、テーブルにお茶とお菓子が置かれた。
奈々子さんは意地悪な人じゃなくて、心が深く傷ついて信じられなくなってしまっていてああなっていた。
子どもの春斗くんが信じてくれていることもあって、昨日よりは距離が縮まっている。
「水前寺くん、頂いちゃおうか」
「そうですね。奈々子さん、ありがたくいただきます」
冷たい麦茶と水ようかん。今日みたいなまだまだ暑い日にはピッタリで、ホッと一息つけた。
「美味しかったです。……穂波さん奈々子さん、お願いします」
「はい。澄香、あっちで遊んでいて頂戴ね」
「お母さんが呼ぶまで、リビングでゲームでもしていて。春斗と澄香ちゃんが好きがポテトチップスも置いてあるから」
「「はーいっ」」
これからお見せするものは、澄香ちゃんや春斗くん――小学3年生は、見ない方がいいと思う。お母さん2人にお願いをして、部屋から出てもらった。
「もう、大丈夫そうだね。奈々子さん、お待たせしました。お見せしますね」
隣に置いてある鞄を開いて、中から算数の教科書とノートを1冊ずつ取り出した。
「…………」
「「??」」
テーブルに置いた教科書をノートを見た水前寺くんは顔を歪ませて、奈々子さんと穂波さんはキョトンとした。
お昼休みに打ち合わせをした時に、水前寺くんに先に見せて詳しい話をした。コレが何なのか知っているから、不安げに私を見てくれた。
「………………」
「平気平気。昼間も言ったけど、もう過去の話。見たところであの頃に戻らないんだから、大丈夫だよ」
トラウマ、ってやつかな? この教科書とノートに触れると、勝手に嫌な汗が出てくる。真夏日の昼間に外に出てる時くらい、ぼたぼた出てくる。
それでも、終わったこと。あっちに置いてきたこと。
もう、怖くはない。
「だ、大丈夫、ですか……?」
「大丈夫、ですか……?」
「奈々子さん、穂波さん、大丈夫ですよ。私のことは気にせず、こちらをご覧ください」
お二人に苦笑いを浮かべて、教科書とノートを順番に広げる。そうしたら――
《気持ち悪》
《きもすぎ》
《近寄るな》
《学校に来るな》
《私、幽霊がみえまーす!》
《みんな~! 信じてくださいよ~!》
《ふしぎちゃんでーす!》
《芸能人デビュー、めざしてま~す!》
《元親友って子が、もう二度と関わりたくなって言ってたよ》
《気持ち悪いから、もらったプレゼント捨てたって言ってた》
《ひとりぼっちになって悲しいでしょ? 幽霊に助けてもらえば?》
《幽霊が友達になってくれるよ!》
《さあ、勇気を出して呼んでみよー!》
――ページ内に書かれた、そんな文字たちが見えるようになったのでした。
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