見える私と聞こえる転校生

柚木ゆず

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最終話 私と幽霊 真鈴視点

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「お帰りなさいっ。メッセージ見たわよ~! 上手くいったみたいね」
「うん。裕介さんも奈々子さんも春斗くんも、みんな笑顔になれたよ」

 みんなとお別れして家に入ると、すぐにお母さんが走って来た。ニコニコしながら。

「よかったわねぇ、ホッとしたわ。真鈴も疲れたでしょう?」
「達成感で一杯だけど、さすがに疲れちゃった。お風呂に入って、すぐ寝ようかなって思ってる――そうだ。これ、ありがとう」

 忘れて、そのまま部屋に持って行くところだった。
 小学生の頃の教科書とノートと、書類。このために取り出していた、過去の負の記憶を返した。

「ふふ。驚いたよ」
「え? なにに?」
「この見たくもなかったものが、役に立つ時がくるだなんてね。思いもしなかったよ」

 幼い私の心をズタズタにして、それ以降もずっとズキンズキンと痛みを与え続けていた呪いのようなもの。そのおかげで誰かを救えるなんて、思わなかった。

「この教科書とかノートへの印象が変わることなんて、有り得ないって感じてた。こんなことがあるなんて、やっぱり人生って不思議。面白いよね」
「そうね。わたしも、そう思うわ」
「…………それとね、お母さん。もう一つ、変わったことがあるよ」

 こっちはソレ以上に、変わらないと思ってた。変わるはずがない、って思い続けてた。
 だけど、くるっと変わっちゃったんだよね。

「かも、じゃなかったよ」

 そのせいで親友を失ったり、居場所を失ったり、たくさん辛い目にあってきた。
 今までずっと、なかったらいいって感じてた。今すぐ消えてって、何度も願ってきた。
 確かに、私にとっては『最悪』な存在だった。
 でもね。
 ある、おかげで変わったことがあった。悪いところだけじゃなくて良いところも知れたから、こう思えるようになったんだ。


「霊感があってよかった。幽霊が見えてよかったよ」
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みんなの感想(12件)

田沢みん
2025.10.03 田沢みん

奨励賞おめでとうございます㊗️✨

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月影 流詩亜(旧 るしあん)

💐奨励賞授賞、おめでとうございます。

解除
田沢みん
2025.09.30 田沢みん

奨励賞受賞おめでとうございます㊗️
ずっと応援しています✨

解除

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