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第1話 ライバルの介入(2)
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「教科書にサラ様の指紋が付着していたのは、その際に拾っていたから。したがって指紋が検出されたイコール犯人とは、なりませんのよ」
さらりと、この場の空気を――オーディエンスの心証を一変させてしまった、アリーヌ。そんな彼女は更に、黒山の最前列にいた9人を――呼び出しの目撃者たちを、左から順に見渡しました。
「それにヘクター様が仰られていた、目撃情報。証言だけで、事実認定をされてしまうだなんて。常に学年トップ5に名を連ねる――優秀な貴方様らしくありませんわ」
「……無論彼らの証言に不自然はないか、そこをしっかりと確認していますよ。複数回個別での質疑応答を行っていて、全員の説明が一致したためそう判断しているのですよ?」
「あら、そうでしたのね。ですがやはり、貴方様らしくありませんわ。……その気になれば、そんな状況下でも簡単に証言を一致させられるんですもの」
事前に9人が聴取を想定し、しっかりと設定を作っていたら造作もないこと――。アリーヌはスラスラとそう語り、改めて9人へと視線を送りました。
「もしも何かしらの理由で団結していたら、可能。ですのでこちらも同じく、この点で犯人と断言するのは尚早なのですわ」
「……確かに、そうかもしれないね。けれど貴方様も耳にされていると思いますが、それ以外にも3つ悪事の証拠があるのですよ。これらは――」
「それらも、わたくしからしてみれば不十分ですわ。いくら集まっても犯人として見れない、そういったものですわ」
タイプライターで打たれた、サラ・ローティシアルの文章のくせが随所に出ている脅迫状。こちらはサラ様の特徴を理解していれば造作もない――。などなど。
同様にアリーヌはスラスラと『穴』を指摘し、はぁと小さくため息を吐きました。
「恐らくヘクター様は、一番初めに指紋を証拠として入手されたのでしょうね。そのため、それありきで――答えありきで、物事を見つめてしまっている印象を受けますわ」
「………………」
「ヘクター様。こちらが、『納得できない』の一つ目ですわ」
「ひとつ、め? 二つ目も、あるのですか……?」
「ええ、ありますの。そちらは、オドレイ・フレアンラ様に関するものですわ」
黒山の最前列にて引き続きプルプルと震えている、男女問わず庇護欲を掻き立てる子リスのような少女。今度はそんな彼女へと身体全体を向け、アリーヌは殊更にはっきりと響き渡る声で、こう告げたのでした。
「オドレイ様は張本人なのですから、誰よりも知っているはずですわ。なのにどうして、サラ様に教科書を拾ってもらったことを黙っていましたの?」
さらりと、この場の空気を――オーディエンスの心証を一変させてしまった、アリーヌ。そんな彼女は更に、黒山の最前列にいた9人を――呼び出しの目撃者たちを、左から順に見渡しました。
「それにヘクター様が仰られていた、目撃情報。証言だけで、事実認定をされてしまうだなんて。常に学年トップ5に名を連ねる――優秀な貴方様らしくありませんわ」
「……無論彼らの証言に不自然はないか、そこをしっかりと確認していますよ。複数回個別での質疑応答を行っていて、全員の説明が一致したためそう判断しているのですよ?」
「あら、そうでしたのね。ですがやはり、貴方様らしくありませんわ。……その気になれば、そんな状況下でも簡単に証言を一致させられるんですもの」
事前に9人が聴取を想定し、しっかりと設定を作っていたら造作もないこと――。アリーヌはスラスラとそう語り、改めて9人へと視線を送りました。
「もしも何かしらの理由で団結していたら、可能。ですのでこちらも同じく、この点で犯人と断言するのは尚早なのですわ」
「……確かに、そうかもしれないね。けれど貴方様も耳にされていると思いますが、それ以外にも3つ悪事の証拠があるのですよ。これらは――」
「それらも、わたくしからしてみれば不十分ですわ。いくら集まっても犯人として見れない、そういったものですわ」
タイプライターで打たれた、サラ・ローティシアルの文章のくせが随所に出ている脅迫状。こちらはサラ様の特徴を理解していれば造作もない――。などなど。
同様にアリーヌはスラスラと『穴』を指摘し、はぁと小さくため息を吐きました。
「恐らくヘクター様は、一番初めに指紋を証拠として入手されたのでしょうね。そのため、それありきで――答えありきで、物事を見つめてしまっている印象を受けますわ」
「………………」
「ヘクター様。こちらが、『納得できない』の一つ目ですわ」
「ひとつ、め? 二つ目も、あるのですか……?」
「ええ、ありますの。そちらは、オドレイ・フレアンラ様に関するものですわ」
黒山の最前列にて引き続きプルプルと震えている、男女問わず庇護欲を掻き立てる子リスのような少女。今度はそんな彼女へと身体全体を向け、アリーヌは殊更にはっきりと響き渡る声で、こう告げたのでした。
「オドレイ様は張本人なのですから、誰よりも知っているはずですわ。なのにどうして、サラ様に教科書を拾ってもらったことを黙っていましたの?」
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