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第1話 ライバルの介入(3)
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「目を見開き、息を呑まれる。先ほどのヘクター様の反応を見るに、ヘクター様はそちらの件を御存じではなかったと明白。どうしてそんな大事なことを、報告していないんですの?」
「そ、それは……。その――」
「それともう一つ。その際のサラ様への態度は通常と変わりなく、秘密裏に様々な嫌がらせを受けているなんて夢にも思いませんでしたわ。そんなリアクションをされていた理由も含め、わたくしに教えてくださいまし」
アリーヌは、うるうる目になっていたオドレイへと歩み寄り――意図的にオーディエンスの視線を集中させ、「速やかに」と注文を付けてグリーンの瞳を見つめました。
「ぁ、ぇと。そ、その……」
「ご自身のことなのだから、すぐに答えられるでしょう? 事が事で、わたくしは早く知りたいんですのよ。早急に説明してくださいまし」
「…………は、はい……。も、申し訳、ございません……。ビックリして、しまっていて……。す、すぐに、お伝え、します……」
肩を窄めてアタフタしていたオドレイは、両手を胸元に添えてすーはーすーはーと深呼吸。小動物のような動作で緊張を鎮めた彼女は、オドオドとアリーヌを見上げました。
「アリーヌ様がお見掛けしたのは、私ではありません。私は先日――だけではなくて今まで1度もサラ様に教科書を拾っていただいたコトはなく、なのでヘクター様にお伝えしていなかったのです」
「身長147センチほどで、ブラウンの髪をボブにした生徒。そんな方は学院内に貴方様しかいらっしゃらないのだけれど、それでもわたくしは見間違えてしまったのかしら?」
「お、仰られている通り、でして。この学院でその特徴があるのは、私しかいません。で、でもっ。本当、なんですっ。そういったコトは、起きていないんです……っ」
ふるふるふる、と。オドレイはかぶりを振って、一度ごくりと唾液を呑み込み、再びピンク色の唇が動き始めます。
「その時の態度がそのように見えなかったのは、私ではないから、です。距離? 角度? の関係で、私に見えていて……。違う方が拾ってもらっていたから、そのようになっていのだと思います」
「あら、そうでしたの。…………サラ様。オドレイ様はそう仰られていますが、貴方様の言い分も聞かせてくださいまし。二日前貴方様は、オドレイ様が落とした教科書を拾った、拾わなかった。どちらですの?」
今なお立ち上がることはおろか、喋ることすらできていない、騒動の中心人物。アリーヌは涙まみれになっている顔へと視線を見向け、そうすると否定の意を込めた首振りが返ってきました。
そしてアリーヌはそれを無言で受け止め、オドレイへと向きな――向き直っていた彼女の動きが、不意に止まります。そうしてそのブルーの瞳は沈黙を続けるヘクターを密かに見やり、そうしたあとアリーヌは――
「そ、それは……。その――」
「それともう一つ。その際のサラ様への態度は通常と変わりなく、秘密裏に様々な嫌がらせを受けているなんて夢にも思いませんでしたわ。そんなリアクションをされていた理由も含め、わたくしに教えてくださいまし」
アリーヌは、うるうる目になっていたオドレイへと歩み寄り――意図的にオーディエンスの視線を集中させ、「速やかに」と注文を付けてグリーンの瞳を見つめました。
「ぁ、ぇと。そ、その……」
「ご自身のことなのだから、すぐに答えられるでしょう? 事が事で、わたくしは早く知りたいんですのよ。早急に説明してくださいまし」
「…………は、はい……。も、申し訳、ございません……。ビックリして、しまっていて……。す、すぐに、お伝え、します……」
肩を窄めてアタフタしていたオドレイは、両手を胸元に添えてすーはーすーはーと深呼吸。小動物のような動作で緊張を鎮めた彼女は、オドオドとアリーヌを見上げました。
「アリーヌ様がお見掛けしたのは、私ではありません。私は先日――だけではなくて今まで1度もサラ様に教科書を拾っていただいたコトはなく、なのでヘクター様にお伝えしていなかったのです」
「身長147センチほどで、ブラウンの髪をボブにした生徒。そんな方は学院内に貴方様しかいらっしゃらないのだけれど、それでもわたくしは見間違えてしまったのかしら?」
「お、仰られている通り、でして。この学院でその特徴があるのは、私しかいません。で、でもっ。本当、なんですっ。そういったコトは、起きていないんです……っ」
ふるふるふる、と。オドレイはかぶりを振って、一度ごくりと唾液を呑み込み、再びピンク色の唇が動き始めます。
「その時の態度がそのように見えなかったのは、私ではないから、です。距離? 角度? の関係で、私に見えていて……。違う方が拾ってもらっていたから、そのようになっていのだと思います」
「あら、そうでしたの。…………サラ様。オドレイ様はそう仰られていますが、貴方様の言い分も聞かせてくださいまし。二日前貴方様は、オドレイ様が落とした教科書を拾った、拾わなかった。どちらですの?」
今なお立ち上がることはおろか、喋ることすらできていない、騒動の中心人物。アリーヌは涙まみれになっている顔へと視線を見向け、そうすると否定の意を込めた首振りが返ってきました。
そしてアリーヌはそれを無言で受け止め、オドレイへと向きな――向き直っていた彼女の動きが、不意に止まります。そうしてそのブルーの瞳は沈黙を続けるヘクターを密かに見やり、そうしたあとアリーヌは――
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