悪役?令嬢の矜持

柚木ゆず

文字の大きさ
6 / 41

第1話 ライバルの介入(4)

しおりを挟む
「このままでは埒があきませんわ。真実を明白にさせるために、第三者による改めての調査を実施いたしましょう」

 サラの首振りを見たあと、密かにヘクターを目視したあと。アリーヌは生徒と教師で構成されたオーディエンスを見回し、このような提案を行いました。

「わたくしは見た。オドレイ様は否定した。サラ様は肯定した。そしてヘクター様が集められた証拠は、どれも説得力に欠ける。このような状況になっているんですもの。それがベストな選択ですわ」

『『『『『……確かに……』』』』』
『『『『『そうなりますわね……』』』』』

 アリーヌの発言に、おかしな点は一切ありません。ですので衆人は一様に頷き、そうしていると豊かな髭を蓄えた老人が――ここルミフェクダ学院の学院長であるアントニン・ローベンダが、名乗りを上げました。

「ではこの件は、長であるワシが預かるとしようではないか。……全生徒、全教師諸君。この瞬間より真実が確定するまで、関係者は全員無実とする。くれぐれも陰口、迫害などは行わぬようにな」

『『『『『はっ、はい!』』』』』」

 アントニンは普段穏やかな老人ですが、この国の重鎮の一人でもあります。そのためオーディエンス達から即座に反応があり、続いて出たアントニンの「解散」という言葉によって、あっという間に黒山はなくなってしまいました。

「ではこれより関係者諸君には、ワシによる個別の質疑応答を受けてもらう。ヘクター君、サラ君、オドレイ君、アリーヌ君の順で、学院長室に来ておくれ」
「はい、はい」「…………は、はい…………」「はぃ」「承知いたしましたわ」

 日頃の言動により、アントニン自身もそうは思っていませんでしたが――。アリーヌにも、サラのために目撃情報を捏造し擁護している、という可能性がありました。
 そのためアリーヌもおよそ30分間の質疑応答を受け、『不自然が極僅かもないこと』『言い分が真っ当なこと』などを理由にアントニンの信用を獲得。疑惑がないが故に自由に動いていいと認められたあと――そんなアントニンに一つお願いをして受け入れられ、寮へと戻ったあとのことでした。

「…………さて。あの話・・・をしに行きましょうか」

 制服から私服へと着替えたアリーヌは自室である215室を後にし、312号室――サラの部屋を目指し、その扉をコンコンとノックしたのでした。

しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?

鶯埜 餡
恋愛
 バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。  今ですか?  めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?

侯爵令嬢はデビュタントで婚約破棄され報復を決意する。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 第13回恋愛小説大賞に参加しています。応援投票・応援お気に入り登録お願いします。  王太子と婚約させられていた侯爵家令嬢アルフィンは、事もあろうに社交界デビューのデビュタントで、真実の愛を見つけたという王太子から婚約破棄を言い渡された。  本来自分が主役であるはずの、一生に一度の晴れの舞台で、大恥をかかされてしまった。  自分の誇りのためにも、家の名誉のためにも、報復を誓うのであった。

【完結】謀られた令嬢は、真実の愛を知る

白雨 音
恋愛
男爵令嬢のミシェルは、十九歳。 伯爵子息ナゼールとの結婚を二月後に控えていたが、落馬し、怪我を負ってしまう。 「怪我が治っても歩く事は難しい」と聞いた伯爵家からは、婚約破棄を言い渡され、 その上、ナゼールが自分の代わりに、親友のエリーゼと結婚すると知り、打ちのめされる。 失意のミシェルに、逃げ場を与えてくれたのは、母の弟、叔父のグエンだった。 グエンの事は幼い頃から実の兄の様に慕っていたが、彼が伯爵を継いでからは疎遠になっていた。 あの頃の様に、戻れたら…、ミシェルは癒しを求め、グエンの館で世話になる事を決めた___  異世界恋愛:短編☆(全13話)  ※魔法要素はありません。 ※叔姪婚の認められた世界です。 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

婚約破棄をした相手方は知らぬところで没落して行きました

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢だったアンネリーは婚約者であり、侯爵でもあるスティーブンに真実の愛がどうたらという理由で婚約破棄されてしまった。 悲しみに暮れたアンネリーだったが、偶々、公爵令息のジョージと再会し交流を深めていく。 アンネリーがジョージと楽しく生活をしている中、真実の愛に目覚めたらしいスティーブンには様々な災厄? が降りかかることになり……まさに因果応報の事態が起きるのであった。

第一王子は男爵令嬢にご執心なようなので、国は私と第二王子にお任せください!

黒うさぎ
恋愛
公爵令嬢であるレイシアは、第一王子であるロイスの婚約者である。 しかし、ロイスはレイシアを邪険に扱うだけでなく、男爵令嬢であるメリーに入れ込んでいた。 レイシアにとって心安らぐのは、王城の庭園で第二王子であるリンドと語らう時間だけだった。 そんなある日、ついにロイスとの関係が終わりを迎える。 「レイシア、貴様との婚約を破棄する!」 第一王子は男爵令嬢にご執心なようなので、国は私と第二王子にお任せください! 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

婚約破棄からの復讐~私を捨てたことを後悔してください

satomi
恋愛
私、公爵令嬢のフィオナ=バークレイはアールディクス王国の第2王子、ルード様と婚約をしていましたが、かなりの大規模な夜会で婚約破棄を宣言されました。ルード様の母君(ご実家?)が切望しての婚約だったはずですが?その夜会で、私はキョウディッシュ王国の王太子殿下から婚約を打診されました。 私としては、婚約を破棄された時点でキズモノとなったわけで、隣国王太子殿下からの婚約話は魅力的です。さらに、王太子殿下は私がルード殿下に復讐する手助けをしてくれるようで…

婚約破棄を謝っても、許す気はありません

天宮有
恋愛
 侯爵令嬢の私カルラは、ザノーク王子に婚約破棄を言い渡されてしまう。  ザノークの親友ルドノが、成績が上の私を憎み仕組んだようだ。  私が不正をしたという嘘を信じて婚約を破棄した後、ザノークとルドノは私を虐げてくる。  それを耐えながら準備した私の反撃を受けて、ザノークは今までのことを謝ろうとしていた。

婚約破棄されてすぐに新しい婚約者ができたけど、元婚約者が反対してきます

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私ミレッサは、婚約者のウルクに罪を捏造されて婚約破棄を言い渡されてしまう。    私が無実だと友人のカインがその場で説明して――カインが私の新しい婚約者になっていた。  すぐに新しい婚約者ができたけど、元婚約者ウルクは反対してくる。  元婚約者が何を言っても、私には何も関係がなかった。

処理中です...