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第2話 来訪と理由と(2)
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「アリーヌ様が、望まれる状況……? そちらは、いったい……?」
「ソレが指しているもの。その内容は、『サラ・ローティシアルが万全の状態で学院生活を送り続ける』ですわ」
思い当たる理由がなく、ポカンとなっていたサラ。そんな彼女に届いた新たな言葉は、更にサラを困惑させてしまうものでした。
「わたしが、万全の状態で……? なぜそちらを、望まれるのでしょうか……?」
「決まっているでしょう。100%の力を発揮できる状態の貴女と、テストやダンスで勝負をしたいからですわ」
即答。サラが言葉を発し終えた瞬間に、回答がありました。
「わざわざ口にしたくはないけれど、仕方がありませんね。……サラ様」
「は、はいっ」
「テストもダンスも入学時から、ずっと貴女が1番。わたくしは2番だったでしょう?」
「……は、はい。そう、でございます」
アリーヌはサラへのライバル心を剥き出しにしていたため、『学院での人気』に関してはそうではありませんでしたが――。それ以外は、すべてに置いてナンバー2。今年になってオドレイが躍進をしても、順位はそのように固定されていました。
「わたくしはそれまでいつも1番で、だから1番を取りたがっていた。それは勿論、ご存じですわよね?」
「は、はい。存じ上げて、おります」
――これまでずっと1番でしたのに…………わたくしが、2番になるなんて……。
――またっ、またですわ……! サラ・フローティシアルがトップだなんて……!!――。
――きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!――――。
学院内にある掲示板の前――成績が貼り出される場所で、サラはいつも悔しがるアリーヌの姿を目にしてきました。ですので少々反応に困りながらも、肯定を返しました。
「だったらわたくしにとっては、貴女が居なくなった方がいい。その件によって心身共にボロボロとなった方がいい。そう思うのが、自然ですわよね?」
「そ、そうでございますね。そちらが自然でございます」
「でもね、わたくしにとってそれは最悪なんですの。だってそんなことになってしまえば、自動的に頂点に立ってしまう羽目になる。貴女を実力で負かせられなくなってしまうんですもの」
ライバルが実力とは無関係の要因で落ち、それによって自分が上がる。それはアリーヌにとって、何よりも許せないことだったのです。
「わたくしは純粋かつ公平な環境で勝負をしたいから、こうしただけ。貴女が心配だとか捏造が許せないだとか、そういった理由で動いたのではありませんの」
だから、感謝も恩返しも不要――。アリーヌは改めて、そう告げました。
「そして今口にしたように、わたくしは純粋かつ公平な環境――つまりこれまで通りの状況を、取り戻したいと思っていますの。そのために必要なのは?」
「ヘクター様――ヘクター様とオドレイ様の言い分は、嘘。そちらを明白にする、です」
「正解。とはいえあの様子からするに、学院長先生が調べても尻尾は掴めないでしょうね。なのでこれからわたくしと貴女で、その尻尾をがっしりと掴めるようにしますのよ」
こうしてここを訪れている理由。援護射撃に関する説明を終えたアリーヌは、『作戦』の解説を始め――
「ソレが指しているもの。その内容は、『サラ・ローティシアルが万全の状態で学院生活を送り続ける』ですわ」
思い当たる理由がなく、ポカンとなっていたサラ。そんな彼女に届いた新たな言葉は、更にサラを困惑させてしまうものでした。
「わたしが、万全の状態で……? なぜそちらを、望まれるのでしょうか……?」
「決まっているでしょう。100%の力を発揮できる状態の貴女と、テストやダンスで勝負をしたいからですわ」
即答。サラが言葉を発し終えた瞬間に、回答がありました。
「わざわざ口にしたくはないけれど、仕方がありませんね。……サラ様」
「は、はいっ」
「テストもダンスも入学時から、ずっと貴女が1番。わたくしは2番だったでしょう?」
「……は、はい。そう、でございます」
アリーヌはサラへのライバル心を剥き出しにしていたため、『学院での人気』に関してはそうではありませんでしたが――。それ以外は、すべてに置いてナンバー2。今年になってオドレイが躍進をしても、順位はそのように固定されていました。
「わたくしはそれまでいつも1番で、だから1番を取りたがっていた。それは勿論、ご存じですわよね?」
「は、はい。存じ上げて、おります」
――これまでずっと1番でしたのに…………わたくしが、2番になるなんて……。
――またっ、またですわ……! サラ・フローティシアルがトップだなんて……!!――。
――きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!――――。
学院内にある掲示板の前――成績が貼り出される場所で、サラはいつも悔しがるアリーヌの姿を目にしてきました。ですので少々反応に困りながらも、肯定を返しました。
「だったらわたくしにとっては、貴女が居なくなった方がいい。その件によって心身共にボロボロとなった方がいい。そう思うのが、自然ですわよね?」
「そ、そうでございますね。そちらが自然でございます」
「でもね、わたくしにとってそれは最悪なんですの。だってそんなことになってしまえば、自動的に頂点に立ってしまう羽目になる。貴女を実力で負かせられなくなってしまうんですもの」
ライバルが実力とは無関係の要因で落ち、それによって自分が上がる。それはアリーヌにとって、何よりも許せないことだったのです。
「わたくしは純粋かつ公平な環境で勝負をしたいから、こうしただけ。貴女が心配だとか捏造が許せないだとか、そういった理由で動いたのではありませんの」
だから、感謝も恩返しも不要――。アリーヌは改めて、そう告げました。
「そして今口にしたように、わたくしは純粋かつ公平な環境――つまりこれまで通りの状況を、取り戻したいと思っていますの。そのために必要なのは?」
「ヘクター様――ヘクター様とオドレイ様の言い分は、嘘。そちらを明白にする、です」
「正解。とはいえあの様子からするに、学院長先生が調べても尻尾は掴めないでしょうね。なのでこれからわたくしと貴女で、その尻尾をがっしりと掴めるようにしますのよ」
こうしてここを訪れている理由。援護射撃に関する説明を終えたアリーヌは、『作戦』の解説を始め――
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