悪役?令嬢の矜持

柚木ゆず

文字の大きさ
10 / 41

第3話 その後の2人~テストまでの行動~

しおりを挟む
「サラ様。今日のランチは何になさいますか?」
「そう、ですね。『季節のガレット』が気になっていましたので、本日はそちらにしようと思います」
「そちら、私も気になっていましたの。私も同じものに致しますわ」
「ではわたくしも、そちらにしますわ。サラ様、ミーシャ様、レノア様、参りましょう」

 中庭で大騒ぎが発生した日から、1週間後。廊下にはこれまでのように友人に囲まれるサラの姿があり、

((ふふ。サラ様は引き続き、いつも通りの日常を過ごせているみたいですわね))

 そこから二十数メートルほど離れた場所では、アリーヌがひとり満足げに頷いていました。
 自身の証言によりオドレイの言い分は疑問を持たれ始めたものの、それでもサラを快く思わない者も出てくるかもしれない。そんな懸念は完全に杞憂となっており、改めてアリーヌは安堵していたのです。

((あの様子なら来週のテストは、心身ともに万全な状態で臨めますわね。……ますます、楽しみになってきましたわ))


 〇〇


((…………ありがとうございます))

 移動中に偶然見えた、角を曲がってゆくブロンドが揺れる背中。アリーヌの背中に向けて、サラは心の中で深々と頭を下げていました。

((アリーヌ様。貴方様のおかげで、わたしは今日もこうして学院生活を送れています))

 教室内でも教室外でも寮内でも、友達が声をかけ関わってきてくれる。これまでの日々が当たり前に、続いてくれている。
 その事実にサラは、心から感謝をしていたのでした。

 ――わたくしへの感謝も恩返しも、一切必要ありませんわ――。

((貴方様はそう仰られましたが、わたしはどちらも必要な、行いたいものだと思っております。そして今わたしが出来る感謝の恩返しは、真剣勝負、ですので。全力で挑ませていただきます))

 そんな思いがあるためサラもまた、帰寮すれば即デスクに向かいます。


((……………………))
((……………………))


 215号室と312号室。そこでは2人の令嬢が一心不乱にペンを走らせ、やがてはテストの日を迎え――

しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

侯爵令嬢はデビュタントで婚約破棄され報復を決意する。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 第13回恋愛小説大賞に参加しています。応援投票・応援お気に入り登録お願いします。  王太子と婚約させられていた侯爵家令嬢アルフィンは、事もあろうに社交界デビューのデビュタントで、真実の愛を見つけたという王太子から婚約破棄を言い渡された。  本来自分が主役であるはずの、一生に一度の晴れの舞台で、大恥をかかされてしまった。  自分の誇りのためにも、家の名誉のためにも、報復を誓うのであった。

【完結】謀られた令嬢は、真実の愛を知る

白雨 音
恋愛
男爵令嬢のミシェルは、十九歳。 伯爵子息ナゼールとの結婚を二月後に控えていたが、落馬し、怪我を負ってしまう。 「怪我が治っても歩く事は難しい」と聞いた伯爵家からは、婚約破棄を言い渡され、 その上、ナゼールが自分の代わりに、親友のエリーゼと結婚すると知り、打ちのめされる。 失意のミシェルに、逃げ場を与えてくれたのは、母の弟、叔父のグエンだった。 グエンの事は幼い頃から実の兄の様に慕っていたが、彼が伯爵を継いでからは疎遠になっていた。 あの頃の様に、戻れたら…、ミシェルは癒しを求め、グエンの館で世話になる事を決めた___  異世界恋愛:短編☆(全13話)  ※魔法要素はありません。 ※叔姪婚の認められた世界です。 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?

鶯埜 餡
恋愛
 バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。  今ですか?  めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?

婚約破棄をした相手方は知らぬところで没落して行きました

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢だったアンネリーは婚約者であり、侯爵でもあるスティーブンに真実の愛がどうたらという理由で婚約破棄されてしまった。 悲しみに暮れたアンネリーだったが、偶々、公爵令息のジョージと再会し交流を深めていく。 アンネリーがジョージと楽しく生活をしている中、真実の愛に目覚めたらしいスティーブンには様々な災厄? が降りかかることになり……まさに因果応報の事態が起きるのであった。

第一王子は男爵令嬢にご執心なようなので、国は私と第二王子にお任せください!

黒うさぎ
恋愛
公爵令嬢であるレイシアは、第一王子であるロイスの婚約者である。 しかし、ロイスはレイシアを邪険に扱うだけでなく、男爵令嬢であるメリーに入れ込んでいた。 レイシアにとって心安らぐのは、王城の庭園で第二王子であるリンドと語らう時間だけだった。 そんなある日、ついにロイスとの関係が終わりを迎える。 「レイシア、貴様との婚約を破棄する!」 第一王子は男爵令嬢にご執心なようなので、国は私と第二王子にお任せください! 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

婚約破棄からの復讐~私を捨てたことを後悔してください

satomi
恋愛
私、公爵令嬢のフィオナ=バークレイはアールディクス王国の第2王子、ルード様と婚約をしていましたが、かなりの大規模な夜会で婚約破棄を宣言されました。ルード様の母君(ご実家?)が切望しての婚約だったはずですが?その夜会で、私はキョウディッシュ王国の王太子殿下から婚約を打診されました。 私としては、婚約を破棄された時点でキズモノとなったわけで、隣国王太子殿下からの婚約話は魅力的です。さらに、王太子殿下は私がルード殿下に復讐する手助けをしてくれるようで…

婚約破棄されてすぐに新しい婚約者ができたけど、元婚約者が反対してきます

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私ミレッサは、婚約者のウルクに罪を捏造されて婚約破棄を言い渡されてしまう。    私が無実だと友人のカインがその場で説明して――カインが私の新しい婚約者になっていた。  すぐに新しい婚約者ができたけど、元婚約者ウルクは反対してくる。  元婚約者が何を言っても、私には何も関係がなかった。

お飾りの側妃となりまして

秋津冴
恋愛
 舞台は帝国と公国、王国が三竦みをしている西の大陸のど真ん中。  歴史はあるが軍事力がないアート王国。  軍事力はあるが、歴史がない新興のフィラー帝国。  歴史も軍事力も国力もあり、大陸制覇を目論むボッソ公国。  そんな情勢もあって、帝国と王国は手を組むことにした。  テレンスは帝国の第二皇女。  アート王ヴィルスの第二王妃となるために輿入れしてきたものの、互いに愛を感じ始めた矢先。  王は病で死んでしまう。  新しく王弟が新国王となるが、テレンスは家臣に下賜されてしまう。  その相手は、元夫の義理の息子。  現王太子ラベルだった。  しかし、ラベルには心に思う相手がいて‥‥‥。  他の投稿サイトにも、掲載しております。

処理中です...