悪役?令嬢の矜持

柚木ゆず

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第6話 その姿を見ていた男(2)

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((……今頃はオドレイと、堂々と過ごせていたのに……。今はそうなっていないどころか、学院長の目があるから手紙すら渡せなくなった……! なにもかもあのクソ女のせいだ……!!))

 サラとは離れた場所に立っている、アリーヌ・サフェタンエス。予想外の敵を、ヘクターは密かに睨みつけました。

((アイツが余計なことを言わなければ、あのまま押し通せていたのに……! なんでライバルの味方をするんだよ……!!))

 お前はサラのせいで毎回悔しい思いをしてるんだろ!? なら邪魔者がいなくなった方がいいじゃないか!! それにお前はサラを嫌い憎んでいたじゃないか!! なにをやっているんだ!!――。
 ヘクターは――他の生徒達も、これまでの言動によりアリーヌはサラを強く敵視していると確信していました。ですので混乱しながら怒り、3分ほど激しくイライラしたところで彼の口から長嘆息が出ました。

((…………こうやって腹を立てているだけじゃ進展しない。冷静になるんだ。冷静になって、次の手を考えろ。どうすればこの状況下で、サラのイジメは事実だったと周りに認識させられる……?))

 ヘクターは近づいて来た友人と適当に話しながら思考を巡らせ、やがて彼の頭脳は『不可能』という残念な結論を出してしまいます。
 なぜならば今は、所謂マークをされている状態。行動に制限があり、新たな捏造を行えないからです。

((今下手に動くと、墓穴を掘りかねない……。第三者の手を借りられたら望みはあるが――……。それも無理だな))

 サラは学院1の人気を誇り、他の生徒や教師は一切悪い印象を抱いていません。更には全員が、悪事が露見した際のリスクを理解しています。
 そのため新たな買収も不可能となっており、今は身動きが取れない状況なのだと改めて痛感しました。

((……だがそれでも、僕は真の愛のために成功させなけえればならない。しかしながら、成功させる方法はない……))

 どうする? どうする? どうすればいいんだ?――。そう心の中で、脂汗を浮かべていたその時でした。


「あんなに打ち込んでもっ、まだこんなにも差があるんだなんて!! なんなんですの!? どうなってますのっっ!?」

「今度こそっ、わたくしがトップになるつもりだったのにっっ!!」

「悔しいっ! 悔しいっっ! 悔しいっっ!! なぜこんな結果になりますの!?」

「何がいけませんの!? わたくしには何が足りませんの!? だったらなにをやったらトップになれますの!?」

「きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! きいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃいいいいいい!!」



 成績発表を眺めていたアリーヌが叫び声をあげ、盛大に悔しがり始めたのでした。



((今回は自分を限界を大きく超えて、歴代記録を更新したのに負けたんだ。悔しさの量もいつもの非にはならないだろうな。………………こいつは使えるぞ!))

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