悪役?令嬢の矜持

柚木ゆず

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第6話 その姿を見ていた男(3)

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((…………ヘクター、再確認の時間だ。あそこにいるアリーヌ・サフェタンエスは、サラを激しく敵視していたよな?))

 イエス。その通りだ――。叫ぶアリーヌを横目で目視していたヘクターは、入学から今日までの記憶を振り返り、自身の問いに肯定を返しました。

((じゃあ、次の再確認だ。アリーヌは今、過去最大級に悔しがっているよな?))

 イエス。その通りだ――。掲示板とアリーヌの姿を改めて見やり、再度自身の問いに肯定を返しました。

((だったら――。サラを排除できると知ったら、喜んで協力するよな?))

 イエス。その通りだ――。『入学から今日までの姿』と『今の姿を』を加味し、肯定を――先の二つ以上に、自信を持った肯定を返しました。

((あの時は彼女の中にある僅かな善意・・・・・が、介入させたんだろう。だがもう、そんな善意は消え去った。今回、あんな悲惨な敗れ方をしたことによって))

 前回よりニ十点以上アップし、歴代記録を超えた上での敗北。あのアリーヌなら間違いなくそうなっている。
 ヘクターはそれを確信し、心の中でニヤリとしました。

((だから僕が持ち掛ければ、絶対に頷く。期せずしてこの上ない、最高の協力者を得られるようになったぞ……!!))

 アリーヌは一度サラを庇っているため、学院長にマークをされていません。そのため彼女は、怪しまれるず行動できる数少ない人材となっているのです。

((しかも、運がいい・・・))

 恐らくは、人気(ひとけ)がないところでもっと激しく罵倒するつもりなんだろう。別棟を目指し始めて、そこなら人目につかずに持ち掛けられる――。
 ヘクターはラッキーにラッキーが重なったことを喜び、

「? ヘクター、どこに行くんだ?」
「ちょっと用事を思い出したんだ。先に寮に戻っていてくれ」

 話しをしていた友人を先に返し、怪しまれないよう周囲を入念に確認したあと、アリーヌのあとを追いかけます。
 ニヤニヤ。スタスタ。ニヤニヤ。スタスタ。
 すっかり上機嫌となったヘクターは足取り軽く音楽室へと向かい、まずはアリーヌと適当に会話をして場を温めます。そうしてやがて『いける』という手ごたえを感じた彼は、ついに協力の要請を始めたのでした。


「アリーヌ様、単刀直入に申し上げます。サラを失脚させるお手伝いをしてはいただけないでしょうか?」

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