悪役？令嬢の矜持

第７話 返事は思っていた通りに（２）

「そちらは……。確か、オドレイ様がつけていたものですわね」
「ええ、こちらは彼女の私物です。今回はこちらを使って、サラを陥れます」

　先端では中心に小さな宝石が埋め込まれた花びらが煌めいている、控えめであり可愛らしいネックレス。それを提示したヘクターは、上機嫌で説明を始めました。

「これはオドレイが２か月前より身につけ始めた、家族からの誕生日プレゼント――となっているのは嘘で、これは僕が贈った誕生日プレゼントなのですよ」


『オドレイ、お誕生日おめでとう。これをもらってくれるかな？』
『えええっ⁉　こっ、こんなにも高価なものをっ、ですかぁ……⁉』
『今日は君がこの世界に現れてくれた日、記念すべき日だからね。それに相応しいものを用意したんだよ。どうかもらって欲しい』

　その頃にはすっかり、オドレイに心変わりをしていました。そのため希少価値の高いものを――これまでサラに渡していたものよりも遥かにお金をかけたものを、渡していたのでした。

「この作戦では、この嘘を最大限利用します。……アリーヌ様。家族からの誕生日プレゼントは、宝物ですよね？」
「ええ、そうですわね」
「そんな宝物をチェーンの破損によってうっかり落としてしまい、運悪くサラが拾ってしまった。そうしてオドレイは、弱みを握られてしまうのですよ」

　その結果、『告げ口をしたせいで大変なことになりかけたじゃないか！』『そのせいでヘクター様との仲がぎくしゃくしている！』『ヘクター様との仲を元通りにするため、すべては自演でしたと告げなさい！』『従わなければこのネックレスを壊す！』――。
　このように脅迫されるようになり、今日から１週間後に、仕方なくオドレイは従うことになってしまった。
　ヘクターは自身が考えたシナリオを紡いでゆき、一息挟んで再び続けます。