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第9話 決行(1)
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「みっ、皆様に謝らないといけないコトがあります……っ。…………ダッスバールム様に訴えた言い分は、どれも嘘だったんです……っ」
翌日の、放課後。あの日と同じ時間、同じ場所。この時間学院で最も人気(ひとけ)がある中庭に、オドオドとした声が響き渡りました。
「サラ様に呼び出されたり教科書に落書きをされたり、あのようなコトは一回もありませんでしたっ。卒業後も箔がつく生徒会長になりたくなって……。最有力候補を蹴落としつつ、たくさん同情を得られるように嘘をついていたんです……!」
突如の告白によってあっという間に黒山の人だかりができ、オドレイはその中心で全ては捏造であると繰り返しました。そしておよそ6分かけて全てを打ち明けた彼女は、人だかりの最前列へと向けて――騒ぎを聞きつけてやって来ていた、サラに向かって深々と腰を折り曲げました。
「サラ様……。私の嘘でご迷惑をおかけしてしまい、ごめんなさい……。陥れようとして、ごめんなさい……」
こうして謝罪を行ったあとは360度を見回り、「私のような人間は、この学院に居る資格はありません」「これから退学届けを出してきます」と涙ながらに宣言。もちろんその際には何度か怯える視線をサラへと送り、全ての仕込みを終えたタイミングで――
「待ってくれ、オドレイ・フレアンラ。それは君の本心、真実なのか?」
――この計画の考案者、ヘクターが現れました。
「え……!? はっ、はいっ。本心ですし真実ですっ。私は酷いコトをした酷い女なんですっ」
「……そうか。じゃあなぜ、時折怯えた顔になる? どうして時々、今にも泣きそうな顔でサラを見るんだ?」
颯爽と登場したヘクターは何食わぬ顔で眉を細め、その点に関する追及を始めます。
あたかも第三者であるように質問を行い、言葉巧みにオーディエンスを誘導。周囲から『確かにそうだ』『その通りですわ』という声が頻発する状況となると、彼はその場に駆け付けている学院長へと身体を向けました。
「アントニン学院長。この件には明らかな不自然があり、オドレイ・フレアンラはサラ・フローティシアルになんらかの指示を出されているものと思われます」
「…………うむ。言動を鑑みるに、その可能性が高いのう」
「そこで水面下で起きているであろう脅迫を防ぐため、サラの身柄の拘束を提案いたします。……先のやり取りをしている際のオドレイ・フレアンラの様子から推測するに、自由を奪えば問題は解決すると判断いたしましたので」
「………………証拠はないが、緊急事態が起きているようじゃからな。至急サラ・フローティシアル君を抑えてくれ」
学院長アントニンの頷きを合図に、サラは教師2名によって拘束。腕を掴まれ、身動きが取れなくなってしまいました。
((よし、いいぞ。これで第一段階は完了。……第二段階の、幕開けだ))
ニヤリ。ヘクターは心の中で邪悪な笑みを浮かべ、トドメを刺すべく、再び口を開き始めます。
トドメを刺されてしまうのは、自分だとは知らずに――。
翌日の、放課後。あの日と同じ時間、同じ場所。この時間学院で最も人気(ひとけ)がある中庭に、オドオドとした声が響き渡りました。
「サラ様に呼び出されたり教科書に落書きをされたり、あのようなコトは一回もありませんでしたっ。卒業後も箔がつく生徒会長になりたくなって……。最有力候補を蹴落としつつ、たくさん同情を得られるように嘘をついていたんです……!」
突如の告白によってあっという間に黒山の人だかりができ、オドレイはその中心で全ては捏造であると繰り返しました。そしておよそ6分かけて全てを打ち明けた彼女は、人だかりの最前列へと向けて――騒ぎを聞きつけてやって来ていた、サラに向かって深々と腰を折り曲げました。
「サラ様……。私の嘘でご迷惑をおかけしてしまい、ごめんなさい……。陥れようとして、ごめんなさい……」
こうして謝罪を行ったあとは360度を見回り、「私のような人間は、この学院に居る資格はありません」「これから退学届けを出してきます」と涙ながらに宣言。もちろんその際には何度か怯える視線をサラへと送り、全ての仕込みを終えたタイミングで――
「待ってくれ、オドレイ・フレアンラ。それは君の本心、真実なのか?」
――この計画の考案者、ヘクターが現れました。
「え……!? はっ、はいっ。本心ですし真実ですっ。私は酷いコトをした酷い女なんですっ」
「……そうか。じゃあなぜ、時折怯えた顔になる? どうして時々、今にも泣きそうな顔でサラを見るんだ?」
颯爽と登場したヘクターは何食わぬ顔で眉を細め、その点に関する追及を始めます。
あたかも第三者であるように質問を行い、言葉巧みにオーディエンスを誘導。周囲から『確かにそうだ』『その通りですわ』という声が頻発する状況となると、彼はその場に駆け付けている学院長へと身体を向けました。
「アントニン学院長。この件には明らかな不自然があり、オドレイ・フレアンラはサラ・フローティシアルになんらかの指示を出されているものと思われます」
「…………うむ。言動を鑑みるに、その可能性が高いのう」
「そこで水面下で起きているであろう脅迫を防ぐため、サラの身柄の拘束を提案いたします。……先のやり取りをしている際のオドレイ・フレアンラの様子から推測するに、自由を奪えば問題は解決すると判断いたしましたので」
「………………証拠はないが、緊急事態が起きているようじゃからな。至急サラ・フローティシアル君を抑えてくれ」
学院長アントニンの頷きを合図に、サラは教師2名によって拘束。腕を掴まれ、身動きが取れなくなってしまいました。
((よし、いいぞ。これで第一段階は完了。……第二段階の、幕開けだ))
ニヤリ。ヘクターは心の中で邪悪な笑みを浮かべ、トドメを刺すべく、再び口を開き始めます。
トドメを刺されてしまうのは、自分だとは知らずに――。
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