悪役?令嬢の矜持

柚木ゆず

文字の大きさ
22 / 41

第9話 決行(3)

しおりを挟む
「お前には色々と言いたいことがあるが、まずは宝物の確保回収が最優先だ。サラ。彼女のネックレスをどこにやった?」
「……知りません。わたしは、そのような真似はしておらず――」
「教えるつもりはない、ということか。ならいい、お前には頼らない。……学院長、サラの部屋など隠せそうな場所を手当たり次第に探りましょう」

 ヘクターは自然な形で312号室へと向かえるようにし、アントニンの許可が下りたため移動を始めます。そうしてこの場にいる全員が大移動を行い、第三者である女性教師5人が室内の捜索をスタートさせました。

「…………わたしは、あのようなことは致しておりません。どこにもありませんよ」
((そうだな、お前はやっていないんだからそう思うだろう。だがな、この部屋にネックレスはあるんだよ))

 否定をするサラを心の中で嗤い、ヘクターはその時を待ちます。
 デスク、小物入れなどなど。次々と室内が調べられてゆき、いよいよ5人の手は最後の場所であるクローゼットに伸びました。

((ふふふっ。サラ、もうすぐお前は唖然となるぞ?))

 そこは最後の場所なため、アリーヌが忍ばせたのはクローゼット。そう判断したヘクターは上機嫌でその時を待ち――

「なっ!?」

 しかしながら唖然となるのは、サラではありません。声を上げたのは悠々としていたヘクターで、しかも『予想外』はこれで終わってはくれませんでした。
 クローゼットからはなにも出てこなかった。それは始まりにすぎず、

「残念だけれど、クローゼットにはありませんわよ? だって貴男から受け取ったネックレスは、そちらにあるんですもの」

 行方不明となっていたネックレスは、アリーヌの視線の先から――。学院長アントニンの懐から、現れたのです。

しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?

鶯埜 餡
恋愛
 バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。  今ですか?  めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?

【完結】謀られた令嬢は、真実の愛を知る

白雨 音
恋愛
男爵令嬢のミシェルは、十九歳。 伯爵子息ナゼールとの結婚を二月後に控えていたが、落馬し、怪我を負ってしまう。 「怪我が治っても歩く事は難しい」と聞いた伯爵家からは、婚約破棄を言い渡され、 その上、ナゼールが自分の代わりに、親友のエリーゼと結婚すると知り、打ちのめされる。 失意のミシェルに、逃げ場を与えてくれたのは、母の弟、叔父のグエンだった。 グエンの事は幼い頃から実の兄の様に慕っていたが、彼が伯爵を継いでからは疎遠になっていた。 あの頃の様に、戻れたら…、ミシェルは癒しを求め、グエンの館で世話になる事を決めた___  異世界恋愛:短編☆(全13話)  ※魔法要素はありません。 ※叔姪婚の認められた世界です。 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

婚約破棄からの復讐~私を捨てたことを後悔してください

satomi
恋愛
私、公爵令嬢のフィオナ=バークレイはアールディクス王国の第2王子、ルード様と婚約をしていましたが、かなりの大規模な夜会で婚約破棄を宣言されました。ルード様の母君(ご実家?)が切望しての婚約だったはずですが?その夜会で、私はキョウディッシュ王国の王太子殿下から婚約を打診されました。 私としては、婚約を破棄された時点でキズモノとなったわけで、隣国王太子殿下からの婚約話は魅力的です。さらに、王太子殿下は私がルード殿下に復讐する手助けをしてくれるようで…

侯爵令嬢はデビュタントで婚約破棄され報復を決意する。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 第13回恋愛小説大賞に参加しています。応援投票・応援お気に入り登録お願いします。  王太子と婚約させられていた侯爵家令嬢アルフィンは、事もあろうに社交界デビューのデビュタントで、真実の愛を見つけたという王太子から婚約破棄を言い渡された。  本来自分が主役であるはずの、一生に一度の晴れの舞台で、大恥をかかされてしまった。  自分の誇りのためにも、家の名誉のためにも、報復を誓うのであった。

あなたの罪はいくつかしら?

碓氷雅
恋愛
 公爵令嬢はとある夜会で婚約破棄を言い渡される。  非常識なだけの男ならば許容範囲、しかしあまたの罪を犯していたとは。 「あなたの罪はいくつかしら?」 ・・・ 認証不要とのことでしたので感想欄には公開しておりませんが、誤字を指摘していただきありがとうございます。注意深く見直しているつもりですがどうしても見落としはあるようで、本当に助かっております。 この場で感謝申し上げます。

お飾りの側妃となりまして

秋津冴
恋愛
 舞台は帝国と公国、王国が三竦みをしている西の大陸のど真ん中。  歴史はあるが軍事力がないアート王国。  軍事力はあるが、歴史がない新興のフィラー帝国。  歴史も軍事力も国力もあり、大陸制覇を目論むボッソ公国。  そんな情勢もあって、帝国と王国は手を組むことにした。  テレンスは帝国の第二皇女。  アート王ヴィルスの第二王妃となるために輿入れしてきたものの、互いに愛を感じ始めた矢先。  王は病で死んでしまう。  新しく王弟が新国王となるが、テレンスは家臣に下賜されてしまう。  その相手は、元夫の義理の息子。  現王太子ラベルだった。  しかし、ラベルには心に思う相手がいて‥‥‥。  他の投稿サイトにも、掲載しております。

婚約破棄が決まっているようなので、私は国を出ることにしました

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私エルノアは、婚約破棄が決まっているようだ。 他国の王子ラーサーから聞いた話で、最初は信じられなかった。 婚約者のドスラ王子を追及すると、本当に婚約を破棄するつもりのようだ。 その後――私はラーサーの提案に賛同して、国を出ることにしました。

婚約破棄をした相手方は知らぬところで没落して行きました

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢だったアンネリーは婚約者であり、侯爵でもあるスティーブンに真実の愛がどうたらという理由で婚約破棄されてしまった。 悲しみに暮れたアンネリーだったが、偶々、公爵令息のジョージと再会し交流を深めていく。 アンネリーがジョージと楽しく生活をしている中、真実の愛に目覚めたらしいスティーブンには様々な災厄? が降りかかることになり……まさに因果応報の事態が起きるのであった。

処理中です...