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第10話 真実~本物~(2)
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((………………そうだわ。ヘクター様を利用すればいいのよ))
同じ会場内に居る、忌々しいサラの婚約者。その姿を暫く眺めていたオドレイの口元が、ニヤリと緩みました。
((私ったら、どうして気が付かなかったのかしら。外から攻められないなら、内側から攻めて崩壊させたらいいんだわ))
サラが絶対的な信頼を置く存在、それを傀儡にして目的を達成させる。彼女はそう決め、この場に学院関係者は独りもいなかったため、すぐに行動に移しました。
「ぁ、あれ……? ぁ、ぁぅ……」
「おっと大丈夫かい? …………動けそうには、ないのか。なら、僕が医務室まで運んでいこう」
まずは貧血を装い目の前でバランスを崩し、ヘクターに抱き留めさせて介抱させる。
「ぁ、ありがとうございます。……あ、あの。ダッスバールム様……」
「ん? なんだい?」
「目の前が時々真っ暗になって、ふらふらして……。その、怖くて……。よろしければ……。少しだけでも、手を握っていてくださいませんか……? ダッスバールム様のお手は温かく……。安心、できます、ので……」
そしていつものようにキャラ作りで庇護欲を掻き立て、自分への理解を深めさせる。
「あ、あの、ダッスバールム様。さくじつは、ありがとうございました。こちら、よろしければお受け取りください」
「そんなもの、構わないのに。ありがたく受け取っておくよ」
そうして作った『土台』を活かして再び接触し、心をぐらりと自身に傾けさせる。
オドレイは優れた見た目と男心をくすぐる言動を駆使して揺さぶり、その結果――。ヘクターはまんまと策にはまり、心変わりをしてしまっていたのです。
((さすが私、面白いくらい上手く進んでいるわね。……じゃあそろそろ、本命に取り掛かりましょうか))
彼女の目的はサラの蹴落としであり、今はもう一つ『侯爵夫人になる』というものもあります。ですので言葉巧みにヘクターを操り、
――サラの罪を捏造して婚約破棄をさせる――。
彼がそういったアイディアを出すように、誘導していたのです。
そのためヘクターは自分の主導だと思い込んだまま計画を進行させ、あの日――今からおよそ4週間前に、中庭にて決行しました。しかしながらソレはアリーヌの介入という予期せぬトラブルで失敗となり、更に今回再びアリーヌによる『想定外』によって大失敗となってしまいました。
ですが――。
「貴女、もしかして……。嫌々、彼に従っていたのではありませんの?」
何もしていなかったのに運よくアリーヌが勘違いを行い、めでたく自分だけは罰の直撃を避けることができました。
((危なかった。これなら私は学院に残れるし、被害者のひとりだから平然と社交界にも出られる。ラッキー))
ですのでオドレイは心の中でニンマリとして、大喜びをしていました。
それは彼女がヘクターにしていた、『誘導』であるとも知らずに――。
同じ会場内に居る、忌々しいサラの婚約者。その姿を暫く眺めていたオドレイの口元が、ニヤリと緩みました。
((私ったら、どうして気が付かなかったのかしら。外から攻められないなら、内側から攻めて崩壊させたらいいんだわ))
サラが絶対的な信頼を置く存在、それを傀儡にして目的を達成させる。彼女はそう決め、この場に学院関係者は独りもいなかったため、すぐに行動に移しました。
「ぁ、あれ……? ぁ、ぁぅ……」
「おっと大丈夫かい? …………動けそうには、ないのか。なら、僕が医務室まで運んでいこう」
まずは貧血を装い目の前でバランスを崩し、ヘクターに抱き留めさせて介抱させる。
「ぁ、ありがとうございます。……あ、あの。ダッスバールム様……」
「ん? なんだい?」
「目の前が時々真っ暗になって、ふらふらして……。その、怖くて……。よろしければ……。少しだけでも、手を握っていてくださいませんか……? ダッスバールム様のお手は温かく……。安心、できます、ので……」
そしていつものようにキャラ作りで庇護欲を掻き立て、自分への理解を深めさせる。
「あ、あの、ダッスバールム様。さくじつは、ありがとうございました。こちら、よろしければお受け取りください」
「そんなもの、構わないのに。ありがたく受け取っておくよ」
そうして作った『土台』を活かして再び接触し、心をぐらりと自身に傾けさせる。
オドレイは優れた見た目と男心をくすぐる言動を駆使して揺さぶり、その結果――。ヘクターはまんまと策にはまり、心変わりをしてしまっていたのです。
((さすが私、面白いくらい上手く進んでいるわね。……じゃあそろそろ、本命に取り掛かりましょうか))
彼女の目的はサラの蹴落としであり、今はもう一つ『侯爵夫人になる』というものもあります。ですので言葉巧みにヘクターを操り、
――サラの罪を捏造して婚約破棄をさせる――。
彼がそういったアイディアを出すように、誘導していたのです。
そのためヘクターは自分の主導だと思い込んだまま計画を進行させ、あの日――今からおよそ4週間前に、中庭にて決行しました。しかしながらソレはアリーヌの介入という予期せぬトラブルで失敗となり、更に今回再びアリーヌによる『想定外』によって大失敗となってしまいました。
ですが――。
「貴女、もしかして……。嫌々、彼に従っていたのではありませんの?」
何もしていなかったのに運よくアリーヌが勘違いを行い、めでたく自分だけは罰の直撃を避けることができました。
((危なかった。これなら私は学院に残れるし、被害者のひとりだから平然と社交界にも出られる。ラッキー))
ですのでオドレイは心の中でニンマリとして、大喜びをしていました。
それは彼女がヘクターにしていた、『誘導』であるとも知らずに――。
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