悪役?令嬢の矜持

柚木ゆず

文字の大きさ
27 / 41

第11話 だって、わたくしの逆鱗に触れたんですもの(1)

しおりを挟む
「…………あら、でも……。そういえば、このあいだ……」

 危なかった。これなら私は学院に残れるし、被害者のひとりだから平然と社交界にも出られる。アリーヌもヘクターもいい仕事をしてくれたわ、ラッキー――。オドレイが心の中でニンマリとして、大喜びをしていた時でした。
 再び不意に、特大のラッキーをもたらしたアリーヌが首を傾けました。

「あ、アリーヌさま……? ど、どうなされたのですか……?」
「あれは、一週間前でしたわね。音楽室でヘクター様に協力を持ち掛けられた際、『このネックレスを使った計画は、なんとオドレイがヒントをくれたんだ』と嬉しそうに笑っていたのを思い出しましたわ。あの方に嫌々従っているのなら、こんな風に率先して作戦を進めようとはしませんわね」

 偶然思い出した――というのは真っ赤な嘘ですが、その言葉は嘘ではありません。ここでもオドレイはヘクターを誘導していて、彼がこの計画を思い付くようにしていたのです。
 なので――

「しまっ」

 ――『やってしまった』。実際に口にしているためヘクターはたまらず声を出してしまい、もちろんアリーヌはその言葉をを逃しません。

「あら? あらあら? オドレイ様が共犯になれば多少は罪が軽減するというのに、『しまっ』。……どうやらヘクター様は嘘をついて、最愛の人を庇っていたみたいですわね」
「ちっ、ちがっ! 違うっっ‼ しょっ、証拠はあるのか!? 僕達が共犯だという証拠はあるのかっ!? ないだろう!?」
「そのリアクション、そのお顔が、なによりの証拠ですわ」

 あっという間に真っ青になり、顎から滴れ落ちるほど汗まみれになった顔。演技ではないと瞭然な顔面を指さし、アリーヌははぁとため息をつきました。

 そして――
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?

鶯埜 餡
恋愛
 バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。  今ですか?  めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?

侯爵令嬢はデビュタントで婚約破棄され報復を決意する。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 第13回恋愛小説大賞に参加しています。応援投票・応援お気に入り登録お願いします。  王太子と婚約させられていた侯爵家令嬢アルフィンは、事もあろうに社交界デビューのデビュタントで、真実の愛を見つけたという王太子から婚約破棄を言い渡された。  本来自分が主役であるはずの、一生に一度の晴れの舞台で、大恥をかかされてしまった。  自分の誇りのためにも、家の名誉のためにも、報復を誓うのであった。

【完結】謀られた令嬢は、真実の愛を知る

白雨 音
恋愛
男爵令嬢のミシェルは、十九歳。 伯爵子息ナゼールとの結婚を二月後に控えていたが、落馬し、怪我を負ってしまう。 「怪我が治っても歩く事は難しい」と聞いた伯爵家からは、婚約破棄を言い渡され、 その上、ナゼールが自分の代わりに、親友のエリーゼと結婚すると知り、打ちのめされる。 失意のミシェルに、逃げ場を与えてくれたのは、母の弟、叔父のグエンだった。 グエンの事は幼い頃から実の兄の様に慕っていたが、彼が伯爵を継いでからは疎遠になっていた。 あの頃の様に、戻れたら…、ミシェルは癒しを求め、グエンの館で世話になる事を決めた___  異世界恋愛:短編☆(全13話)  ※魔法要素はありません。 ※叔姪婚の認められた世界です。 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

婚約破棄をした相手方は知らぬところで没落して行きました

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢だったアンネリーは婚約者であり、侯爵でもあるスティーブンに真実の愛がどうたらという理由で婚約破棄されてしまった。 悲しみに暮れたアンネリーだったが、偶々、公爵令息のジョージと再会し交流を深めていく。 アンネリーがジョージと楽しく生活をしている中、真実の愛に目覚めたらしいスティーブンには様々な災厄? が降りかかることになり……まさに因果応報の事態が起きるのであった。

第一王子は男爵令嬢にご執心なようなので、国は私と第二王子にお任せください!

黒うさぎ
恋愛
公爵令嬢であるレイシアは、第一王子であるロイスの婚約者である。 しかし、ロイスはレイシアを邪険に扱うだけでなく、男爵令嬢であるメリーに入れ込んでいた。 レイシアにとって心安らぐのは、王城の庭園で第二王子であるリンドと語らう時間だけだった。 そんなある日、ついにロイスとの関係が終わりを迎える。 「レイシア、貴様との婚約を破棄する!」 第一王子は男爵令嬢にご執心なようなので、国は私と第二王子にお任せください! 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

婚約破棄からの復讐~私を捨てたことを後悔してください

satomi
恋愛
私、公爵令嬢のフィオナ=バークレイはアールディクス王国の第2王子、ルード様と婚約をしていましたが、かなりの大規模な夜会で婚約破棄を宣言されました。ルード様の母君(ご実家?)が切望しての婚約だったはずですが?その夜会で、私はキョウディッシュ王国の王太子殿下から婚約を打診されました。 私としては、婚約を破棄された時点でキズモノとなったわけで、隣国王太子殿下からの婚約話は魅力的です。さらに、王太子殿下は私がルード殿下に復讐する手助けをしてくれるようで…

あなたの罪はいくつかしら?

碓氷雅
恋愛
 公爵令嬢はとある夜会で婚約破棄を言い渡される。  非常識なだけの男ならば許容範囲、しかしあまたの罪を犯していたとは。 「あなたの罪はいくつかしら?」 ・・・ 認証不要とのことでしたので感想欄には公開しておりませんが、誤字を指摘していただきありがとうございます。注意深く見直しているつもりですがどうしても見落としはあるようで、本当に助かっております。 この場で感謝申し上げます。

お飾りの側妃となりまして

秋津冴
恋愛
 舞台は帝国と公国、王国が三竦みをしている西の大陸のど真ん中。  歴史はあるが軍事力がないアート王国。  軍事力はあるが、歴史がない新興のフィラー帝国。  歴史も軍事力も国力もあり、大陸制覇を目論むボッソ公国。  そんな情勢もあって、帝国と王国は手を組むことにした。  テレンスは帝国の第二皇女。  アート王ヴィルスの第二王妃となるために輿入れしてきたものの、互いに愛を感じ始めた矢先。  王は病で死んでしまう。  新しく王弟が新国王となるが、テレンスは家臣に下賜されてしまう。  その相手は、元夫の義理の息子。  現王太子ラベルだった。  しかし、ラベルには心に思う相手がいて‥‥‥。  他の投稿サイトにも、掲載しております。

処理中です...