悪役?令嬢の矜持

柚木ゆず

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第11話 だって、わたくしの逆鱗に触れたんですもの(5)

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「………………………………」

 たっぷりと暴れた・・・オドレイが去ったあと。現場こと312号室の前では、もう一人の犯人・ヘクターがただただ無言で天を仰いでいました。
 計画の大失敗によって、日常が崩壊してしまったこと。先のオドレイの言動によって、相手に愛は微塵もなく、自分はずっと傀儡だったと知ったこと。それらによって彼は、放心状態となっていたのです。

「………………………………。こんなことに、なるだなんて………………」

 抜け殻のような状態が、3分近く続いた頃。ようやくヘクターはポツリと呟き、力なく笑い始めました。

「……あの時……。あの日……。あのパーティーでオドレイに会わなければ、こんなことにはなっていなかったのに……。…………なにもかも、オドレイのせいだ…………」

 サラを裏切ってしまった自分に責任がある。そんな考えは、彼の中には少しもありません。
 すべての責任はオドレイにあると繰り返し、そうしていたヘクターはやがてアントニン学院長の右隣へと――そこに立ち位置を変えていたサラへと、視線を向けました。

「……サラ……。サラ……。オドレイがあんな風にすり寄ってこなければ、僕は今でもずっと君だけを愛していたんだ……」
「…………そう、ですか」
「……ああ、そうなんだよ……。だ、だったら、僕は100パーセント悪くはないよな? 最初から騙されていたんだから、被害者でもあるよな?」
「……………………」
「だから、お願いだ……っ。許してほしい、よりを戻してほしいなんて、都合のいいことは言わない……っ。僕の罪が少しでも軽くなるよう、口添えをしておくれ……!」

 少しでも刑期が短くなれるように。あわよくば収監されずに済むように。この件に口を挟んで欲しい。
 ヘクターは裏切りを詫びないどころか、支援を求めはじめたのです。

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