悪役?令嬢の矜持

柚木ゆず

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第14話 夢(1)

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「はぁっ。はぁ……っ。はぁ……っ。はぁ、はぁ……っ。はあ……っ」

 アリーヌは気が付くと、真っすぐな道を走っていました。
 そうしている理由は、アリーヌ自身にも分かりません。
 走りたい。そう思っているから、アリーヌは全力で走り続けます。

「はぁっ。はぁ……っ。はぁ……っ。ふふ……っ。良い調子、ですわね……っ」

 腕の振りも脚の動かし方も、スピードも申し分ない。自身の動きに満足しながら、真っすぐな道を走り続けます。

「はぁっ。はあ……っ。はっ。はぁ、はぁ……っ。はぁ……っ。完璧、ですわ……っ」

 自分が出せる限界の速度で走れている、100パーセントの力を出し切れている。最高の状態。
 それを実感しているアリーヌは口を緩め、心は達成感で満たされるようになりました。

「はぁっ。はぁ……っ。はぁ……っ。はぁっ。はぁ……っ。ようやく、限界へとたどり着けましたわね……! これなら、わたくしは頂点へと――え……!?」

 頂点へとたどり着ける、そう確信した瞬間でした。突如隣にもう一つ道が出現し、自分以上の速度で走っている女性が――サラ・ローティシアルが現れたのです。

「………………………………………………」
((このスピードで走っているのにっ、みるみる離されていくだなんて……! くっ、くうううううううう……!!))

 最初は横並びだったのに時間に比例して離れてゆき、あっという間にサラの背中が見えるようになってしまいました。

「………………………………………………」
「はあっ、はあ……っ。はあ……っ。はあ……っ。あちらは淡々と、走っているのに、速、い……っ。遠く、なって、ゆく……!」

 どんなに足掻いても、距離を詰めることはできない。更に離されてゆき、アリーヌはギリギリと歯がみをします。

「………………………………………………」
((きいいいいいいいいいいいいいい!! どうして!? どうしてこんなことになりますのっ!?))

 早く走れるように努力をしてきているのに! 一切妥協なんてしていないのに! なぜ!? なぜっ!? なぜっ!?――。
 アリーヌは心の中で叫び、頭を掻きむしります。

((今のわたくしは、最高の状態に仕上がっていますのよ!? これ以上のクオリティーなんて出せませんのよ!? これ以上何をすればいいというんですの――え……!?))

 引き続き心の中で絶叫していたアリーヌは、再び目を見張ることになります。なぜならば――

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